第39話 能力は遺伝する?
では、他の本を探そうか。
と思ったけど、メェールさんとレイトナさんが司書に怯えまくっていて、かわいそうだ。
仕方ない、今日はもう帰るとしようか。
「そろそろ帰ろうか」
「なぜッピ? まだそんなに本を読んでいないでしょッピ」
「君らが司書に怯えているからだよ」
「妾のことは気にしなくて良いわよニャ」
「そうもいかないだろ。さあ、帰ろう」
「分かったわッピ。気遣ってくれてありがとうッピ」
ふたりともしおらしくしていると、かわいいんだよな。
他のみんなにも声をかけて、図書館を出た。
迎賓館に着くと、メイドからA4サイズくらいの大きさの茶色い封筒をもらった。
ピセーイ王国が調査した未開の領域の資料だそうだ。
仕事が早くて、素晴らしい!
この国には優秀な人材がいるみたいだな。
だが、他の国の分と地球人の調査は、まだまだ時間がかかるそうだ。
まあ、それは仕方ないか。
では、さっそく見てみよう。
俺たちはリビングにある椅子に座り、テーブルの上に資料を広げた。
「なんだこの写真は?」
そこには地面から天井まで伸びている、大きな岩の壁が映っていた。
横幅もすさまじく長いようだ。
「それは未開の領域の外観よッピ」
「外観? では、未開の領域は、この中にあるのか?」
「そうよッピ。この中はなぜか迷路状になっているのよッピ」
「それはダンジョンなのか?」
「ええ、その通りよッピ。内部には大量のミョガガベがいて、罠、宝箱なんかもあるそうよッピ」
「そんな場所なんだ」
またダンジョンの中のダンジョンかよ。
他にあるのは、内部で遭遇したミョガガベ、罠、宝箱の中身、水場、鉱物、生えている植物の情報と地図だな。
「地図を見る限り、内部はものすごく広いんだな」
「ええ、とてつもなく広いわッピ」
「それに高さもすさまじいのよニャ。ものすごく長い上り階段があって、天井の向こう側まで続いていると言われているのよニャ」
「実際に届いているからねッピ」
「とんでもない場所なんだな。いったいどのくらいの食料を用意すれば良いんだ?」
「未開の領域なんだから分かるわけないでしょッピ。だからこそ、内部で調達することを考えなきゃダメよッピ。そのために、こうして情報を集めているのよッピ」
「それもそうだな」
「ヒモノさん、わたくしの電球が、新たなステータス令嬢の力が必要だと言っているのです!」
「では、また筋肉の修行場に行く必要があるのか」
「そのステータス令嬢というのは、なんなのでゴザル?」
プリーディさんに説明した。
「なんと、妻が増える能力とは、さすが強者でゴザル!」
「そういうものじゃない!?」
勘違いも甚だしいぞ!?
「あらかじめ誰を出すか決めた方が良いと思うわッピ」
「そうだな。では、誰にしようか?」
「わたくしの電球が、回復力、製作力、料理力、洗浄力の四人が必要だと言っているのです!」
「なるほど、確かに長期間の旅には必要な能力だな。だが、四人か…… この間はひとり出すのに、三か月かかったからなぁ。今度は一年も修行になるのか……」
「前回と同じとは限らないわよッピ。とりあえず、行ってみましょうッピ」
「そうだな。といっても、今日はもう遅いから、明日にしようか」
「ええ、そうねッピ」
そういえば、みんなは図書館で、どんな本を読んだのだろうか?
ちょっと聞いてみようか。
「私は『特殊能力は遺伝するかもしれない』という本を読んでいた」
「どんな本だったんだ、ステーさん?」
「タイトル通り、親の特殊能力が子に受け継がれるかを調べてまとめた本だ」
「そうなのか。結果はどうだったんだ?」
「受け継がれることもあるらしい」
「ということは、受け継がないこともあるのか?」
「ああ、その通りだ」
「どのくらいの確率で受け継がれるんだ?」
「五分五分のようだ」
「へぇ、そうなんだ」
ということは、俺の子供も聖剣とステータス令嬢を出せるようになるかもしれないのか。
子供にとって良いことなのだろうか?
まあ、愉快な能力ではあるから、恨まれたりはしなさそうだな。
他のみんなはレシピ、食べ物、お茶の本などを読んでいたそうだ。
「皆様、お食事の用意ができましたでヤンス。食堂までご案内いたしますでヤンス」
メイドがやって来て、そう言った。
「お食事キュ!」
「お食事でゴザル!」
こいつら急にテンションが上がったなぁ。
「どうぞ、こちらへでヤンス」
俺たちは食堂に向かった。
ここが食堂か。
広い室内に、高級そうな絵画などの美術品が飾ってある。
中央には、白いテーブルクロスがかけられた大きなテーブルが置いてある。
その上には洋食のような見た目の、さまざまな料理が並べられている。
どれも美味しそうだな。
「おおっ、美味しそうキュ!」
「これがピセーイ王国の料理かでゴザル。とても美味しそうでゴザル」
キュキュとプリーディさんの、テンションが上がりまくっているぞ。
微笑ましいなぁ。
「お好きな席へどうぞでヤンス」
「いただきますキュ!」
「いただきますでゴザル!!」
キュキュとプリーディさんが席に着くなり、ものすごい勢いで食べ始めた。
早く食べないとなくなりそうだな。
俺も食べるとしよう。
「いただきます」
俺は近くにあった煮物料理を食べてみた。
デミグラスソースみたいな味がする。
他の料理も見た目通り、洋食のような味付けだな。
うん、どれも美味しいぞ。
「こちらをどうぞでヤンス」
メイドが俺の前に皿を置いた。
そこには、傘の開いていないマツタケのような焼きキノコが盛り付けられていた。
大きさは長さ三〇センチくらい、柄の太さ五センチくらいだ。
なんだこれは?
ちょっと聞いてみるか。
「それは『セイケ・ンーキィノォコ』の炭火焼きですでヤンス」
聖剣キノコ?
「なんで俺にだけ出したんだ?」
「それは男性にのみ効果があるからですでヤンス」
「男性だけ? どんな効果があるんだ?」
「男性のご子息が活性化されますでヤンス。さらに命中率まで上がりますでヤンス」
「おい、こら、なんでそんなものを食わせようとするんだよっ!?」
「必要だからですでヤンス」
「なんのためにだよっ!?」
「珍しい特殊能力を持っていそうなので、子供の素を採取しておけとの命令なのですでヤンス」
「なんだそりゃぁっ!? というか、それは口にしたらマズいヤツなんじゃないのか!?」
「あっ、確かにその通りですでヤンス。今のは聞かなかったことにしてくださいでヤンス」
「そうはいかねぇよ!?」
このメイド、口が軽いな!?
実は仕事ができないヤツなのか!?
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