第37話 報酬をもらおう

 ピセーイ王国に戻って来た。


 都市部の門番に他国の王を討伐してきたと言ったら、城壁内にある兵士の詰所と思われる場所に連れて来られた。


 そこでしばらく待っていると、西洋甲冑を着た人がやって来た。


「他国の王をすべて倒したというのは、本当ですかでアリマス?」


 この人は俺たちに王の討伐を依頼した人のようだ。


「ジャッダァ王は撃破、他の三名は特殊能力を使えないようにしたのです! これであなたたちは救われたのです!」


「本当ですかでアリマス!? おおっ、救いの女神よ、ありがとうございますでアリマス!!」


「三名の女王は、そこにいるのです!」


「えっ、連れて来ちゃったのですかでアリマス!? なぜそんな面倒なことをでアリマス!?」


 すごく迷惑そうだな。


「その三名は女神様たちで、適当に処分しておいてくださいよでアリマス」


「扱いが雑じゃないか!?」


 こいつら戦犯だろ!?


 裁判しないのか!?


「今はいろいろと忙しいので無力化した連中なんて、どうでもいいですでアリマス」


 なんだそれは!?


 この国の人はそうなるのかもしれないけど、三人の国の人はそうでもないのではないか!?


「それに関して、ワタクシから提案があるわッピ。この人たちは、これから未開の領域に向かうのよッピ」


「なんとあの危険地帯にですかでアリマス!?」


「ええ、そうよッピ。ワタクシたちもそれに付いて行くわッピ。だから、国民たちには、ワタクシたちは罰として未開の領域に追放したと言えば良いわッピ。危険地帯への追放なんて、実質死刑みたいなものだから不満は出ないでしょうッピ」


「それは名案ですねでアリマス!」


「そんなんで良いのか!?」


 戦犯の扱いだぞ!?


「良いんじゃないですかでアリマス」


「ええ……」


 本当に良いのだろうか?


 まあ、現地の人が納得するなら、それで良いのかもしれないな。


「では、ヒモノさん、これからもよろしくねッピ」


「あ、ああ……」


「ワタクシたちを役人に渡してしまおうとしたのでしょうッピ? 甘かったわねッピ」


「なんのことやら……」


 見抜かれていたのかよ。


 面倒な連中だな。



「というわけで、わたくしたちは未開の領域の情報が欲しいのです!」


「かしこまりましたでアリマス。すぐに手配しますでアリマス」


 ついでに、地球から来た人の調査も依頼した。


「調査には時間がかかりますでアリマス。その間の宿泊場所は、こちらで用意しますでアリマス」


 俺たちは宿泊場所に案内された。


 そこはとてつもない豪邸だった。


 まるで西洋の宮殿だな。


 ここは迎賓館として使用している建物らしい。


 俺たちって、国賓扱いなのか!?


 こんなところに泊まらせてくれるほど、戦争に迷惑していたということなのかな?



 中に入った。


 立派なシャンデリア、美しい絵画に彫刻の数々、赤いカーペットがある。


 当然ながら、内部も豪華なんだな。


「いらっしゃいませでヤンス」


 クラシカルなメイド服姿の美女が出迎えてくれた。


 黒いまとめ髪に、眼鏡をかけている。

 知的でクールで、仕事ができそうな方だな。


 しかも、背が高めでスタイルも良い!

 一流のメイドって感じだ。


 なぜか語尾はアレだけどな!


「どうぞ、こちらへでヤンス」


 俺たちはリビングと思われる場所に案内された。


 高級そうな家具が置いてあるなぁ。


「ごゆっくりおくつろぎくださいでヤンス」


 そう言われても、ここではちょっと落ち着かないな。


 貧乏気質だなぁ。



 退屈なら、外を出歩いても良いそうだ。


 ここには、さまざまな店や図書館があるらしい。


 せっかくだから、行ってみようか。


 金があまりないから、目的地は図書館一択だけどな!!!


「ちょっと図書館に行ってくるよ」


「なら、ワタクシも行くわッピ」


「妾も行くわよニャ」


「拙者も行くでゴザル」


 結局みんなで行くことになった。



 町中を歩いている。


 西洋風の美しい町並みが続いていて、素晴らしい眺めだな。


 ただ、俺たちは道行く人たちから、ものすごく注目されているな。


 まあ、無理もないか。


 町の人たちは、日本で売られているようなカジュアルな服を着ているのに対し、俺たちは……


 赤ジャージ、棘付き肩パッド、胸当て、腹巻。


 電球、ペンギンの着ぐるみ。


 ウサギの着ぐるみがふたり。


 コピー機、脱臭剤から人間の手足が生えている化け物が二体ずつ。


 派手なパーティドレスが四人。


 僧衣。


 こんな格好だからなぁ。


 どう考えても不審者の集団だよな。


「ワタクシたちジロジロと見られているわねッピ」


「そうねニャ」


 メェールさんとレイトナさんがそう言いながら、俺の背中にくっ付いてきた。


「まあ、目立つ格好をしているからな。無理もないだろう。ところで、なんで君らはくっ付いて来るんだ?」


「べ、別に理由なんてないわよッピ……」


「そ、そうよニャ」


「歩きにくいから、離れてもらえるか?」


「何言ってるのよッピ! せっかくのデートなんだから、エスコートしなさいよッピ!」


「そうよニャ! 妾をエスコートできるなんて、この上ない喜びでしょニャ!」


「デートじゃなくて、図書館に行くだけだろ」


「それがデートなんでしょッピ!」


「そうよ、これはデートよニャ!」


「デートだったのでゴザル? なら、拙者もエスコートするでゴザル」


 プリーディさんが正面からくっ付いてきた。


 こいつまでやるのかよ!?


「ヒモノ、やはりその三人は始末した方が良いのではないか?」


「その方が平和になりそうなのです!」


 ステーさんとチカさんが、三人をにらみながらそう言った。


「落ち着け、お前ら!? 町中で暴れるな!!」


「あらあら、奥さん、修羅場ですよダッペ」


「あら、本当ね、若いって良いわねぇダッピョ」


 周囲の人たちに、好奇の目で見られまくっているぞ!?


 図書館に行くだけなのに、なんでこんな面倒なことになっているんだよっ!?

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