第40話 前人未踏の試練
「さあ、このセイケ・ンーキィノォコを食べてくださいでヤンス」
「お断りだ!」
「そこをなんとかお願いしますよでヤンス!」
「断るっての!!」
「私がんばりますから、協力してくださいよでヤンス」
「何をがんばるんだ!?」
「それはもちろん、あなたとの子作りですでヤンス」
「がんばらなくていい!?」
「ああ、もしかして、生まれてくる子供の心配をしているのですかでヤンス? そこは問題ありませんよでヤンス。子供は金持ちの誰かが育てるらしいですよでヤンス」
「誰かって、誰だよ!?」
「そこはよく知らないですでヤンス」
「そこが大問題なんだろ!? 親として、そんな無責任な真似ができるか!?」
「これに失敗したら、私は家を追い出されるんですよでヤンス! そうしたら、生きていけないんですよでヤンス! だから、協力してください、お願いしますでヤンス!!」
「知るか! 再就職がんばれ!!」
「ひどいでヤンス! あなたには人の心がないのですかでヤンス!? 血も涙もないのですかでヤンス!?」
「お前に言われたくねぇよ! もういい、聖剣、こいつをブミらせてくれ!!」
「仕方ねぇなぁ」
鳥類のなった聖剣がメイドの頭をぶっ叩いた。
「ブミィィィィィィィィ……」
メイドはあお向けに倒れた。
どうやら気絶したようだ。
「悪を倒したか。それにしても、この国はヤバいな。逃げた方が良いんじゃないか?」
「それは早計よッピ。まだ旅支度が済んでいないのよッピ。今出て行くのはデメリットが多いわッピ」
「それはそうだけどさぁ」
「強者の血は誰でも取り込みたくなるものでゴザル。この程度で動じてはいけないでゴザル」
「まあ、確かにステータスや特殊能力を重要視しているヤツは、どの国にでもいるからねニャ」
「そういうものなのか!?」
「そういうものなのよッピ」
ステータスや特殊能力がある世界も大変なんだな。
「ヒモノ、ここにいる間は、常に警戒を怠らないようにしよう」
「そうだな。気を付けよう」
「特に若い女には気を付けるのよニャ」
「分かったよ」
「さあ、食事を続けましょうッピ」
「ああ、そうしよう」
「ヒモノさん、ワタクシが食べさせてあげるわッピ。はい、あーんしてッピ」
メェールさんがそう言って、スプーンを差し出してきた。
「なんでいきなりそんなことをするんだよ?」
というか、この世界にもあーんがあるんだな。
「図書館のお礼よッピ。固いこと言わないのッピ」
「そんなの別にいらないって」
「ワタクシはお礼がしたいのよッピ。こういうのは受け取らない方が失礼なのよッピ。はい、あーんしてッピ」
「仕方ないな」
メェールさんに食べさせてもらった。
少々照れくさい。
そういえば、何を食べさせられたのだろうか?
味はデミグラスソースで、食感はキノコみたいだったな。
「次は妾ねニャ」
「なんでレイトナさんまで?」
「妾も図書館のお礼よニャ。はい、あーんするニャ」
「はいはい」
レイトナさんに食べさせてもらった。
今食べたのは、塩味でキノコのような食感だったな。
ん?
キノコ?
そういえば、いつの間にかセイケ・ンーキィノォコの炭火焼きが消えているぞ!?
ま、まさか!?
「おい、メェールさん、レイトナさん、俺に何を食わせたんだ?」
「セイケ・ンーキィノォコの炭火焼きに、ソースをかけたものッピ」
「セイケ・ンーキィノォコの炭火焼きを、細かく切ったものよニャ」
「なんでそれを食わせるんだよ!?」
「ヒモノさんを元気にしようとしただけよッピ」
「そうよニャ。これは善意なのよニャ」
「余計なお世話だ!?」
アレが元気になっても仕方ないだろ!?
「ヒモノさん、それは食べた方が良いのです!」
「えっ、なんでだ!?」
「セイケ・ンーキィノォコはとてつもなく栄養が豊富で、非常に健康に良いのです!」
「まあ、それはそうだろうな」
だから、アレが元気になるんだよな。
「しかも、ひと晩欲望の衝動に耐えると、ステータスが強化されるのです!」
「ええっ!? そんな効果があるのか!? そいつはすごいな!」
「セイケ・ンーキィノォコに、そんな効果があったのッピ?」
「知らなかったわニャ。ただの精力剤だと思っていたわニャ」
「強力すぎて、みんな耐えられなかっただけなのです!」
俺はそんなのを食わされたのかよ!?
「というわけで、残りも食べてしまうのです」
「ああ、分かったよ」
俺はセイケ・ンーキィノォコを完食した。
「そういえば、耐えられなかった時はどうなるんだ?」
「わたくしの電球が、人生の墓場行きだと言っているのです!」
「人生の墓場!? いったい何が起きるんだ!?」
「そこはよく分からないのです!」
「また肝心なところが分からないのかよっ!?」
「おっさん、分からねぇもんは仕方ねぇだろ。それよりも、いい加減飯を食っちまえよ。冷めちまうぞ」
「ああ、そうだな」
出された食事を完食した。
「美味しかったキュ! ごちそうさまキュ!」
「美味しかったでゴザル!」
「ああ、まったくだな。ごちそうさま」
食った食った、満腹だな。
少し食休みをしよう。
「……なんか暑くないか?」
「そんなことはねぇぞ」
「聖剣って、温度を感じるのか?」
「感じるに決まってんだろ!? 俺様は聖剣なんだぜ!」
「そうだったのか」
聖剣って、そういうものなのか?
まあ、いいか。
「おっさん、熱でもあるんじゃねぇか?」
「えっ、どうなんだろう? だるさとかはないんだがなぁ」
「なら、ワタクシが熱を測ってあげるわッピ」
メェールさんが俺の額に、自身の額をくっつけた。
なんでわざわざそこで測るんだ?
「どうだ、メェールさん? 熱はあるか?」
「…………………………」
「メェールさん? どうしたんだ?」
メェールさんの息が荒くなってきた。
しかも、額が熱い。
これはメェールさんの方が熱があるんじゃないか!?
「メェールさん!? 大丈夫か!?」
「ああ、ヒモノさん、今日のあなたは一段と素敵ねッピ……」
はぁっ?
いきなり何を言っているんだ?
熱でおかしくなったのか?
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