第27話 悪の女王?

「さて、これからどうするか? って、まずは気絶している人たちを救助しないとな。手分けして砦の中に入れようか」


「かしこまりましたダシュ」


 気絶している親衛隊の面々を砦の中に寝かせた。



「人命救助はこんなもので良いだろう」


 さて、これからどうしようかな?


「ちょっと待ちなさいッピ!」


 女王が話しかけてきた。


「何か用か?」


「まだワタクシが救助されてないでしょッピ! 救助しなさいよッピ!!」


「救助? 何をしろと言うんだ?」


「ワタクシの能力を戻しなさいよッピ!」


「何を言っているんだよ。俺たちはそれを止めに来たんだぞ。そんなことするわけないだろ。それに戻し方も分からないしな」


「なら、せめてワタクシを保護しなさいッピ!」


「おいおい、何を言っているんだよ。君は元凶だろ」


「その通りだ。お前は本来、首を切り落とされるべき人間だ」


 ステーさんが断言した。


 容赦ないなぁ。


「うるさいッピ! あなたたちのせいで能力が使えなくなったのよッピ! 責任を取りなさいよッピ!!」


 ええ……

 なんなの、こいつは……


 敵に何を言っているんだ?


「ならば、お前も行った悪事の責任を取るべきだな」


 ステーさんが容赦なく切り捨てたぞ。


「悪事って、何よッピ!? ワタクシが何をやったというのよッピ!?」


「ホプレイズ王国の民を洗脳していたんだろ?」


「だから、何よッピ!? それのどこが悪いのよッピ!?」


「国民を、こき使っていたのではないのか?」


「そんなことしてないわよッピ!」


「えっ? なら、何をやっていたんだ?」


「民を洗脳して、その人に合った職業を調べて、それに就いてもらっていただけよッピ! キチンと国を運営していたわよッピ!」


「国民の自由意思を奪っていたのだろう? それは悪事だろ」


「でも、国内は平和なのよッピ! それなりに発展していて、裕福になっているのよッピ!」


「ええっ!?」


「ワタクシは王として悪なのッピ!?」


 ええ……

 どうなんだろうか?


「そういえば、世界征服がしたくて戦争していたのではないのか? そんなものに国民を付き合わせるのは悪じゃないか?」


「違うわよッピ! 他の王がクズで攻めてくるから、仕方なくよッピ! 自衛のために周囲の人間を全員洗脳しようとしただけよッピ!」


 ええ……


 それは悪じゃないか?


 いや、でも、自衛のためなら仕方ないのか?


 これは悪なのか?


 悪だよなぁ?


 うーん、どうなんだ?


 よく分からないな!!!


 どうしよう?


 あっ、そうだ!


「なら、ホプレイズ王国の民の様子を見せてみろよ。その後で君の処遇を考えるよ」


「分かったわよッピ。町へ行きましょうッピ」


「ああ、そうしようか。そういえば、君は飛べるのか?」


「飛べないわッピ。普段は隊員が出してくれる乗り物で移動しているけど、今は気絶しているわねッピ」


「なら、あーしの出番のようッスね! 立派な鳥類になれるよう鍛えてあげるッス!!」


「な、何を言っているのッピ!?」


「さあ、気合と根性と勇気と熱血を込めて、羽ばたくッスよ!!」


「訳が分からないわッピ!?」


「もちろん、そちらのステータスウィンドウさんもッスよ!」


「私もですかピッ!?」


 女王のステータスウィンドウも着ぐるみを着せられた。


「では、開始ッス!!」


「な、なんでこうなるのよぉぉッピ!!!」


 女王と女王のステータスウィンドウは、飛ぶ練習をさせられた。


 その間、俺たちは砦の中で休ませてもらった。


 風呂もあって、なかなか設備が充実しているんだな。


 遠慮なく利用させてもらった。



「これでふたりとも立派な鳥類ッスね!!」


 女王たちは飛べるようになった。


 そして、俺たちはホプレイズ王国の王都に向かった。



 王都に着いた。


 立派な城壁に囲まれ、西洋建築風の住宅が並んでいる。


 都市の中央に白亜の城もある。


 美しい都市だな。


 ただ、あちこちに人が倒れているけどな。


 あの人たちも女王の洗脳が解けて、気絶したみたいだ。


 町の人たちは、みんな血色が良いし、キレイな服を着ている。


 どうやら健康的に暮らしているようだ。


 これは、それなりに豊かな国と判断しても良さそうだな。


 女王の言った通り、国がキチンと機能しているのだろう。


「どうワタクシの王国はッピ?」


「まともな国のようには見えるな」


「そうでしょうッピ! ワタクシは間違ってはいないのよッピ!」


 でも、これは洗脳した結果なんだよな。


 これをどう判断すれば良いのだろうか?


 うーん、何が正しいのかよく分からんな。


 ああ、そうか。

 これは部外者の俺たちが決める必要のないことだな。


 後は現地の人たちの判断に任せよう。


「もう女王は釈放で良いんじゃないか? 能力は使えなくなったわけだしな」


「わたくしの電球が、それで良いと言っているのです!」


「ヒモノとチカがそう言うのなら、私もそれで良い」


「まあ、良いんじゃねぇの?」


 みんなもそれで良いらしい。


「では、女王は釈放で決定な。ほら、さっさとどこかに行けよ」


「ちょっと、どういうことよッピ! ワタクシを保護してくれるんじゃないのッピ!!」


「なんで俺たちが保護しなければいけないんだよ?」


「ワタクシは特殊能力があるから、生きていけたのよッピ! それがなくなったのよッピ! どうやって生きていけば良いのよッピ!?」


「働き口を探して、生きていけよ」


「この国で働くためには、ステータスを見せなければいけないのよッピ!」


「そんなの見せれば良い…… って、ものでもないのか!? 今のステータスは、どうなっているんだ!?」


「お客様のレベルは『ヨワヨワ弱弱よわよわ弱弱ヨワヨワ、うげっ、私スーパー弱すぎ弱スギっ!?』ですピッ」


「こんなステータスでは、仕事なんて見つからないわよッピ!」


「なら、他の国に行けよ。ピセーイ王国の農村部なら、何かあるだろう」


「嫌よッピ! 知らない人がいるところに行きたくないわッピ!」


「ゼイタク抜かすな!?」


 そういえば、ピセーイ王国の兵士が、王は人を信用していないと言っていたっけ。


 本当だったな。


「なら、あなたたちの手伝いをするわッピ!」


「なぜそうなる? 俺たちもたいして知らない人だろうに」


「あなたのステータスを見たから、知らない人ではないわッピ」


「ええっ!? 何その判断基準!? あんなのを見て、俺の何を知った気でいるんだよ!?」


「良い人と書いてあるだけ、他の人よりマシよッピ! とにかくワタクシはあなたたちに付いて行くッピ! 能力を使えないようにした責任を取りなさいッピ!」


 女王が俺に抱き着いてきた。


「おい、ちょっと!? 離せって!?」


「嫌よッピ! 絶対に付いて行くわッピ!!」


 なんでそんな結論になるんだよっ!?

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