第13話 狩りと修行前のグダグダ

 この森には、ルァナワーヴァイゼによく似たヤツがたくさんいた。


 青の『ブルハワダンゴヴァイゼ』

 金の『キンパクダンゴヴァイゼ』


 オレンジの『カンキツダンゴヴァイゼ』

 紫の『モウドクダンゴヴァイゼ』


 黒の『ゴマダンゴヴァイゼ』

 虹色の『ハデダンゴヴァイゼ』


 白、緑、ピンク以外にこれだけいた。


 そのせいで、ルァナワーヴァイゼ狩りが全然進まなかった。


 最初に四体見つけることができたのは、ビギナーズラックのようなものだったのだろう。


 その後、ルァナワーヴァイゼをまったく見つけることができないまま、あたりが暗くなってきた。


 夜の森は危険そうなので、この日はピセーイの農村部に帰ることにした。



 帰還後に、買取所でルァナワーヴァイゼ以外を売却した。


 どれも一体、一万フピだった。


 九万フピ手に入れた。


 こんなもの何に使うんだろう?


 気になったので、窓口のおばちゃんに聞いてみた。


 煮たり焼いたりして食べるらしい。


 こいつら食えるのか!?


 どんな味がするのだろうか?


 機会があったら、食べてみようかな。


 その後、宿に泊まった。



 それから、二週間森に通い続けて、ようやく三〇体のルァナワーヴァイゼを倒すことができた。


 他の連中は、合計一六八体も倒してしまったけどな!


 俺とキュキュは九九個ずつエクスレトを取り込んだ。


 俺のレベルは『よわヨワ弱、よわヨーワ、えっ!? 私弱くはなくない気がしない!?』になったらしい。


 キュキュのレベルは『弱ヨワヨワよわよわヨワヨワ弱弱、うぎょっ、私よわ強ヨワくない!?』になったらしい。


 相変わらず、分かりにくいなぁ。


 それに大量に取り込んだ割には、あまり強くなったような気がしないんだよな。


 なんでだろう?


 同じヤツのエクスレトを何個も取り込んでも、レベルは上がらないのだろうか?


 キュキュに聞いてみた。


 上がりにくくなるそうだ。


 やはりそういうルールがあるのか。


 厳しい世の中だな。


 まあ、いいか。


 では、修行をしに行こう。



 筋肉の修行場ガナガーナァヤセにやって来た。


 そして、ルァナワーヴァイゼを筋肉の塊Tシャツの職員に渡した。


「確かにルァナワーヴァイゼですねマセ。では、修行を始めましょうかマセ?」


「はい、お願いします!」


「それでは、こちらへどうぞマセ」


 職員に先導され、奥へと進んだ。



 少し歩くと、左右の壁に赤い片開きの扉が大量に並んでいる、長く伸びた直線の通路があった。


「おひとりずつ別々の部屋にお入りくださいマセ」


 職員が立ち止まり、そう言った。


 ここからはステーさんたちと、別行動になるのか。


 ちょっと不安だな。


「私はヒモノからあまり離れられないのだが?」


 ステーさんがそう言った。


「えっ!? どういうことだ!?」


「私はステータスウィンドウだからな。あまり持ち主からは離れられないのだ」


「ワタシもそうですキュ~」


「そんな制約があったのか!? 初耳だぞ!?」


「今初めて言ったのだから当然だ」


「なんで言わないんだよ!?」


「特に必要なかったからだ。聞かれもしなかったしな」


「ソ、ソウデスカ……」


 他にも隠された制約がありそうだな。


 調べた方が良いのかもしれない。


「実はわたくしもそうなのです」


「えっ!? ステータス令嬢にもそんなのがあるのかよっ!? なら、別行動は取れないのか!?」


「他の方は分かりませんが、わたくしはあまり離れられないのです」


「そうだったのか。ちなみに、どのくらい離れられるんだ?」


「正確な距離までは分からないのです」


「そうなのか。後で検証してみた方が良いのかもしれないな」


「その方が良さそうなのです」


 覚えておこう。


「お客様、この中では、そういった能力の制約は無効化されますマセ」


「えっ!? そうなのか!?」


「はい、ですので、安心して修行してくださいマセ」


 なんと都合が良いんだ!


 素晴らしいな!



「おい、俺様はどうすれば良いんだよ?」


 聖剣が疑問を口にした。


「職員に運ばせますので、少々お待ちくださいマセ」


 筋肉の塊Tシャツの職員がそう言うと、奥から誰かがやって来た。


 長身、スキンヘッド、筋骨隆々。

 全身日焼けした黒い肌で、テカっている。

 無駄毛はまったくない。

 身に着けているものは、黒いブーメランパンツのみ。


 このような姿をした、さわやかな笑顔の好青年だ。


「おい、待て、そいつが俺様を持つのか!?」


「はい、その通りでございますマセ」


「俺様は美女専用の聖剣なんだ!? 男は触れるんじゃねぇ!? 美女の職員を呼んでこい!!」


「これも修行ですマセ。ご容赦をマセ」


 青年が聖剣に近付いて来た。


「や、やめろっ!? 来るなっ!? 俺様に触れるんじゃ…… あーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


 青年が聖剣を持った。


「ぐああああああっ!!! 男のゴツゴツした硬い手がーーー!!!」


 聖剣が苦しんでいる。


 そんなに男に持たれるのが嫌なのか?


「ステーの姉さん、チカの姉さん、お助けをーーー!!!」


「修行がんばれよ!」


「成長するのです!」


 聖剣はステーさんとチカさんに応援された。


 というか、見捨てられた。


「おっさん、なんとかしろ!! 能力を解除して、俺様を消すんだ!!」


「そんなことできるのか?」


「できるに決まってんだろ!? 早くやれ!!」


「そうだったのか。だが、報酬は払ってしまったんだし、もったいないから修行して来いよ」


「男に持たれるなんて、嫌に決まってんだろうが!!! さっさと消せよ!!! 消してくれ、お願いだ!!!」


 聖剣が文句を言いまくっていたが、青年は聞く耳を持たずに運んで行った。


「では、皆さまもお好きな部屋にお入りくださいマセ」


「はい、分かりました。それじゃあ、みんながんばろうな!」


「ああ、ヒモノもな」


「がんばるのです!」


「強くなるキュ!」


「がんばりますキュ~」


 俺は部屋に入った。

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