第16話 みんなの成果

 うーん、どのステータス令嬢を出せば良いのか分からない……


 そういえば、ステーさんたちの修行の成果を聞いてなかったな。


 判断材料を増やすために、まずはそれを聞いてみよう。


「ステーさんたちの修行は何をやったんだ?」


「私は重くなる妙な服を着せられて、ランニングをしたり、器具を使ってトレーニングをしたり、といったところだな」


「わたくしも同じようなものなのです」


「わたしもキュ」


「ワタシもですキュ~」


「そうなのか。俺も同じだよ。みんな似たようなことをやっていたんだな」


 みんなあの肉襦袢にくじゅばんを着せられたのか。



「成果は出たのか?」


「私は身体能力が向上したようだ」


「そいつは頼もしいな」


 ということは、棘付き肩パッドの棘と怒髪天を衝くと、棘付き肩バッドも豚もおだてりゃ木に登るが発動した時は、もっとすごくなるのか。


 ステーさんの棘付き肩パッドには触れないようにしよう。


「それから私の棘付き肩パッドが進化した」


「えっ!? 進化!? どうなったんだ!?」


「見れば分かるだろ?」


 ええっ!?

 そんなことを言われてもなぁ……


 ステーさんの棘付き肩パッドって、どんな形だったっけ?


 確か金属鎧の肩当てみたいなものに、棘が三本付いていたような覚えがあるぞ。


 そこはあまり変わっていないな。


 ん?

 そういえば、棘の長さが変わったような……


「棘が長くなったのか?」


「その通りだ」


 当たった!?


「棘が一センチ伸びて、よりシャープになった。前より良くなっただろ?」


「あ、ああ、うん、良くなったよ……」


「そうだろう、そうだろう!!」


 ステーさんはとてもうれしそうにしている。


「他には何かあるのか?」


「後は妙な特殊能力が身に付いた」


「新しい能力か。どんなものなんだ?」


「『肩パッドの棘発射』という能力で、使用すると肩パッドの棘が相手に向かって飛んで行き、命中と同時に爆発するという、棘付き肩パッドを侮辱するような能力だ」


「そ、そうなのか」


 結構強力な能力なんじゃないか!?


 でも、ステーさんは使ってくれなさそうだな。


「私のは以上だな」


「ああ、分かったよ」


 いろいろと強化されているなぁ。



「チカさんはどうだった?」


「これなのです!」


 チカさんが直径二〇センチくらいある電球を掲げて、そう言った。


「それはなんなんだ?」


「わたくしの持っていた水晶玉が、これに変化したのです!」


「えっ!? あの水晶玉がこれに!?」


 なんでランニングや器具を使っての筋トレをしたら、こうなるんだ!?


 訳が分からなさすぎるぞ!?


「これは何ができるんだ!?」


「この通り、光るのです!!」


 チカさんがそう言うと、電球が光り出した。


 かなり明るいな。


「頑丈なので、叩いたり、投げたりもできるのです!」


「武器にもなるのか」


「さらに投げた後に戻って来いと思うだけで、すぐに戻って来るのです!」


「そいつは便利だな」


「そうなのです! わたくしの『第二電球』は素晴らしいのです!!」


 第二電球?


 第一は着ぐるみなのかな?


「おまけに、身体能力と直感力が強化されている気がするのです!」


 それがおまけ!?

 そっちの方が重要じゃないか!?


「わたくしはこのくらいなのです」


「分かったよ」


 チカさんも強くなっているようだな。



「キュキュはどうなんだ?」


「これを見るキュ!」


 キュキュが両手に持っているものを掲げた。


「それは着ぐるみの頭!? なぜふたつもあるんだ!?」


「修行してたら増えたキュ!」


「なんで増えるんだ!?」


「そんなの知らないキュ!」


「訳が分からないな!」


「まったくだキュ」


「他は何かあるのか?」


「強くなった気がするキュ!」


「そうなのか」


 キュキュも身体能力が上がったのだろう。



「キュウィはどうだ?」


「これが出るようになりましたキュ~」


 キュウィが、水色のウサギの着ぐるみの頭をふたつ出した。


「これはキュキュの頭と同じものなのか?」


「いいえ、これには収納能力はありませんキュ~。ただの武器ですキュ~」


「そうなのか」


 なんでわざわざ頭の形をしているんだ!?


 武器なら、もっと他にもあるだろ!?


「これを五つ出すことができますキュ~」


「頭を五つも!?」


 なんでそんなに出るんだよっ!?


「後は身体能力も上がっている気がしますキュ~」


「分かったよ」


 キュウィも順調に強くなっているようだな。



「あれ? そういえば、聖剣はどこにいるんだ?」


「剣の方はこちらでございますマセ」


 筋肉の塊Tシャツの職員が聖剣を持って来た。


「どうぞマセ」


「ああ、ありがとう」


 ステーさんが聖剣を受け取った。


 では、報告をしてもらおうか。


「おい、聖剣、修行の成果はどうだったんだ?」


「………………………………」


「どうしたんだ、聖剣?」


「……おっさん、俺様はもうダメだ……」


「いきなり何を言っているんだ!?」


「俺様はこの三か月間、筋肉に振られ続けてしまった」


 聖剣を持って行った青年に、ずっと素振りをされていたのかな?


「汚れた俺様は、もう生きていけない……」


「おいおい、元気出せよ。生きていれば、嫌なことのひとつくらいあって当然だろ?」


 というか、元々生きていないのでは?


「俺様は、もう聖剣ではない……」


 なんでそうなるんだ!?


 そもそも聖剣って、いったいなんなんだよっ!?


「おっさん、能力を解除してくれ。俺様を消してくれ……」


 メンドクセェ聖剣だなぁ。


 これはどうすれば良いんだ!?


 聖剣の励まし方なんて、よく分からないぞ!?


「ヒモノ、聖剣が長くなっているようだ」


 突然ステーさんがそう言った。


「長くなった? どういうことだ?」


 というか、ステーさんは聖剣を無視するのか!?


「言葉通りの意味だ。おおよそ十センチくらい長くなっている」


「それが修行の成果なのか?」


「おそらくそうなのだろう。それと特殊能力が身に付いているようだ」


「えっ!? なぜ分かるんだ!?」


「ヒモノのステータスに記載されているからだ」


「ああ、なるほど、そういうことなのか。それでどんな能力なんだ?」


「『分身の術』という特殊能力だ」


 分身の術?

 術なのか、特殊能力なのか、ハッキリしないなぁ。


「これを使用すると、聖剣がもう一本出て来るようだ」


 なんかおまけみたいだな。


「叩いた時の能力は同じだが、しゃべることはできないようだ」


「そうなのか。そいつは役に立ちそうだな」


「ああ、これなら私とチカで聖剣を使える」


「だが、肝心の聖剣がアレではなぁ」


「聖剣、いつまでねている気だ? さっさと元気を出せ!」


「はい、ステーの姉さん! よし、おっさん、元気出していくぜ!!」


「ええ……」


 ステーさんに叱られたら、あっさり元気になるのか!?


 聖剣、お前はそれで良いのかよっ!?

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