第7話 罠と宝?

 目が覚めた。


 所々白く光っている、岩の天井が見える。


 やはりダンジョンに閉じ込められたのは、夢ではなかったようだ。


 ああ、やれやれだな。


「おう、おっさん、起きたか!」


「ああ、おはよう、聖剣。見張りありがとう」


「良いってことよ。何も起きなかったしな」


「そうなのか。このあたりには夜行性の生物はいないのかな?」


「そうなのかもしれねぇな」


 キュキュとキュウィが何も警戒せずに寝たのは、これが理由なのかもな。


「おはよう、ヒモノ」


「おはようございます」


「おはようキュ」


「おはようございますキュ~」


 みんなが挨拶をしてきた。


「おはよう。みんなよく眠れたのか?」


「快眠だったキュ!」


「それは良かった。さて、今日も出口探しをするとしようか」


「その前に朝食を取ろう」


「ああ、そうだな」


 バックパックから保存食を出した。


「また食事をするキュ?」


「ああ、そうだよ」


「人間さんはよく食べるキュ!」


「キュキュは違うのか?」


「お腹が減ったら食べるキュ」


 まさに野生動物って感じだな。


「そうなのか。では、キュキュは食べないのか?」


「食べるキュ!」


「ワタシも食べますキュ~」


 食うのかよ!?


「分かったよ」


 みんなで食事を取った。


 キュキュとキュウィは、またおかわりをした。


 朝からよく食べるなぁ。


 早く食料を補充しないとな。


 よし、食べ終えたし、出発するか。



「ヒモノさん、ツキそうです!」


 しばらく歩いていると、またチカさんが立ち止まり、そう言った。


「またか!? 今度はなんだ!?」


「また悪い予感がするのです!!」


「また敵か!? それとも罠か!? とにかく警戒しよう!」


 俺たちは周囲を調べ始めた。



「何も来ないし、見つからないな」


 直感が外れたのか?


「ヒモノさん、もう少し先の方から悪い予感するのです」


「そうなのか。なら、迂回うかいするか」


「わたくしの電球が、迂回は無理と言っているのです!」


「ええっ!? なら、進むしかないのか!?」


「その通りなのです!」


「仕方ない、慎重に進むとしようか」



 しばらく進むと、木製の立て札が立ててあった。


 そこには『罠注意』という黒い文字で書かれた日本語と、左下向きの赤い矢印が描かれていた。


 しかし、左下には何もなく、逆の右下には金属製のトラバサミがあった。


 ナニコレ?

 罠なのだろうか?


 矢印の向き間違えてないか?


 それに、なんで日本語で書いてあるのだろうか?


 意味が分からんな。


「こ、これは危険なヤツだキュ!? みんな振り返らずに逃げるキュ! 立て札から目を離しちゃダメだキュ!!」


「えっ!? これが危険なのか!?」


「そうキュ! 説明している暇はないキュ! 早く逃げるキュ!!」


「分かった!」


 俺たちは立て札を見ながら後退した。


 すると、突然立て札が浮かび上がり、俺たちに向かって飛んで来た。


「避けるキュ!」


 俺たちは立て札を回避した。


 立て札はそのまま飛んで行き、遠くの壁にぶつかって、爆発した。


「今のはなんだったんだ!?」


「あれは罠の一種キュ」


「どんな罠なんだ?」


「あの立て札に描いてある矢印の方向に、挟まれると爆発するトラバサミが埋まっているキュ。反対方向には、触れると爆発するトラバサミが置いてあるキュ」


 トラバサミなのに爆発するんだ。


「そのふたつを知っていて避けて通ろうとすると、さっきみたいに立て札が飛んで来るキュ。あれは何かにぶつかると爆発するキュ」


「凶悪な罠だな!?」


「その通りキュ。あれを見たら、さっきみたいに対処するキュ」


「ああ、分かったよ」


「残ったトラバサミは、遠くから石を投げて爆発させるキュ。そうしないと、うっかり踏んで爆発させてしまうかもしれないキュ」


「分かった。では、やってしまおうか」


 俺たちはトラバサミに石を投げた。


 本当に爆発した。


 恐ろしい罠だな。


 さて、これで爆発物の処理は完了だな。


 先に進むとしようか。



 ん?

 あれは?


 しばらく進むと、大きな茶色いダンボール箱が置いてあった。


 一辺の長さが一メートルくらいの立方体の箱だ。


 側面に黒い何かが描かれている。


 どうやら『私は宝箱』という意味の文字が書いてあるようだ。


 明らかに日本語ではないのに、読むことができたぞ。


 これも特殊能力のおかげなのか。


 すごいもんだな。


 それで、あれはなんなのだろうか?


 書いてある通り宝箱なのか?


 キュキュに聞いてみようか。


「あれは中に何か入ってたり、罠だったりするものキュ」


「そうなのか。見分ける方法は、何かないのか?」


「知らないキュ。わたしは見かけても無視していたキュ」


「他の連中もそうなのか?」


「開けるヤツもいるキュ。ただ、そういうヤツはあまり長生きしないらしいキュ」


 恐ろしい箱なんだな!?


「罠にはどんなものがあるんだ?」


「爆発するとか、箱が襲ってくるとか、箱に吸い込まれるとかするらしいキュ」


「吸い込まれたらどうなるんだ?」


「知らないキュ」


「そうなのか。恐ろしいな」



 次はチカさんに聞いてみよう。


「わたくしの電球はツキません」


「悪い予感はしないのか?」


「……しませんね」


「なら、悪いことは起こらないと判断して良いのかな?」


「即死はしないと思われるのです」


「即死はか……」


 怖いこと言うなぁ。



 さて、あれをどうするか?


 怖いけど、開けてみようかな。


 俺は箱を開けてみた。


 こ、これは!?


 中には袋に入ったビーフジャーキー、鮭とば、さまざまな種類のナッツ、スモークチーズなどの、コンビニに売っているおつまみのようなものが大量に入っていた。


 なんでこんなのが入っているんだ?


 訳が分からんなぁ。


 これは食べられるのか?


 チカさんに聞いてみた。


 食べられるうえに、俺たちがもらってしまっても問題ないそうだ。


 では、ありがたくもらっておこうか。


 これで少し食料に余裕が出たな。


 良かった良かった。


 キュキュにダンボール箱ごと収納してもらった。


 では、先に進もうか。

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