第92話 水着縛り
「ヒモノさん、わたくしの電球が、隣の部屋に敵のちゃぶ台と丸椅子がいると言っているのです」
「あの逃げ足の速いヤツらか?」
「はい、そうなのです」
「捕まえて食べるキュ!」
「そう言われてもなぁ。あんな素早いヤツらを、どうやって捕まえるんだ?」
「がんばって捕まえるキュ!」
要するに、無策なのかよっ!?
「今度は拙者が戦ってみるでゴザル!」
「拙僧も手伝うぜでゴザイマスル」
「分かった。がんばれよ」
部屋の入り口にやって来た。
中央に、またちゃぶ台と丸椅子がいた。
数は両方とも二〇くらいだ。
「それじゃあ、行って来るでゴザル! 鳥類用ジェットエンジン全開でゴザル!」
プリーディさんとゼタヴォーナが、猛スピードでちゃぶ台と丸椅子に向かって行った。
あれなら倒せるか!?
と思ったが、ちゃぶ台と丸椅子はプリーディさんたちの攻撃をかわし、散り散りになって逃げて行った。
「逃げられたでゴザル……」
プリーディさんたちが戻って来た。
落ち込んでいるようだな。
「失敗は誰にでもあるって。元気出せよ。次は捕まえよう」
「気遣いありがとうでゴザル」
「良いんだよ」
「そうやってマメに点数を稼いでいくのが、浮気者の手口なんだなでゴザイマスル」
「おい、そこ、何を言っているだよっ!?」
「ヒモノさんの浮気者ッピ」
「浮気者でヤンス」
「なんでそうなるんだよっ!? 落ち込んでいるみたいだから、慰めただけだろ!?」
納得がいかないぞ!?
「それにしても、あいつらは逃げ足が速すぎるな」
「あれは正攻法ではダメそうねッピ。何か策を考えましょうッピ」
「そうだな。では、どうするか?」
「ここは自分の食べたくなる能力を使ってみるのはどうだオタ?」
「なるほど、もしかしたら、あいつらが寄って来るかもしれないな。よし、今度見つけたら使ってみよう!」
「分かったオタ」
「では、とりあえず、先に進むか」
しばらく飛んで行くと、部屋の中央に巨大な取っ手の付いたティーカップが置いてあった。
白地にピンク色のバラのような花が描かれていて、同じ柄の受け皿に載っている。
大きさは、直径数キロくらいありそうだ。
カップの中から湯気が出ている。
なんだあれは!?
デカすぎるだろ!?
それに和室と合ってないぞ!
なんでこんなものが置いてあるんだ!?
とりあえず、チカさんに聞いてみるか。
「わたくしの電球が、あれは罠の一種だと言っているのです」
「これも罠か。どんな罠なんだ?」
俺がそう言った直後、ティーカップの中から緑茶のような液体が真上に噴き出した。
まるで噴水のようだ。
「あのように、定期的に中のお茶が噴き出してくるのです。当然、とても熱いのです」
「……それだけなのか?」
「それだけなのです」
「もしかして、近付かなければ無害なのか?」
「はい、その通りなのです」
うーむ、なんとも微妙な罠だなぁ。
「むむっ、あのお茶は美味しい気がするでゴザル!」
「なら、飲むしかないキュ!」
「ほう、美味しいお茶ですかコピッ」
「それは興味深いですねピコッ」
「いや、あれに近付くのは、危険じゃないか?」
「そこは問題ないのです。あれは一度噴き出したら、しばらくは噴き出さないのです。今なら近付いても大丈夫なのです」
ええ……
ナニソレ……
クォリティの低い罠だな。
「では、
リリィさんにティーポットを出してもらい、お茶を
そして、みんなで飲んでみた。
なんだこれ!?
カフェオレの味がするぞ!?
見た目は緑茶なのに、なんでこんな味なんだ!?
美味しいけど、違和感があるなぁ。
まあ、色を見ないように飲めば良いだけか。
しばらく進んで行くと、部屋の中央にまたまたちゃぶ台と丸椅子がいた。
数は両方とも二〇くらいだ。
「あれは敵か? それとも罠なのか?」
「あれは敵なのです」
「では、オヴァーンサ、能力を使用してみてくれ」
「了解オタ。それじゃあ、発動オタ」
オヴァーンサがそう言った。
発動しても見た目は、何も変わらないな。
「お腹がすいてきたキュ…… オヴァーンサ、とっても美味しそうキュ……」
「食べたいでゴザル…… 食べたくて仕方ないでゴザル……」
キュキュとプリーディさんの方が、ちゃぶ台たちより先におかしくなってきたぞ!?
「お前らが先に釣られてどうするんだ!? 正気を保て!」
「食べたいキュ!」
「食べさせるでゴザル!」
「しっかりしろ!?」
「仕方ありません。ここはワタクシの秘技『水着縛り』で拘束しましょう」
ルメーセがそう言うと、キュキュとプリーディさんの首から下に、黒い
これが秘技『水着縛り』か。
こんなのが秘技で良いのか?
「食べさせろキュ!」
「食べさせろでゴザル!」
キュキュたちは縛られた状態でも、オヴァーンサ食べようともがいている。
すごい効き目だな。
「ワタクシもお腹がすいてきたわッピ……」
「妾もすいてきたわニャ…… ああ、あのクッキーを食べたいわニャ……」
「メェールさんたちもか!? がんばって正気を保ってくれよ!?」
「お腹すいたッピ……」
「食べたいニャ……」
「食わせるでヤンス……」
「食べたいわッスわ……」
「仕方ありません。皆様も拘束させていただきますわ」
俺と俺の能力で出した連中以外、全員縛られた。
この能力は使いづらすぎるな!?
「ヒモノさん、ちゃぶ台たちが釣れたのです!」
「おっ、来たか!」
ちゃぶ台たちがオヴァーンサの方に突進して来た。
「よし、十分に引き付けたら、攻撃をするぞ!」
「了解であります!」
「自分が食われる前に倒してくれオタ」
「分かっているって! よし、攻撃開始だ!!」
オヴァーンサに向かって来たちゃぶ台たちを、いっせいに攻撃し全滅させた。
オヴァーンサは無事だ。
これは完全勝利だな!
「お見事オタ。それじゃあ、能力を解除するオタ」
「あっ、なんだか食べたくなくなったでヤンス」
「私もよッスわ」
「みんな正気に戻ったようだな。では、水着縛りも解除してくれ」
「ヒモノ様、その前に皆様をよく見てください」
「えっ? どういうことだ?」
「どうですか、ワタクシの攻めた水着縛りは?」
「えっ!?」
「な、なんなのこの
「ちょっと、これ、さっさと消しなさいよニャ! んっ!?」
「不潔ですね! 洗浄します!」
「「ぎゃああああああああああっ!!!」」
セレンさんにいつものをぶっかけられた。
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