第30話 VSケスデニグ女王

 悲報、森の中に潜伏していた俺たち、ケスデニグ王国軍と思われる西洋甲冑姿の連中に、あっさりと発見される。


 しかも、包囲されている。


 慎重に行動していたはずなのに、どうしてこうなった!?


「わたくしの電球が、ケスデニグ王国には『変態の皆様に大好評! まだ見ぬ美女を変態的に発見する変態的能力』の使い手がいると言っているのです!」


「ピセーイ王が使っていたヤツか。そいつのせいで発見されてしまったのか?」


「その通りなのです!」


 ここにも変態が生息しているのか。


 やれやれだな。



「うっ!? こ、これは!?」


「うう、なんですか、今のはキュ~!?」


「今のはいったいなんなのでしょうかピッ?」


 ステーさん、キュウィ、メルウィが何かを感じたようだ。


「どうしたんだ!?」


「今ステータス褒めまくりを受けた時のような感覚がした」


「えっ!? ということは……」


「ごきげんようニャ。変わったステータスウィンドウの持ち主さんたちニャ」


 明らかに場違いな格好をした美女が声をかけてきた。


 鮮やかな赤紫色のロングヘアー。


 真紅のパーティドレスを身に着けている。


 長身でスタイル抜群。


 勝ち気そうな印象を受ける美女だ。


 こいつがケスデニグ女王なのだろう。


「こんなところで何をしているのニャ?」


「ミョガガベ狩りです」


 とりあえず、適当にごまかしてみた。


「それはご苦労様ねニャ」


 おっ!?

 まさかごまかせたのか!?


「でもね、わらわはミョガガベではないわよニャ」


 ごまかせてなかった!


「では、能力を使うわねニャ」


 それはマズい!?


「やらせねぇよ!!!」


 その時、聖剣が女王に突撃した。


 だが、兵士の盾に防がれた。


 その盾はブミブミと鳴き出した。


「その程度では、妾を倒せないわよニャ。では、あなたたちのステータスを見せてもらうわねニャ」


 女王の前に半透明の青いプレートが出現した。


「そんなの無駄キュ!」


 キュキュが自信ありげに、そう言った。


「かわいいお嬢さん、それはどうしてニャ?」


「それは、こうするからキュ!」


 キュキュが両手で自身の耳を塞いだ。


「ふふふっ、そんなの無駄よニャ。妾には『性悪な方に大人気! けなす言葉だけは必ず聞き取らせることができる性格の悪い能力』があるからねニャ」


「なんだそれは!?」


「名前通りの能力よニャ。これのおかげで耳が不自由であっても、妾の言葉を認識できるのよニャ」


 くっ、対策が立ててあったのかよ!?


 こいつメェールさんより優秀じゃないか!


「そんな能力が使えるなんて、本当に性悪な女ねッピ」


「確かに使い手の性格は悪そうだな」


「そこ、うるさいわよニャ!?」


「おい、テメェら、レイトナ様はなぁ、性格が悪いところが素晴らしいんだよダベ!」


「そうだそうだダッペ! そこがたまらないんだよダッペ!!」


 女王の周囲にいる兵士たちがそう言った。


「ええ…… どこが良いんだよ?」


「やれやれダベ! これだから素人はダベ!」


「すべて良いに決まっているダッペ! この良さが分からないなんて、人生の十割を損しているダッペ!!」


 ああ、こいつらが時々出てしまうアレな人なのか。


 こんな感じになるんだな。


「もう、いいわニャ。さっさとけなしてしまいましょうニャ!」


 女王がそう言って、プレートを見始めた。


 ヤバい!?

 これはどうすれば良いんだ!?


 サッパリ思い付かないぞ!?

 打つ手なしなのか!?



「……………………」


 ん?

 なんだ?


 女王が固まっているぞ。


 どうしたんだ?


 その時、突然女王が倒れた。


「レイトナ様、どうしたんですかダベ!?」


「しっかりしてくださいダッペ!?」


 兵士たちは慌てまくっている。


 ええっ!?

 なんだあれは!?

 いったい何が起きたんだ!?


「わたくしの電球が、あれはけなす言葉を思い付きすぎて、脳内で処理し切れなくなって、気絶してしまったと言っているのです!」


「なんだって!? そんな理由だったのか!?」


 いったいどれだけの悪口を思い付いたんだよっ!?


 まあ、知りたくもないけどな!!


「ワタシたちを取り囲んでいた人たちも倒れてしまいましたよキュ~」


「えっ!?」


 周囲を見回すと、本当に倒れていた。


「あいつらはどうしてしまったんだ!?」


「わたくしの電球が、あれは女王が気絶して、ステータスボロクソの効果が切れたせいだと言っているのです!」


「そいつは好都合だな。だが、女王の周囲にいる連中は倒れてないぞ。あれはなぜなんだ?」


「わたくしの電球が、あいつらは特殊な変態たちだからだと言っているのです!」


 ええ……


 なんでそうなるんだよ?


 変態って、すごいんだな……



「貴様ら、よくもレイトナ様をダベ!」


「ぶっ殺してやるダッペ!!」


 なぜか兵士たちにぎぬを着せられた。


 ちょっと待て!?

 なんで俺たちのせいにされなきゃいけないんだよ!?


 あれは女王の自爆だろ!?


「何を言っている? あれは女王が勝手に気絶しただけだ。私たちのせいにするな」


 ステーさんがハッキリと指摘してくれたぞ!


 うんうん、まったくもって、その通りだ!


 さすがステーさんだな!


「うるせぇぞ、この変な肩パッド女ダベ! ファッションセンスの欠片かけらもないなダベ! 少しはレイトナ様を見習えダベ!!」


「まったくダッペ! まあ、たとえ同じ格好をしても、レイトナ様には及ばないけどなダッペ!!」


「なんだと!?」


 あっ!?

 言ってしまったな!?


 ご愁傷様です。


「許さん、死ね!」


「「「ブミィィィイィィィイィィィッ!!!!!」」」


 ステーさんが兵士たちを全員ブミらせた。


 兵士は十人いたのに、瞬殺だった。


 すごすぎる……


 肩パッドの悪口は絶対に言ってはいけないな!!

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