第23話 脱臭剤

 さて、まずは周囲で倒れている西洋甲冑の人たちを介抱しようか。


 と言いたいところだが、倒れている人の数が多いな。


 俺たちだけでやるのは、時間がかかりそうだ。


 とりでの中に衛生兵はいないのかな?


 探してみよう。



 砦の中を探してみた。


 そこでもなぜか人が大勢倒れていた。


 医務室のような場所もあったが、そこでもだった。


 なんで中の人たちまで倒れているんだ?


 爆発に驚いて、転んで頭を打って、気絶したのか?


 そんなまさかなぁ。


「わたくしの電球が、これはジャッダァ王の能力が解けたせいだと言っているのです」


「ああ、そういえば、洗脳みたいなことができるんだったな。なら、倒れている人たちは、みんな能力を奪われていたのか?」


「その通りなのです」


 恐ろしいヤツだな。



 手伝ってくれそうな人はいないようだ。


 仕方ない、俺たちだけでやるか。


 外で倒れている西洋甲冑の人たちを砦の中に運び、寝かせた。


 甲冑が多少焦げている人はいたが、全員気絶しているだけで生きてはいた。


 かなり大きな爆発だと思ったのに、たいして被害が出ていないんだな。


 これは特殊能力の効果なのかな?


 よく分からんな。


 まあ、どうでもいいか。


 次はエクスレトを拾いに行こう。



 クレーターの中央にやって来た。


 このエクスレトも直径二〇センチくらいある大物だ。


 では、今回も誰が倒したか分からないから、割るとしようか。


 エクスレトを地面に叩き付けた。


 すると、また真っ二つに割れた。


 そして、キュキュと聖剣が、エクスレトを取り込んだ。


 また俺の中に何かが入って来たな。


 これでまたレベルが上がったのだろうか?


 ステーさんに聞いてみた。


「ヒモノのレベルは『よわヨワ弱ヨワよわ、あれ!? 私ちょっと強いような気がするような感じじゃない!?』になったようだ」


「とうとう強いという単語が出たな。何か変わったのだろうか?」


「試してみたらどうだ?」


「そうだな」


 俺は体を動かしてみた。


 違いはよく分からんな。


 まあ、いいか。



「むっ、ヒモノ、今回も新たな特殊能力が身に付いているようだ」


「えっ!? 今回もなのか!? どんなのものなんだ!?」


 まさかジャッダァ王の近くにいたアレが出て来る能力なのだろうか!?


「『ステータス脱臭剤を出す能力』だ」


「脱臭剤!? それはジャッダァ王の近くにいたアレなのか!?」


「そこは分からん。とりあえず、出してみたらどうだ? 出し方は今までと同じだ」


「ああ、そうだな」


「ちなみに、出せるのは一体だけだからな」


「分かったよ」


 俺はステータス脱臭剤を出してみた。


 ジャッダァ王の近くにいた化け物が出て来た。


 やはりこいつだったか。


 予想通りだな。



「どうも、初めまして、ステータス脱臭剤ですダシュ」


 ステータス脱臭剤が挨拶をしてきた。


「初めまして、俺は紐野ひもの ひとし。君を出した者だ。よろしくな」


「『コースィ』と申しますダシュ。こちらこそよろしくお願いしますダシュ」


 あれ!?

 今、名乗ったよな!?


「名前があるのか?」


「ありますよダシュ! 当然じゃないですかダシュ!!」


 えっ!?

 あるのか!?


 またいつものようにないと思っていたぞ!?


「それは誰が名付けたんだ?」


「自分で付けましたダシュ! 良い名前でしょうダシュ?」


「あ、ああ、そうだな。なぜその名前に決めたんだ?」


「直感ですねダシュ! これだと思いましたダシュ!!」


「そうなのか……」


 コースィ……


 香水……


 脱臭剤とは真逆な感じがする名前だと思うのだがな。



「コースィは何ができるんだ? 特殊能力名通り脱臭ができるのか?」


「いいえ、違いますダシュ」


「脱臭できないのか!?」


「はい、それはまったくできませんダシュ!」


 ステータス脱臭剤が胸を張って、そう言った。


「そ、そうなのか……」


 なぜそれで脱臭剤を名乗るのだろうか?


 まあ、どうでもいいか。


「なら、何ができるんだ?」


「野菜や果物の皮をむくのが得意ですダシュ!」


「料理が得意なのか?」


「いいえ、皮をむくのが得意なだけですダシュ! 他はまったくできませんダシュ!!」


 えええええっ!?


「なんでそれだけなんだ!?」


「不明ですダシュ! なぜかそういうものなのですダシュ!!」


「そうか。他には何かないのか?」


「特にありませんダシュ!」


「そうなのか……」


 なんとも微妙だな!?


 他のことも練習してもらった方が良さそうだな。



「わたしもステータス脱臭剤を出せるようになったキュ!」


「どうも、皆さま、初めまして『コーリョー』と申しますッシュ。野菜や果物の皮をむくのが得意ですッシュ。よろしくお願いしますッシュ」


 キュキュのステータス脱臭剤が挨拶をしてきた。


 姿は俺の出した者と同じだが、なぜか語尾が違うんだな。


 通訳能力が気を利かせてくれたのかな?


 俺たちも自己紹介をした。



「コーリョーの名前はキュキュが付けたのか?」


「違うキュ。コーリョーが自分で付けたらしいキュ」


 コーリョーもだったのか。


「そうなのか。俺の方もそうだったんだよ」


「せっかく、わたしが名付けようと思っていたのに残念キュ」


「なんという名前にしようと思ったんだ?」


「『ダッキュー』にしようと思っていたキュ」


「そうなのか」


 脱臼?

 なんとも痛そうな感じの名前だな。


 コーリョーで良かった気がするぞ。

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