第35話 どうにかなるの答え

 勢いよくステーさんが、クショホション女王に引き寄せられて行く。


 ステーさんが食われる!?


「むぎゅっ!?」


 と思っていたら、ステーさんの出っ張りまくっている胸当てが、女王の頭部に激突した。


 女王はそのまま倒れ、小刻みに震え出した。


 どうやら気絶したようだ。


 もしかして、これが『どうにかなる』の答えなのか?


 間抜けすぎるだろ!?


 もっとマシな倒し方はないのかよっ!?



「ステーさん、大丈夫か!?」


「ああ、私は問題ない」


「良かった」


「心配させてすまない」


「いや、それは良いんだよ」


「ヒモノさん! わたくしの電球が、早く女王をブミらせろと言っているのです!」


「ああ、分かったよ」


 俺は聖剣を出し、ステーさんに渡した。


「ブミィィィィィィィィ……」


 そして、聖剣で女王の頭を容赦なく叩いた。


「これで問題ないと、わたくしの電球が言っているのです!」


「そうか、良かった。これですべての王を倒したんだな」


「その通りなのです!」


 ああ、苦労したなぁ。


 いや、そうでもないか? 


 ピセーイ王とジャッダァ王は自爆だった。


 ホプレイズ女王は褒めるところを探している隙を突いて、聖剣が撃破した。


 ケスデニグ女王とクショホション女王も、ある意味自爆だよな。


 あれ?

 俺は肝を冷やしただけじゃないか?


 まあ、勝ったからどうでもいいか。



「勝って安心したら、お腹がすいてきたキュ!」


「そうだな。食事にしようか」


「やったキュ!」


「では、お茶を淹れましょうかコピッ」


「そうですねピコッ」


 コピータとピコピコがお茶を淹れ始めた。


 あたりに良い香りが漂ってきた。


「はっ、美味しそうな良い匂いがするでゴザル!」


 女王が目を覚ました。


「拙者も、そのお茶が飲みたいでゴザル」


 こいつ無遠慮だな!?


 まあ、いいか。

 一杯くらいおごってあげよう。


「コピータ、彼女にも淹れてあげてくれ」


「かしこまりましたコピッ」


「ありがとうでゴザル」


 コピータがお茶を淹れてくれた。


「いただきますでゴザル」


 女王がお茶を飲んだ。


「香り高くて、美味しいでゴザル!」


「ありがとうございますコピッ」


 俺も飲んでみようか。


 うん、確かに良い香りで美味しいな。


 紅茶みたいな感じだ。


「そういえば、これはなんのお茶なんだ?」


「『シビィーンニタ・マッタキ・イロイエ・キィターイ』という植物の葉から作ったお茶ですコピッ」


 ん?

 今『尿瓶しびんにたまった黄色い液体』と聞こえたような気がする。


 気のせいだよな?


 うん、気のせいだな。


 そういうことにしよう。



「ふう、ごちそうさまでゴザル。素晴らしいお茶だったでゴザル」


「お粗末様でしたピコッ」


「ところで、クショホション女王、ステータス捕食は使えるのか?」


「何を言っているでゴザル? 当然、使えるでゴザル」


「ちょっとステータスウィンドウを見て、確認した方が良いと思うぞ」


「では、ステータスオープンでゴザル」


 女王の前に、僧侶のような格好をした金髪の女王が現れた。


 やはりそうなったか。


「らっしゃっせー、毎度おなじみステータスウィンドウだぜでゴザイマスル」


「これはなんなのでゴザル?」


「あんたのステータスウィンドウだぜでゴザイマスル」


「いつもと違うよでゴザル」


「いえいえ、いつも通りだぜでゴザイマスル」


「そうだったっけでゴザル?」


「そうだぜでゴザイマスル」


「まあ、いいかでゴザル」


「まあ、いいじゃねぇかでゴザイマスル」


 ステータスウィンドウが人型になったというのに、全然動じないんだな。


 やっぱりこの女王は変わっているなぁ。


 いや、もしかすると、一番大物なのかもしれないな。



「女王、特殊能力について聞いてみなよ」


「そうだったでゴザル。拙者の特殊能力を教えて欲しいでゴザル」


「『余計な語尾が付かない、あまりお買い得ではない通訳翻訳能力』『ちょっと食い意地が張るようになるけど、食あたりしなくなる能力』『食欲が旺盛になるけど、食に関する直感が鋭くなる能力』『野性的になるけど、身体能力が強化される能力』の四つがあるぜでゴザイマスル」


 デメリットがある特殊能力が存在するのか。


 それのせいで女王は、こんな性格なのかな?


「ステータス捕食はないのでゴザル?」


「ないぜでゴザイマスル」


「なぜでゴザル?」


「不明だぜでゴザイマスル」


「これは困ったでゴザル」


 なんか独特なテンポの会話だな。



「そこのあなた、なぜ拙者のステータス捕食が使えなくなったか知っているのでゴザル?」


「それは、そこの聖剣で叩いたせいだな」


「俺様が、その聖剣だぜ!!」


「なんとあなたのせいだったのかでゴザル!」


「そうなるな」


「ということは、あなたが次のクショホション王でゴザル」


「えっ!? どういうことだ!?」


「拙者を倒したのでしょうでゴザル? より強い者が王になるのが、拙者の国の決まりでゴザル」


「なんだそれは!? クショホションはそんな国だったのか!?」


「いや、元々は違ったけど、拙者がそう決めたでゴザル」


「そうだったのか!?」


 野蛮なのは、こいつだけなのかよ!?


「俺は王になるつもりはないぞ」


「それはなぜでゴザル?」


 俺は事情を説明した。


「おおっ、それは興味深いでゴザル! 異世界の食べ物を食べてみたいでゴザル!」


 興味の対象は、それなのか!?


「決めたでゴザル! 拙者はあなたに付いて行くでゴザル!!」


「ええ……」


「ああ、それから拙者に勝った、あなたに嫁ぐでゴザル」


「なんでそうなるんだ!?」


 訳が分からないぞ!?

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