第29話 ケスデニグ女王対策会議

「さて、次はどこに行くんだ?」


「ここから近いのはケスデニグ王国なのです。そこに行くのです!」


「その国にいるのは誰だっけ?」


「『ステータスボロクソ』を使う『レイトナ・ケスデニグ』女王よッピ」


「ああ、ステータスをけなしてくるヤツだったな。俺たちに勝ち目はあるのか? なさそうなのだが……」


「わたくしの電球が、なんとかなるからさっさと行けと言っているのです!」


「だからさぁ、そのなんとかって、なんだよ!?」


「当然、そこは不明なのです!」


「やはり分からないのかよっ!?」


「では、また、なぜなんとかなるのか考えてみましょうキュ~」


「ああ、そうだな。そうしようか」



「まずは復習だ。ケスデニグ女王の能力は、相手のステータスを盗み見て、けなす。それに傷付くと、あらゆる命令に従うようになってしまう。なぜか時々興奮したり、崇拝したりする人も出るというものだったな」


「ええ、その通りよッピ」


「これも怖い能力キュ!」


「ああ、まったくだな。しかも、俺たちのステータスは、けなすところだらけだからなぁ」


「ええ、残念ながら、その通りねッピ。ワタクシたちですらそう思うのだから、あのけなすのが得意な性格の悪い女が見たら、どれだけけなされるのでしょうねッピ。想像も付かないわッピ」


「ステータスの規格が違うから盗み見れないとか、日本語が読めなくてけなせないという事態にはならないかな?」


「過度な期待はしない方が良いと思うわッピ」


「そうか。なら、真正面から攻め込まない方が良さそうだな」


「ええ、そうでしょうねッピ」


「それなら、近付かずに倒せば良いということになるよな」


「そうねッピ。問題はその手段なんだけどねッピ」



「どうやら俺様の出番のようだな!」


「やってくれるのか、聖剣!?」


「ああ、俺様が女王に突撃してブミらせてやるぜ!!!」


「ケスデニグ女王にも親衛隊がいるわッピ。しかも、相当な手練てだれよッピ。聖剣だけでは厳しいと思うわッピ」


「何言ってやがる! 俺様なら問題ねぇに決まってんだろ!?」


「ワタクシの親衛隊に攻撃を防がれたでしょッピ! もう忘れたのッピ!?」


「うるせぇ! 今度はキッチリブミらせてみせるぜ!!」


 聖剣はやれると言っているが、やはり単独ではキツいだろうな。


 他の手も用意した方が良いだろう。


「聖剣を信用してないわけではないが、念のために他の手も考えてみようか」


「なんだ!? おっさんまで俺様を疑っているのか!?」


「いやいや、そんなことはないって! 念のためだ、念のため!!」


「俺様がやれると言ってんのに! 面白くねぇな!」


「まあまあ、慎重に物事を進めたいだけだからな。機嫌を直せよ」


 なんとか聖剣をなだめた。



「良いことを思い付いたキュ!」


「どんなことだ、キュキュ?」


「美味しいものを用意すれば良いキュ!」


「えっ? なんでだ?」


「それを食べている時は、しゃべれなくなるキュ! その隙に倒してしまうキュ!」


「いや、そう簡単にはいかないだろうな……」


 口が塞がるほど頬張るとは思えないし、そもそも食べない可能性もあるしな。


「そうなのキュ? なら、耳を塞げば良いキュ! 悪口が聞こえなくなるキュ!」


「えっ? それはどうなんだ? 誰か試したのだろうか?」


「ワタクシの国では、試していないわねッピ。そんなのどうせ対策を立てていると思ったからねッピ」


「他の国の連中はどうなんだろう?」


「報告は受けてないわねッピ」


「というか、メェールさんはどうしていたんだよ? ステータス褒めまくりにも同じ弱点があるじゃないか? どんな対策を立てていたんだよ?」


「……そ、それは、その、特に何もしていなかったわねッピ! 誰もそんなことしなかったからねッピ! 盲点だったわッピ!」


「ええっ!? それはちょっと間抜けすぎるのでは!?」


「う、うるさいわねッピ!? 問題は起きなかったのだから、それで良いのよッピ!!」


「まあ、確かに今更だからな。それよりも、ケスデニグ女王の方だ。もしかして、そっちも何の対策も立ててないのでは?」


「ええ、その可能性があるわねッピ」


「まあ、もちろん、立てている可能性もあるけどな」


「……そうねッピ」


「では、女王に接近されてしまったら、やってみようか」


「そのくらいがちょうど良いかもねッピ」


「分かったキュ!」



「他に何かないかな?」


「思い付きませんねキュ~」


「私も思い付きませんピッ」


「ということは、現状では聖剣にがんばってもらう。その間、俺たちはどこかに隠れている。女王に接近されたら耳を塞いで、戦うか逃げるくらいしかないのかな?」


「後は夜襲にした方が良いでしょうねッピ」


「なるほど、確かにそうだな。聖剣、やれそうか?」


「問題ねぇぜ! 俺様に任せておきな!!」


「では、夜襲をかけてもらおう。これで大丈夫なのかな?」


「チカがなんとかなると言っているのだ。信じよう」


「分かったよ、ステーさん。では、ケスデニグ王国に行こうか」


「ちょっと待つキュ!」


「どうかしたのか、キュキュ?」


「いろいろ考えたら、お腹がすいたキュ! 食事にするキュ!!」


「……分かったよ」


 本当に緊張感がないなぁ。


 俺たちは食事を取り、ケスデニグ王国に向かった。



 休憩を挟みつつ、三日間飛び、ケスデニグ王国の女王がいる砦の近くにある森の中にやって来た。


 では、ここで夜まで待機するか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る