第28話 面倒くさい女王
女王が俺に抱き着いたまま離れてくれない。
「あの、そろそろ離れてもらえないかな?」
「離れたら逃げる気ねッピ? そうはさせないわッピ!」
こいつ面倒くさいぞ!?
「ヒモノ、やはりそいつは始末すべきなのではないか?」
「ヒモノさん、その方が後腐れがないと、わたくしの電球も言っているのです!」
ステーさんとチカさんが恐ろしいことを言っているぞ!?
「始末はやめてッピ!?」
「なら、お前は何ができるんだ? 有益なら考えてやらんでもない」
「くだらないものなら、始末なのです!」
「そ、そんなことを言われても能力はなくなってしまったし、他にできることはあまりないかもッピ」
「そんな有様で、いったい何を手伝う気だったんだよっ!?」
「うるさいッピ! あっ、そうだわッピ! あなた独身の恋人なしなんでしょッピ? ワタクシが恋人になってあげるわッピ!」
「なんでそうなるんだ!?」
「どうやら始末した方が良さそうだな」
「これは始末で問題ないのです」
「なんでよッピ!? 良いアイディアでしょッピ!? 女王であるワタクシと付き合えるって、光栄なことでしょッピ!?」
「面倒なことになりそうなので、お断りしておこう」
「ワタクシは面倒な女じゃないわよッピ!?」
いや、立場も性格も、明らかに面倒だろ!?
それを言うと、さらに面倒なことになるだろうから言わないけどな!
「それよりも、女王ならいろいろと情報を持っているのではないか? それを提供してくれないか?」
「なんか納得できないけど、良いわよッピ! 何が聞きたいのッピ?」
「この場所から出る方法を知っているか?」
「どういうことッピ?」
女王に事情を説明した。
「本当にそんな人がいたのねッピ」
「何か知っているのか!?」
「あなたたちのように、この場所にやって来る人たちがいるという記録を見た覚えはあるわッピ。ただ、ワタクシの国では、ここ何十年かは確認されていないけどねッピ」
「その人たちはどうなったんだ!?」
「ここに永住するか、旅に出てそのまま行方不明になるかの、どちらかだった覚えがあるわッピ」
ピセーイ王国で得た情報と、たいして変わらんな。
「それとかなり古くて、真偽がハッキリしないんだけど、ワタクシたちの祖先もあなたたちのように、ここにやって来たという史料もあるのよッピ」
「へぇ、そうなのか。結局、帰る方法は分からないということか?」
「ええ、そうよッピ」
「やはり始末か?」
「始末するのです!」
「やめてッピ!?」
ステーさんとチカさんの評価が厳しいぞ!?
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて。他に何かないのか?」
「この世界には未開の領域があるわッピ。そこなら、何かあるかもしれないわねッピ。それに、そこには変なウワサもあるしねッピ」
「変なウワサ? どんなものなんだ?」
「そこを踏破すると願いが叶うというウワサよッピ」
「ウサンクサいなぁ。ウワサの出どころはどこなんだよ?」
「なんでも立て看板があって、そこに書いてあったらしいわッピ」
「なんだそれは!? 誰がそんなものを立てたんだよ!?」
「そんなのワタクシにも分からないわよッピ!」
意味の分からんことをするヤツがいるんだな。
「まあ、それはどうでもいいか。では、その未開の領域に行ってみようか?」
「そこにたどり着くには、強力なミョガガベが多数いる場所を通らなければいけないのよッピ。危険すぎるわッピ」
「どんなのがいるんだ!?」
「筋骨隆々の人間の体に、人間以外の動物の頭が付いた怪物とか、二階建ての家くらい大きな四足歩行の獣などがいるらしいわッピ」
「やはり強いのか?」
「相当な強さだと聞いているわッピ。レベルは百億以上あるそうよッピ」
「百億!?」
確かキュキュが七億くらいらしいから、かなり強いようだな。
「そんな場所に本当に行くのッピ?」
「そこ以外に帰れる可能性のある場所はないのか?」
「ワタクシが知る限りではないわッピ」
「他の国なら、何か分かるのか?」
「そこは分からないわッピ」
「そうなのか。さて、どうするべきか?」
「わたくしの電球が、他の国の王を倒した方が良いと言っているのです!」
「未開の領域に行くよりも、そっちの方が良いのか?」
「その通りなのです!」
「なら、そうするか」
どうすれば良いのか分からん時は、直感を信じよう。
「さあ、これでワタクシも役に立ったわねッピ! 連れて行ってくれるのよねッピ!」
「ええっ!? 今の話を聞いても付いて来る気なのか!? 危険だぞ!?」
「能力を失ったワタクシは、どこに行っても危険に決まっているわッピ! それなら良い人の近くにいるのが最善よッピ!」
ステータスを信じすぎなのでは?
ここの人たちの価値観は、そういうものなのかな?
「そういうことなら付いてくれば良いよ。ただし、自己責任だぞ」
「分かっているわよッピ」
「一緒に行くなら、自己紹介が必要ですねキュ~」
「そうだな」
俺たちは自己紹介をした。
「ワタクシのことは、メェールと呼んでくれて良いわッピ。もう女王とは言えない状態だからねッピ」
「分かったよ。ところで、ステータスウィンドウの方は、なんと呼べば良いんだ?」
「あなた、名前はあるのッピ?」
「私に名前はありませんピッ。お好きなように呼んでいただいて構いませんピッ」
「そう、なら、あなたを『メルウィ』と名付けましょうッピ」
「かしこまりましたピッ」
「メルウィは何かできることはあるのか?」
「戦闘と料理なら多少はできると思いますピッ」
「そいつはありがたいな」
持ち主の方はできなさそうなのに、なぜできるのだろうか?
よく分からんな。
まあ、いいか。
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