第5話 双子なウサギ?

「ところで、君個人の名前はなんて言うんだ?」


 俺はピンクのウサギの着ぐるみに質問した。


「ないキュ!」


「そいつは不便だな」


「そうなのキュ? なら、お姉様、名前を付けて欲しいキュ」


「そうだな…… 『キュキュ』なんてどうだ?」


 キュキュ?


 ウサキュキュのウサギの頭がなくなったからか?


「良い名前キュ! では、今日からわたしをキュキュと呼んで欲しいキュ!」


「ああ、分かったよ。俺は紐野ひもの ひとしだ。よろしくな、キュキュ」


「ヒモノおじさんねキュ。よろしくキュ!」


 ヒモノおじさん?


 ヒモのおじさん?


 なんだかヒモ男みたいな印象を受ける呼び方だな。


 気にしすぎかな?


 まあ、いいか。


 その後、ステーさんたちも自己紹介をした。



「キュキュは何ができるんだ? 特殊能力があったりするのか?」


「そういえば、この姿になってからステータスを確認していなかったキュ。見てみるキュ、ステータスオープンだキュ!」


 キュキュもステータスを出せるのか。


「な、なんだこいつはキュ!? 突然現れたキュ!?」


 キュキュの前に、髪や着ぐるみの色が水色になったキュキュそっくりの人間型の何かが現れた。


 なんだあれは!?

 キュキュが突然双子になったのか!?


「はい、どーも、毎度おなじみステータスウィンドウですキュ~! ご注文はなんでしょうキュ~?」


 キュキュのそっくりさんが、そう言った。


 ステータスウィンドウ!?

 こいつもステーさんみたいなものなのか!?


「な、何を言っているキュ!? ステータスウィンドウは、こんなのじゃなかったキュ!?」


「そうなのか? どんなのだったんだ?」


「宙に浮いている、半透明の青いプレートだキュ。他の連中もそうだったキュ」


「へぇ、そうなんだ」


 それが一般的なのかな?



「お客さん、注文はレベルでよろしいですかキュ~?」


「わたしはお客さんなのキュ!?」


「そうですよキュ~。あなたはお客さんですキュ~。お客さんのレベルは『弱弱ヨワヨワよわよわヨワヨワ弱弱、うわっ、私弱すぎスギっ!?』ですキュ~」


「な、何を言っているキュ!? わたしのレベルは七億くらいだったはずキュ!?」


「七億!? 高すぎないか!?」


「何を言っているキュ? そうでもないと思うキュ? むしろ低い方だと思うキュ」


「そうなのか!?」


 もしかして、レベルは一億ずつ増えていくのか!?


 訳が分からないな!



「おまけも付けちゃいますキュ~! お客さんのHPは『へなチョコへなチョコちょこパフェ超超超小小極小盛り一丁』ですキュ~」


「意味が分からないキュ!? わたしのHPは百億くらいだったはずキュ!?」


「百億!? とんでもない数値だな!?」


「そうでもないと思うキュ? みんなこんなくらいだったキュ」


「そうなの!?」


 ステータスって、そういうもんなのか!?



「どうしてわたしのステータスは、そんな変な言葉になってしまったんだキュ!?」


「それは分かりませんキュ~」


「これも聖剣の影響なんじゃないか? どうなんだ、聖剣?」


「ああ、多分俺様の力のせいだろうな! さすがは俺様だぜ!!」


 感心するようなことなのだろうか?


 ん?

 ということは、俺のステータスも聖剣のせいでおかしくなったのか?


 どうなんだろうな?


 まあ、いいか。


 今更どうしようもないしな。



「他の項目はどうなっているキュ?」


 他も俺と同じようになっていた。


 項目数も同じみたいだ。


 変なステータス仲間が増えてしまったのか。



「特殊能力は何かあるのかキュ?」


「『頭収納』というものを身に付けていますキュ~」


 頭収納!?

 なんだそりゃぁっ!?


「変な名前だキュ!? どんな能力なんだキュ!?」


「着ぐるみの頭の中に、物品をたくさん収納することができる能力ですキュ~」


 そういうことだったのか。


 すごく便利そうな能力だな!


「中に入れた物品は、許可された者にしか取り出せませんキュ~。それに頭は、戻って来いと思うだけで戻って来ますキュ~。中身を盗まれる心配なしの優れものですキュ~。さらに入れた物は腐りにくくなりますキュ~」


 すごすぎ!

 本当に優れものだな!!


「頭はとても頑丈ですキュ~。武器としても使えますキュ~。それに、どれだけ揺れても中身に影響はありませんキュ~」


 ああ、確かに硬かったな。


 やはり武器にもなるのか。


 とんでもない頭だな!!


「役に立ちそうな能力キュ! どうやって使えば良いキュ?」


「入れたい物の上に頭を置いて、入れと思うと入りますキュ~。出す時は、どこかに頭を置いて出ろと思うと出て来ますキュ~。頭を持って中身を見たいと思うと、中が見れますキュ~」


「分かったキュ」


「キュキュ、私たちの荷物を入れてもらえるか?」


「はい、お姉様キュ」


 ステーさんが背負っていたバックパックを地面に置いた。


 そして、キュキュがその上に頭を置いた。


 すると、突然バックパックが消え、頭が地面に落ちた。


 今のが頭収納か!?


 すごいもんだな!


 その後、他のバックパックも収納してもらった。


 三つとも入ったぞ!?


 素晴らしい収納力だ!


 こいつはありがたい能力だな!


 活用させてもらおう!


 そのためには許可が必要なんだっけ?


 もらっておこう。


 キュキュに俺たち全員分の使用許可をもらった。



「キュキュのステータスウィンドウに名前はあるのか?」


「ありませんキュ~」


「なら、付けてあげるキュ。あなたは今日から『キュウィ』に決定キュ」


「分かりましたキュ~」


 キュウィか。


 キュのステータスンドウだからか?



「ヒモノさん、あの金色のウサギも収納した方が良いと、わたくしの電球が言っているのです」


「えっ? あれも? 分かったよ」


 俺は金色のウサギの着ぐるみに近付いた。


 こいつは倒したんだよな?


 念のために、シャベルの先端で突いてみた。


 ……動かないな。


 どうやら倒したみたいだな。


 では、まずは壁から引き離すか。


 俺は金色のウサギの着ぐるみを引っ張った。


 すると、金色のウサギの着ぐるみのいたところから、赤い玉が落ちて来た。


 なんだこれは?

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