第34話 VSクショホション女王
俺たちはクショホション王国内にある平原にやって来た。
あたりには草がまばらに生えている。
少し離れたところに森がある。
「チカさん、なんでこんなところに来たんだ?」
「わたくしの電球が、もうすぐここにクショホション女王がやって来ると言っているのです!」
「そうだったのか。では、ここに毒餌を仕掛けようか」
睡眠薬をたっぷりと塗って、注入までした『グハパドデの実』というマンゴーによく似た果物を五個置いた。
では、森に隠れて獲物を待つとしようか。
しばらく待っていると、誰かがやって来た。
銀髪のストレートロングヘアーの、クールな感じの美女だ。
長身でスタイル抜群。
カーキ色のジャケット、黒のスキニーパンツ、黒のスニーカーを身に着けている。
ハイキングをしている女性みたいな格好だな。
「あれがクショホション女王よッピ」
メェールさんが小声で教えてくれた。
彼女がそうなのか。
さて、作戦はうまくいくのかな?
クショホション女王がグハパドデの実の近くにやって来た。
どうやら実を発見したようだ。
おっ、実を拾ったぞ。
そして、迷わずかぶり付いただと!?
えええええっ!?
本当に拾い食いをするのかよ!?
あんた女王だろ!?
もっと用心しろよ!?
「ここまでは順調ねニャ」
「ああ、そうだな。まさか本当に食べるとは思わなかったぞ」
「あいつは変わり者だって言ったでしょニャ」
いくらなんでも変わり者すぎないか?
クショホション王国の教育はどうなっているんだ?
まあ、そんなのどうでもいいか。
女王がグハパドデの実を完食した。
なんだかうれしそうな顔をしている。
変わり者だが、あの顔はかわいいな。
「そういえば、あの薬はどのくらいで効果が現われるんだ?」
「個人差はあるけど、そんなに長い時間ではなかったはずよニャ」
「そうなのか。では、ここに隠れて待つとするか」
「ええ、そうしましょうニャ」
あれ?
女王が俺たちの方を向いたぞ。
そのまま俺たちの方をじっと見続けている。
もしかして、見つかってしまったのか?
女王が俺たちの方に向かって歩き出した。
これは確実に見つかったようだな。
仕方ない、薬が効くまで時間を稼ごう。
「ごちそうさまでゴザル」
女王が俺たちに向かって、そう言った。
えっ!?
なんでそんなことを言うんだ!?
まさかバレているのか!?
とりあえず、とぼけてみるか。
「いきなり何を言っているのですか? なんのことか分からないのですが?」
「あのグハパドデの実から、あなたたちのニオイがしたでゴザル。とぼけても無駄でゴザル」
「ニオイ!? 俺たちって、そんなに臭うのか!?」
紳士として、それはヤバいぞ!?
「えっ、このワタクシが臭うのッピ!?」
「わ、妾は臭わないわよねニャ!?」
「あなたからは、おじさんの臭いがするでゴザル」
女王にハッキリと言われてしまった。
臭いには気を付けていたのに……
ショックだ……
「そのふたりからは、おばさんの臭いがするでゴザル」
メェールさんとレイトナさんがそう言われた。
「お、おばさんッピ!?」
「妾はまだそんな年じゃないわよニャ!?」
メェールさんとレイトナさんもショックなようだ。
「それから、拙者に毒は効かないでゴザル」
睡眠薬を仕込んだことまでバレているのか!?
「なんで分かったのキュ!?」
「変な味がしたでゴザル」
あれは無味無臭ではなかったのか!?
こいつ感覚が鋭いな!?
「では、実のお礼に、あなたたちのステータスウィンドウを食べてあげるでゴザル」
女王がそう言って、俺たちの方に手のひらを向けた。
ステータス捕食を使う気か!?
「これは、人型のステータスウィンドウなのでゴザル? 初めて見たでゴザル。とても興味深いでゴザル。食べるのが楽しみでゴザル」
人型であろうと、ためらうことなく食べることができるのか!?
恐ろしすぎる!?
「させるわけねぇだろ!!」
木の陰に隠れていた聖剣が、女王に突っ込んで行った。
あれは避けられないだろう。
これは勝ったな!
な、なんだと!?
残念ながら、世の中そんなに甘くはなかった。
完全に虚を
「くそがっ、まだまだ!?」
聖剣が再び女王に突撃した。
「加勢する!」
ステーさんも女王に向かって行った。
ふたりなら勝てるか!?
「ぐっ!?」
「なっ、は、離しやがれっ!?」
だが、ステーさんは蹴り飛ばされ、聖剣は捕まってしまった。
ナニアレ!?
女王、強すぎない!?
「これはなんでゴザル? 食べれるのでゴザル?」
「食うな!? 俺様は食いもんじゃねぇぞ!?」
「でも、鳥みたいで美味しそうでゴザル」
「これは着ぐるみだ!?」
「そうなのでゴザル? まあ、なんであろうと食べてみるでゴザル」
女王が聖剣を口に運ぼうとしている。
本当に食べる気なのかよ!?
食われたら、どうなるんだ!?
「おっさん、能力を解除しろ!」
「ああ!」
「あーしのも解除ッス!」
俺は聖剣消えろと思ってみた。
すると、聖剣と着ぐるみが消えた。
「消えたでゴザル…… 残念でゴザル…… 仕方ない、そこの人型のステータスウィンドウを食べるでゴザル」
くそっ、今度はステーさんたちを狙う気か!?
なら、ステーさんにも消えてもらおう!
俺はステータスクローズと思ってみた。
だが、ステーさんは消えなかった。
これがステータスウィンドウを強制的に出現させるということなのか!?
「では、いただきますでゴザル」
女王がそう言って、口を大きく開けた。
すると、ステーさんが女王の口に、勢いよく引き寄せられて行った。
マズい!?
ステーさんが捕食される!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます