第33話 クショホション女王対策会議

「最後はクショホション王国か。そこにはどんな王がいるんだっけ?」


「『ステータス捕食』を使う『プリーディ・クショホション』女王よッピ」


「ああ、それか。ステータスウィンドウを食べるって、本当なのか?」


「諜報部からは、そう報告されているわねッピ。ミョガガベのステータスウィンドウを食べているのを、目撃したらしいわッピ」


「妾の国でも同様の報告が上がっているわニャ」


「そうなのか。チカさん、今回はどうしたら良いんだ?」


「わたくしの電球が、どうにかなる全軍突撃だと言っているのです!」


「そのどうにかというのは、なんなんだ?」


「もちろん、分からないのです!」


「やはりかぁ」


「では、また、なぜどうにかなるのか考えてみましょうキュ~」


「そうだな」



「ステータス捕食って、具体的に何をしてくるんだっけ?」


「まずは対象のステータスウィンドウを強制的に出現させるのッピ。次にそれを吸い込んで、口の中に入れてしまうそうよッピ。そして、み砕いて、飲み込んでしまうらしいわッピ」


「食われた人は意思がなくなって、女王の言う通りに動く人形のようになるんだったっけ?」


「ええ、その通りよッピ」


 こんな訳の分からん能力を、どうできるのだろうか?



「とりあえず、順を追って考えてみようか」


「分かりましたキュ~」


「ステータスウィンドウを強制的に出現させるそうだが、規格が違っていて失敗したとか、あり得るのかな?」


「可能性がないとは言わないけど、過度な期待はしない方が良いと思うわッピ」


「そうだな」


 これは起こってくれたら、うれしいくらいの気持ちでいた方が良さそうだ。



「出現させたウィンドウを吸い込むそうだが、ステーさんたちを吸い込めるものなのか? そもそも半透明の青いプレートのステータスウィンドウは、どのくらいの重さなんだ?」


「重さねぇッピ? 持ったことなんてないから、よく分からないわッピ。あれは浮いているからねッピ」


「わたしもないキュ」


「妾もないわねニャ。でも、人間よりは小さいから、軽いと思うわよニャ」


「そうなのか。それなら、吸い込むのに失敗する可能性はありそうだな。ただ、確証があるわけでもないから、過度な期待はできないけどな」


「そうねッピ。そのくらいの認識の方が良さそうねッピ」



「そもそもステーさんが口の中に入るのか? 女王の口は、そんなに大きいのか?」


「口の大きさは人間並みよッピ。ただ、通常のステータスウィンドウも人間の口よりは大きいけど、なぜか入るらしいわッピ」


「特殊能力だから、大きさは関係なく入るということか?」


「おそらくそうなのだと思うわッピ」


 大きすぎて、口に入らないという可能性はなさそうだな。



「ステーさんたちをみ砕いて、飲み込めるのか?」


 そんなの人間業とは思えないのだが?


 いや、レベルやステータスがあるこの世界なら、できるヤツがいてもおかしくないのかな?


「クショホション女王は、身体能力がとても高いという報告を受けているわッピ」


「妾もよニャ。だから、可能だと思うわニャ」


「そうなのか!?」


 そいつはすごすぎだろ!?



「結局なぜどうにかなるのだろうか?」


「よく分からないわねッピ」


「では、どうやって倒そうか?」


「良いことを思い付いたキュ!」


「どんなことだ、キュキュ?」


「ステータスウィンドウよりも、美味しそうなものを用意するキュ! それを食べさせてお腹いっぱいにさせるキュ!!」


「ステータス捕食は、満腹だと食えなくなるのか!?」


「えっ、それは、分からないわッピ。ワタクシの国では、そんなのやっていないわッピ」


「妾の国も試してないわねニャ。ただ、特殊能力なのだから、そういうものではないと思うわニャ」


「試してないのか。なら、やってみようか?」


「おいおい、おっさん、何を言ってやがるんだ? そもそもどうやって食わせる気だ? いい大人が得体の知れないものを食うわけねぇだろ」


「それもそうだな」


「いえ、そうでもないわよッピ。あの女王なら、置いておけば食べると思うわッピ」


「妾もそう思うわニャ」


「ええっ!? なんでだ!?」


「クショホション女王は変わり者で、食への探求心が旺盛なのよッピ」


「王国の周囲でミョガガベを倒して食べているところや、その辺に生えている植物をむしり取って食べているところが、頻繁に目撃されているわニャ」


 なんだその野生動物は!?


「それは本当に女王なのだろうか?」


「なぜか女王なのよッピ。まあ、とにかく食べはしてくれると思うわッピ」


「なら、食料を用意してみようか」


「ついでに毒を仕込んでおきましょうニャ!」


「本当に性悪な女ねッピ」


「うるさいニャ! これはただの戦略でしょニャ! いちいちケチを付けないのニャ!」


「ケンカすんなって。それよりも、食べ物は何が良いかな?」


「砦にいろいろあるから、適当に持っていきましょうニャ。確か無味無臭の睡眠薬もあったはずだから、それも使いましょうニャ」


「良いのか?」


「妾の国のものだから、問題ないはずよニャ!」


「もう女王ではないのでは?」


「良いのよニャ! 退職金みたいなものよニャ!!」


 この世界にも退職金があるのか。


 砦から必要なものを持ってきた。



「他には何か良い手はないかな?」


「おっさん、俺様がやるぜ!!」


「どうする気なんだ、聖剣?」


「俺様が突撃して、今度こそ女王をブミらせてやるぜ!!」


「また親衛隊に阻止されてしまうのではないか?」


「クショホション女王は単独で行動していることが多いから、その心配はないわッピ」


「女王なのに、不用心すぎる……」


「その代わり、身体能力が高くて強いのよッピ」


「やれるのか、聖剣?」


「やれるに決まってんだろ!」


「分かった。では、頼むぞ」



「他に何かあるか?」


「申し訳ありません、何も思い浮かびませんピッ」


「私も何も思い付きませんねニュ」


「では、毒餌と聖剣の突撃で、なんとかするということになるのか……」


「そうなるわねッピ」


「こんなので大丈夫なのだろうか?」


「どうにかなるのです!!」


 うーむ、不安だなぁ。

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