第36話 五人目の妻!?

「というわけで、末永く仲良くしようでゴザル」


「だから、なんでそうなるんだよっ!?」


「強者に嫁ぐのは、生物として当然でゴザル」


「なんだその理屈は!?」


「生物の理屈でゴザル」


「そういうもんなの!?」


 これが野性的になるということなのか!?


「では、さっそく子作りをするでゴザル」


「なんでそうなるんだよ!?」


「ヒモノ、こいつは始末した方が良いのではないか?」


「すぐに始末するのです!」


「ええ、そうしましょうッピ!!」


「これは始末した方が良いわニャ!!」


「落ち着け! さすがにそれは気が早すぎるだろ!」


「さすが強者でゴザル。すでに四人の妻がいたとはでゴザル」


「何を言っているんだ!? 誤解だ!?」


「しかし、何人いようと問題ないでゴザル。拙者は何人目の妻でも良いでゴザル」


「ええっ!?」


「そういえば、自己紹介がまだだったでゴザル。子作りの前に、まずはそちらを済ませてしまおうでゴザル」


 この状況で自己紹介を始めるのか!?


 こいつ周囲を気にしなさすぎなのでは!?



「拙者のことは、プリーディと呼んで欲しいでゴザル。よろしくでゴザル」


 俺たちも自己紹介をした。


「夫であるあなたを、なんと呼べば良いのでゴザル?」


「いや、まだ結婚したわけではないだろ。俺のことはヒモノで良いよ」


「分かったでゴザル」



「ステータスウィンドウに名前はあるのか?」


「拙僧にはないぜでゴザイマスル」


「それは不便だな」


「なら、名付けるでゴザル。あなたは『ゼタヴォーナ』で決定でゴザル」


「了解したぜでゴザイマスル」


「よろしくな、ゼタヴォーナ」


「こちらこそよろしくだぜでゴザイマスル」



「ところで、なぜゼタヴォーナという名前になったんだ?」


「思い付きでゴザル」


「そうなのか」


 由来は特にないのか。



「ゼタヴォーナは得意なことはあるのか?」


「拙僧は『余計な語尾が付かない、あまりお買い得ではない通訳翻訳能力』『食あたりしなくなる能力』『食に関する直感が鋭くなる能力』『身体能力が強化される能力』という特殊能力を身に付けているぜでゴザイマスル」


「特殊能力が四つもあるのか。そいつはすごいな」


 プリーディさんの特殊能力の、デメリットだけがなくなっているものだと!?


 プリーディさんの上位互換なのかよっ!?


 こいつはとんでもないな!?



 そういえば、プリーディさんのレベルはいくつなのだろう?


 ステーさんと聖剣を、あっさりと撃退できるくらいだから、かなり高いのだろうな。


 ちょっと聞いてみるか。


「拙者のレベルは千億くらいだったはずでゴザル」


「そいつはすごいな!」


 道理で強いわけだな。


 ついでに、メェールさんとレイトナさんのレベルも聞いてみた。


 ふたりとも十億だったそうだ。


 まあ、ふたりは直接的な戦闘をしなさそうなタイプだし、そんなものなのかな。



「自己紹介も済んだことだし、異世界の食べ物探しに出発するでゴザル」


「地球に帰る方法探しだっての!? って、本当に付いて来るのか!?」


「本当でゴザル」


 ええ……

 本気で付いて来る気なのかよ……


 まあ、いいか。

 こいつらはピセーイ王国の役人に渡して、裁いてもらう予定だしな。



「ところで、プリーディさんたちは飛べるのか?」


「飛べないでゴザル」


「拙僧も飛べないぜでゴザイマスル」


「どうやらあーしの出番のようッスね!!」


「ああ、頼むよ、トーリさん」


「あーしにおまかせッスよ! おふたりを立派な鳥類にしてみせるッス!!」


「それはどういうことなのでゴザル?」


「こういうことッスよ!」


 トーリさんが能力を使用した。


 プリーディさんたちは、ペンギンの着ぐるみを着せられた。


「これは聖剣が身に着けていた鳥の皮でゴザル? とりあえず、食べてみるでゴザル」


 プリーディさんが着ぐるみにかじり付いた。


「美味しくないでゴザル」


 着ぐるみに穴が開いた。


 なんでいきなり食うんだよ!?


「何をやっているッスか!? それは食べ物じゃないッスよ!?」


「鳥は食べ物でゴザル」


「鳥類は生物ッスよ! 食べられてしまうことがあるだけで、食べ物ではないッス!!」


「食べられるものは、食べ物でゴザル」


「違うッスよ!」


 よく分からん問答をしているなぁ……


「トーリさん、落ち着いてくれ。とにかく飛べるようにしてくれ」


「うう、分かったッスよ。とりあえず、能力をかけ直すッス」


 プリーディさんの着ぐるみが消え、再度出現した。


「プリーディさん、飛ぶ練習をしてくれ」


「分かったでゴザル」



「それじゃあ、始めるッスよ。気合と根性と勇気と熱血と闘魂と情熱を込めて、羽ばたくッス!!」


「分かったでゴザル」


「了解だぜでゴザイマスル」


 プリーディさんたちは、あっさりと空を飛んでみせた。


 しかも、相当な速さで、自由自在に空を飛んでいる。


「こ、これはなんというすさまじい鳥力!? すごいッス! あのふたりはすでに立派な鳥類ッス!!」


「ええ……」


 なんでいきなり飛べるんだ?


 身体能力が強化される能力で、鳥力まで強化されているのか?


 まあ、どうでもいいか。



「空を飛ぶの楽しいでゴザル」


「まったくだぜでゴザイマスル」


 ふたりとも初フライトを楽しんでいるようだ。


「ヒモノ、何か飛んで来るッスよ!?」


 トーリさんが空を指差して、そう言った。


「えっ!?」


 俺はその方向を見た。


 すると、胸ビレのあるあたりに、白い天使のような羽が生えている、大きなさけのような魚がいた。


 全長二メートルくらいありそうだ。


 なんだあいつは!?

 ミョガガベか!?


「あいつは『トォーゼユクメ』というミョガガベよッピ! かなり強いのよッピ!」


「な、なんだって!?」


「あいつは美味しいでゴザル! すぐ捕まえるでゴザル!!」


 プリーディさんがトォーゼユクメに向かって行った。


 そして、トォーゼユクメの胴体を蹴って、地面に叩き落した。


 トォーゼユクメは動かなくなった。


 どうやら倒したようだ。


 おおっ、これはすごい!


 空中戦もこなせるのかよ!


 プリーディさんは強いな!


 彼女には付いて来てもらった方が良いのかもしれないぞ!



 その後、トォーゼユクメを焼いて食べた。


 身と皮は見た目通り鮭のような味で、とても美味しかった。


「美味しいでゴザル!」


 プリーディさんがそう言って、トォーゼユクメを食べ尽くしてしまった。


 頭、羽、ヒレ、骨すらも残っていない。


 かなりの巨体だったのに完食かよ……


 プリーディさんを連れて行ったら、食費がすごいことになりそうだな。


 やっぱり連れて行くのは、やめておいた方が良いのかもしれない。

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