第8話 人間発見

 しばらく進むと、西洋の城塞都市のような城壁があった。


 高さは十メートルくらいだ。


 なんだこれは!?


 見た目通りの城塞都市なのか!?


 ちょっとキュキュに聞いてみるか。


「この中に人間さんたちが住んでいるみたいキュ」


「人間が住んでいるのか!? なんでこんなところに!?」


「そんなの知らないキュ」


「そうか。なら、ここで情報収集をしてみよう。ダンジョンから出る方法が分かるかもしれない。では、行こうか」


「本当に入るのキュ!? ここにはものすごく強い人間さんがいるらしいキュ! あんまり入りたくないキュ!」


「えっ!? そうなのか!? でも、人間同士なら、いきなり襲われたりしないだろ」


「本当にそうなのキュ?」


「多分」


「わたくしの電球がツキました! ここに入ると良いこともあるのですが、悪いこともあるようです!」


「それは普通だな。まあ、とにかく、あそこに入ってみよう!」


 俺たちは城塞都市に向かった。



 城門を発見した。


 門は開いていて、そこから西洋風の美しい町並みが見える。


 人通りはそれなりに多い。


 結構な人数が住んでいるみたいだな。


 門の前には、西洋せいよう甲冑かっちゅうのようなものを身に着け、やりを持った大男がふたり立っている。


 あいつらは門番みたいだな。


 では、行ってみよう。


 おっと、その前にヘルメットは脱いでおこうか。


 顔が見えないと、不審者だと思われるかもしれないしな。



「止まれピョン!」


 門番に呼び止められた。


 ピョン?


 甲冑姿のいかつい大男なのに、語尾がピョンなのか。


 なんでそれを選ぶんだ、通訳能力よ!?


「ふむ、女どもは入って良いぞピョン。そっちの男は許可証を出せピョン」


 門番は俺たちを観察した後、そう言った。


「許可証? そんなものは持っていないぞ」


「なら、入れるわけにはいかないピョン」


「ええっ!? なんでだよ!?」


「そういう規則だピョン」


「なんで女は入って良いんだ?」


「それもそういう規則だピョン」


「どういう規則なんだよ!?」


 男女差別はよろしくないぞ!


「うるせぇピョン! いちいち説明なんて、面倒なことさせるんじゃねぇピョン!!」


 横暴なヤツだな!?


 ここは聖剣で叩いてもらうべきか!?


 いや、すぐに暴力というのは良くないよな。


 もう少し話をしてみよう。


「その許可証はどこでもらえるんだ?」


「不定期に開催される審査会で、合格すれば良いピョン」


「不定期なのか? 次はいつ開催されるか分からないのか?」


「知らんピョン。おら、許可証がないなら、さっさと消えろピョン! 農村部にでも行きやがれピョン!」


「農村部? それはどこにあるんだ?」


「城の近くにあるピョン」


「仕方ない、そこに行ってみるか」


 俺たちは、その場から立ち去ろうとした。


「おいおい、女は入って良いと言っただろピョン! 入らないのかピョン?」


「ヒモノが入れないなら、入る必要はない」


「わたくしの電球も入るなと言っているのです!」


「お姉様が入らないなら、わたしもそうするキュ」


「なら、ワタシも入らないキュ~」


「良いのかピョン? お前らならピセーイ王に、見初められるかもしれないピョン」


 ピセーイ王?

 ここは王国なのか?


「そうなると、どうなるのキュ?」


「城でゼイタクな暮らしができるらしいピョン」


 王は女性をはべらせているようだな。


 なんかすごくダメダメな王って感じがするなぁ。


 この王国は近いうちに潰れるんじゃないか?


「そんなものに興味はない。ヒモノ、行くぞ」


「ああ、分かった」


「そうかいピョン。なら、勝手にしろピョン」


 俺たちは、その場から立ち去った。



 農村部と思われる場所を発見した。


 畑と木造の家が並んでいる。


 外周部は簡素な木製の柵で囲んである。


 木の棒を持った中年男性たちが柵の周りにいる。


 彼らは見張りのようだ。


 ここが目的地なのかな?


 ちょっと聞いてみようか。


「すみません。ここが農村部ですか?」


 俺は見張りの中年男性に話しかけた。


「そうだワン。あんたらも都市部から追い出されたのかワン?」


 この人の語尾はワンなのか。


 どういう基準で選ばれているのだろうか?


 よく分からんな。


 まあ、どうでもいいか。


「ええ、まあ、そんなところです」


「そうかい、それは大変だったねワン。ここは迷惑をかけなければ、誰でも住んで良い場所だよワン。ここで暮らすと良いワン」


「お気遣いありがとうございます。ですが、我々は住む場所を求めに来たわけではありません。ここから出る方法を探しに来たのです。何かご存知ですか?」


「ここから出る方法ワン? どういうことワン?」


「えっ!? ええと、我々は宙に浮いている黒い円みたいなものを通って、ここに来たんですけど、あなたは違うのですか?」


「黒い円ワン? うーん、そんなことを聞いたことがあるような気がするけど、忘れちゃったワン。私はここの生まれなんだよワン」


「そうなんですか」


 ここで生まれ育った人なんていたのか。


「では、情報が手に入りそうなところはありませんか?」


「そういうのは都市部に行かないと手に入らないと思うよワン」


「都市部ですか。あそこに入る方法はありませんか?」


「美人の女性なら入れるらしいけど、男性は時折開催される審査会に受かるしかないワン」


 城門の見張りと同じ回答だな。


「なぜ美人の女性は入れるのですか?」


「王が女好きだからだワン」


 本当にダメな王っぽいな。


 いったいどんなヤツなんだろう?


 逆に興味が湧いてきたぞ。


「王はどのような人物なのですか?」


「とてつもなく強力な特殊能力を持っていて、増長しているといったところだワン」


 なんかヤバそうだな!?


「そんな人間が国を運営できるんですか?」


「まともな家臣が何人かいて、なんとかうまくやっているみたいだワン」


 なるほど、そういうことなのか。


「王はどんな特殊能力を持っているのですか?」


「相手が身に付けている特殊能力を、自分も使えるようになる能力らしいワン。そのおかげでいろいろなことができて、とてつもなく強いらしいワン」


「それはすごいですね」


 そんなことができる化け物なのか!?


 関わりたくないなぁ。


 もめ事を起こさないようにしないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る