第17話 王爆発

 これでみんなの修行の成果は確認できたな。


 では、その情報を踏まえて、どのステータス令嬢を出そうか?


 うーむ、思い付かんな。


 まあ、いいか。


 農村部に戻って、ゆっくり考えることにしよう。


 俺たちは筋肉の塊Tシャツの職員と、ナーン・コォツグーシ様に挨拶をして、修行場を出た。



 な、なんだこれは!?


 修行場を出たら、鈍い銀色をした西洋甲冑の集団に囲まれていた。


 その中に、ひと際目立つ金色の鎧を身に着けた、偉そうな男がいる。


 俺たちを見下しているような目をしている気がするぞ。


 性格の悪そうなヤツだな。


 あいつが指揮官なのか?


 ん?

 金色の鎧が手のひらを俺たちに向けたぞ。


 何かするつもりなのか?


 突然手のひらから、まばゆい光が放たれた。


 うっ!?

 なんだ今のは!?


「これでお前らも、余の糧となったでヤンス」


 金色の鎧を着た男がそう言った。


 糧?

 どういうことなんだ?


「何を言っている? 貴様らは何者だ?」


 ステーさんが尋ねた。


「余を知らんのかでヤンス? なんと愚かなでヤンス。仕方ない教えてやるでヤンス。余はピセーイ王国の王『フコク・ピセーイ』であるでヤンス!」


 王だったのかよっ!?


 そんな方が何をしに来たんだ!?


「王がここで何をしている? 大軍を率いて修行に来たのか?」


 ちょうど良くステーさんが質問してくれた。


 しゃべる手間が省けたな。


「余の特殊能力『変態の皆様に大好評! まだ見ぬ美女を変態的に発見する変態的能力』に反応があったでヤンス。だから、来てみたでヤンス」


 なんじゃそりゃぁっ!?


 名前に『変態』という単語がありすぎだろっ!?


 なんでそんな名前になったんだよ!?


 というか、あんた王なんだろ!?


 そんなの使うなよっ!?


「ほう、そんな能力を使うお前は変態なのか?」


 ステーさん!?

 ハッキリ言いすぎだろ!?


 周りの連中が笑いをこらえているじゃないか!?


 部下からあんな態度を取られるなんて、あいつ人望なさそうだな。


 やはりダメ王みたいだ。


「なっ、ち、違うしでヤンス! 変態じゃないでヤンス! 人聞きの悪いことを言うなでヤンス!!」


 動揺すんなよ!?


「余はまだ見ぬ美女をチェックするのが趣味なだけでヤンス!」


 うわぁ、変態的だなぁ。


「それを変態というのではないか?」


 ステーさんにもハッキリと指摘されたぞ。


「言わないでヤンス! 人の趣味を否定するなんて、ひどいヤツでヤンス!! というか、王に対して失礼でヤンス! これは不敬罪で死刑でヤンス!!」


 横暴だな!?


「おっと、死刑にするのは、そこの男だけでヤンス! 女は連れて行くでヤンス!!」


「なんだそりゃぁっ!? ちょっと待てよ!? 俺は何も言っていないぞ!?」


「うるさいでヤンス! そもそも美女と行動をともにしている段階で、腹立たしいから死刑でヤンス!!」


「横暴すぎるだろ!? お前、本当に王なのかよっ!?」


「余は王に決まっているでヤンス! 今の発言は不敬罪でヤンス! ぶっ殺してやるでヤンス!!」


「ひどすぎ!? ちょっと落ち着けよ!? 冷静に話し合おう!」


「やかましいでヤンス! お前は死刑でヤンス! お前らからコピーした能力で、殺してやるでヤンス!!」


「コピー!? どういうことだ!?」


「先程放った光、あれこそ余の最強の特殊能力『ステータスコピー』でヤンス! この能力は光を浴びた者の特殊能力を、余も使えるようになるというものでヤンス」


 あれがウワサの特殊能力だったのか。


「さあ、自らの能力で死ぬでヤンス! ……そういえば、何をコピーしたのか確認していなかったでヤンス」


 ええ……


 そこは分からないのかよ。


「今確認するから、少々待つでヤンス。ステータスオープンでヤンス」


 王がステータスウィンドウを開こうとした。


 すると、王の前に化け物が現れた。


 高さ一メートル、幅と奥行き六〇センチくらいの白いコピー機に、人間の手足が生えている。


 身長は二メートルくらい。


 手足は筋骨隆々で、良い色に日焼けしている。


 無駄毛は生えていない。


 白いスニーカーを履いている。


 他にもいろいろと機器が付いているように見える、どうやら複合機のようだ。


「どうも~、毎度おなじみ、ステータスウィンドウでございますコピッ! お客様、ご注文はなんでしょうコピッ?」


 コピー機のようなものがそう言った。


 あれが王のステータスウィンドウ!?


 変わった姿をしているんだな。


 やはり王だから、特殊なのか?


「な、なんだお前はでヤンス!?」


 王が驚いているようだ。


 周囲の連中も驚いているようだ。


 なんでだ?

 ちょっと聞いてみようか。


「何を言っているでヤンス!? どう見ても、このステータスウィンドウはおかしいだろでヤンス!!」


「そう言われても、王のステータスウィンドウなんて見たことないから、なんとも言えないな」


「王だからって、ステータスウィンドウまで特殊だったりしないでヤンス! 普通の半透明の青いプレートでヤンス!」


「そうだったのか。なら、そいつはなんなんだ?」


「知るわけないだろでヤンス!!」


 いったいどういうことなんだ?



「あれはおそらくヒモノさんと、キュキュさんのステータスをコピーしたせいなのです」


「な、なんだって!? どういうことなんだ、チカさん!?」


「ヒモノさんたちと、彼らのステータスは表記方法や項目の数などの規格が違うのです。それを強引にコピーしようとしたため、おかしくなってしまったのです」


「えええええっ!?」


「な、なんだとでヤンス!? これはお前たちのせいなのかでヤンス!? 許せないでヤンス!! 死刑でヤンス!!」


「いやいや、それはおかしいだろ!? そもそも王がステータスコピーをしなければ、こうはならなかったんだぞ! 自業自得だ!」


「うるさい、さっさと元に戻すでヤンス!!」


「戻し方なんて知らんよ!?」


「四の五の言うなでヤンス! 戻せでヤンス!!」


「だから、戻し方なんて知らないっての!? チカさんは何か分かるか?」


「まったく分からないのです!」


「そうか。なら、俺たちにはどうしようもないな」


「もう、お前らは全員死刑でヤンス!!!」


「八つ当たりはやめろよ!?」



「警告しますコピッ! 特殊能力が発動しますコピッ!!」


 王のステータスウィンドウが突然そう言った。


「特殊能力でヤンス!? どんな能力でヤンス!?」


「『超必殺究極奥義スーパーアルティメット爆発オチすぺしゃる』という能力ですコピッ」


「なんだそれはでヤンス!? どんな効果でヤンス!?」


「これが発動すると、能力を身に付けている者が、なんか良い感じに爆発しますコピッ」


「意味が分からないでヤンス!?」


 まったくだな!


 良い感じの爆発って、なんなんだよっ!?


「発動三秒前ですコピッ」


「能力を解除しろでヤンス!!」


「不可能ですコピッ」


「な、なんだとでヤンス!?」


「みんな逃げるぞ!!」


 俺たちは逃げ出した。


 その後、大爆発が起こった。

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