第12話 一番弱いのは?

 俺たちはルァナワーヴァイゼを探しながら、森の中を歩いていた。


「あそこにいるキュ」


 キュキュが指差しながら、小声でささやいた。


 そこにルァナワーヴァイゼが一体いた。


 どうやらこちらには気づいていないようだ。


「お姉様、今度はわたしが戦うキュ」


「分かった。任せよう」


 今度はキュキュが戦うのか。


「いくキュ」


 キュキュが着ぐるみの耳をつかみ、回し始めた。


「こいつをくらいやがれキュ!!」


 そして、ルァナワーヴァイゼに向かって、ぶん投げた。


「ぐがっ!?」


 見事に命中し、ルァナワーヴァイゼは砕けた。


「どうだキュ!」


「すごすぎる!? キュキュは強いんだな!?」


「このくらい当然キュ!」


 そうなのか!?


 ダンジョンでは、あれくらいやれないとやっていけないのだろうか?



 その後、キュキュがエクスレトを取り込んだ。


 キュキュは左腕の脇の下に挟むと取り込めるみたいだ。


 妙な場所でやるんだな。


 そして、砕けたルァナワーヴァイゼを収納した。


 これで二体か。


 まだまだ先は長いな。


 では、次のヤツを探しに行こう。



「あそこにいるのです。それも二体もなのです」


 チカさんが指差しながらそう言った。


「次はワタシが戦ってみますキュ~」


「では、もう一体はわたくしが戦うのです」


 今度はキュウィとチカさんが戦うのか。


 ふたりとも戦えたのか?


「ステーさん、聖剣を貸してください」


「ああ、分かった」


「チカの姉さん、あっしに任せてくだせぇ!」


「はい、お願いするのです」


 ステーさんが聖剣を渡した。


 相変わらず、美女にはびへつらっているなぁ。


「頭を借りますキュ~」


「がんばるキュ!」


 キュウィが着ぐるみの頭を受け取った。



「いきますよキュ~!」


「勝負なのです!」


 キュウィとチカさんが、それぞれ武器をルァナワーヴァイゼたちに向かって投げ付けた。


 聖剣って、そんな使い方ができるのか!?


「ぐあっ!?」


「ブミィィィィィッ!?」


 どちらも命中したようだ。


 そして、ルァナワーヴァイゼたちは砕けた。


 おおっ、素晴らしい!


 ふたりとも見事に倒したな!


 あれ?

 この中で一番弱いのは、もしかして、俺なのだろうか?


 まあ、そんなのどうでもいいか。


 気にしないようにしよう。



 その後、キュウィがエクスレトを取り込んだ。


 キュウィは右腕の脇の下に挟むと取り込めるようだ。


 なんでそんな場所なんだろうな。


 チカさんの分は聖剣に取り込ませていた。


 またまた俺の中に何かが入って来たような気がした。


 これでまたレベルアップしたのだろうか?


 体を動かしてみたが、よく分からなかった。


 ステーさんに聞いてみた。


 レベルは『よわヨワ弱よわ、よわヨーワ、うわっ、私ちょっと弱くないかな!?』になったそうだ。


 たいして変わってないなぁ。



 その後、砕けたルァナワーヴァイゼたちを拾い集めて、収納した。


 これで四体だな。


 では、次を探しに行こうか。



 白、緑、ピンク色の球体を発見した。


 大きさはルァナワーヴァイゼと同じくらいだが、体にクレーターはない。


 あれはルァナワーヴァイゼなのだろうか?


「おっ、人間さんだンゴ。こんにちはンゴ」


「こんにちはチヤ」


「こんにちはベニ」


 白、緑、ピンク色の球体が近付いて来た。


 ちょうど良い、尋ねてみようか。


「こんにちは、君たちはルァナワーヴァイゼなのか?」


「違うンゴ。僕は人間さんに『ルァナミダンゴヴァイゼ』と呼ばれているみたいンゴ」


 白い球体がそう言った。


「僕は『マチヤダンゴヴァイゼ』と呼ばれたことがあるチヤ」


 緑の球体がそう言った。


「僕は『シヨクベニダンゴヴァイゼ』だったと思うベニ」


 ピンクの球体がそう言った。


 なんだ人違いではなく、ミョガガベ違いか。


 紛らわしい連中がいるんだな。


「そうなのか。俺たちはルァナワーヴァイゼを探しているんだけど、知らないか?」


「知らないンゴ」


「そうか。では、俺たちはこれで失礼するよ」


 俺たちはその場を立ち去ろうとした。


「待ってよ、人間さんチヤ」


「せっかく出会ったのだから、仲良くなりましょうベニ」


「仲良く? 何をするんだ?」


「人間さんの中には、赤い液体があるんでしょンゴ? ちょうど体を他の色にしたいと思っていたんだよねンゴ。その赤いのちょうだいンゴ」


「お断りだ!」


 何を言っているんだ、こいつは!?


 恐ろしいヤツだな!?


「そう言わずにちょうだいよンゴ。最近、白い自分に飽きてきたんだよねンゴ。変わってみたいんだよンゴ。この気持ち、分かるでしょンゴ?」


「知らん! お断りだ!」


「ひどい人間さんだなチヤ」


「ちょっとくらい分けてあげても良いでしょベニ?」


「断る! その体の大きさでは、ちょっとどころでは済まないだろ!? そんなに血を渡したら死んでしまうぞ!?」


「ヒモノ、こいつらは敵だ。始末するぞ」


「ああ、やってしまってくれ、ステーさん!」


「僕たちを始末するンゴ!?」


「ひどいチヤ!? 変なトゲトゲ人間さん、ひどすぎるチヤ!?」


「変なトゲトゲ人間さん、変なトゲトゲベニ!」


「変なトゲトゲだと!?」


 あ~あ、言ってしまったな。


 ご愁傷様。


「許さん、死ね!!」


「「「ブミィィィィィィィッ!!!」」」


 白、緑、ピンク色の球体は砕けた。

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