第2話 聖剣と令嬢
さて、どのステータス令嬢を出そうか?
うーむ、迷うなぁ……
ちょっと彼女と相談してみようかな?
ん?
そういえば、まだお互いに名乗ってすらいなかったな。
自己紹介くらいしておこうか。
「そういえば、自己紹介がまだだったよな。俺は……」
「知っている。名前は『
「えっ!? なんで!? あっ、そうか、ステータスに記載されているのか」
「そういうことだ」
「では、君の名前は?」
「私に名前はない。あえて言うなら『ステータスウィンドウ』になる」
「それは個人名ではないだろ」
ウィンドウでもないしな。
「なら、ヒモノ、お前の好きに呼んでもらって構わん」
「えっ!? 俺が!? 良いのか!?」
「構わんと言っている」
「そうか。なら、そうだな…… うーむ……」
ステータスウィンドウだから……
「では『ステー』さんとでも呼ぼうか」
「ああ、好きにしろ」
「改めてよろしく、ステーさん」
「こちらこそよろしく」
「ところで、ステーさん。ステータス令嬢は誰を出した方が良いと思う?」
「不明だ。判断材料が足りない」
「そうか。そういえば、ステーさんは何ができるんだ?」
「人ができることなら、それなりにできると思う」
「魔法とか、特殊能力とかは?」
「……ステータスを教えることができるだけだ」
「そうなのか」
答えが返ってくるまでに、少し間があったような気がする。
何か隠しているのか?
まあ、いいか。
誰にでも言いたくないことはあるだろうしな。
「ヒモノ、ここは判断材料を増やすために、聖剣を出してみたらどうだ?」
「それもそうだな。では、やってみようか。そういえば、どうやって出すんだ?」
「出ろと思えば出るのではないか?」
「そんな簡単に出て来るのか? なら、やってみよう!」
俺は聖剣出て来いと思ってみた。
ん?
なんだ?
体から何かが抜け出たような感じがしたぞ。
今のが聖剣なのだろうか?
「成功したようだ。足元に聖剣が出現している」
「えっ!?」
俺の足元に、長さ七〇センチくらいの馬用の黒い鞭が落ちていた。
これが聖剣ワカラセの鞭か。
完全に鞭だな!?
聖剣っぽさは
こいつは聖剣を名乗って良いのか!?
まあ、今更文句を言っても仕方ないか。
とりあえず、使ってみよう。
俺は聖剣を拾おうとした。
「おいっ! そこのメタボのおっさん! 汚ねぇ手で俺様に触るんじゃねぇっ!!」
聖剣から声が聞こえた。
「えっ!? なんだ今の声は!? 聖剣がしゃべったのか!?」
「その通りだ! 俺様はしゃべれるんだぜ!!」
「そ、そうだったのか。ところで、なんで触れて欲しくないんだ? 君を出したのは俺なんだが?」
「俺様に触れて良いのは美女だけなんだ! おっさんは触れるんじゃねぇ!!」
「な、なんだと!? 我がまま言うな! 俺の生活がかかっているんだ! 使わせろ!!」
俺は聖剣に手を伸ばした。
「やめろ! バカ! アホ! 変態! 俺様に触れるんじゃねぇ!!」
「誰が変態だ!? 人聞きの悪いことを言うな!!」
「俺様は使い手を選ぶんだ! そっちの美女なら使っても良いぞ!!」
「私が使えば良いのか?」
ステーさんがそう言って、聖剣を拾った。
「ああ~、美女の手の感触はたまらねぇな! やはり聖剣は美女が使うもんだな!!」
「そんなことはないだろ!? 何言ってんだ、この変態聖剣は!?」
「うるせぇ! 男なんていらねぇんだよ! すっ込んでろっ!!」
なんだこの欲まみれの聖剣は!?
なんでこんな能力が身に付いちゃったんだよ!?
クソッタレめ!!
「ヒモノ、これは私が使おう。それで良いか?」
「ぜひそうしてください! あっしが全力で敵を排除しますよ!」
聖剣がそう言った。
なんだこいつ!?
俺の時と態度がまるっきり違うぞ!?
「ああ、もうどうでもいいや。ステーさん、そいつを頼むよ」
「分かった。では、さっそく試し斬りをしてみよう」
「試し斬り? そいつ斬れるのか?」
試し
「おい、おっさん、俺様を甘く見るなよ! 試しにその辺の悪党をぶっ
その辺の悪党ねぇ。
日本にそんなのいるのだろうか?
まあ、とりあえず、探してみようか。
俺たちは外に出た。
裏路地にやって来た。
悪党はこういうところにいるのかな?
しばらくの間、探してみたがいなかった。
さすがは日本だ!
不景気だけど、平和で素晴らしい!!
大通りにやって来た。
当然だが、人通りが多い。
さすがにこんなところに悪党はいないよな。
「おっ、そこのお姉さん、美人だね。俺と遊ぼうよ」
見るからにチャラい感じの若い男が、ステーさんに声をかけてきた。
「悪党発見!! ステーの姉さん、やっちゃってくだせぇ!!」
聖剣がそう言った。
えっ!?
そいつ悪党なの!?
ただの女好きなのでは!?
というか、いくら美人だからって、棘付き肩パッドをしている人をナンパするのか!?
この兄ちゃん、なかなかのチャレンジャーだな。
「ああ、分かった」
ステーさんがチャラい男の頭を、聖剣で軽く叩いた。
「ブ、ブミィィィィィィィッ!!!」
突然チャラい男が鳴き声を上げたぞ!?
ナニアレ!?
「おい、そこの兄ちゃん! いつまでも遊んでねぇで、将来のために勉強しやがれ!」
「はい、分かりました! では、失礼します!!」
チャラい男がそう言って、どこかに行ってしまった。
アレが聖剣の力なのか!?
「どうだ! これが俺様の力だ! 見事な聖剣ぶりだろ?」
「ああ、うん、すごいんじゃないのかな?」
「やれやれ、やっと俺様のすごさを理解したか」
すごいといえばすごいけど、ダンジョンで通じるのだろうか?
まあ、そこは試してみるしかないか。
帰宅した。
「さて、どのステータス令嬢を出そうか?」
「ステータス令嬢!? おっさん、なんだそいつは!?」
聖剣に事情を説明した。
「おっさんのくせに、なかなか良い能力を使えるんだな! 褒めてやるぜ!!」
「それはどうも」
「ついでに助言もしてやるぜ! 俺様とステーの姉さんがいれば、戦闘面はまったく問題ないぜ!」
本当にそうなのだろうか?
まあ、疑ってもキリがないし、ここは信じてみるか。
「だから、罠への対策になりそうな令嬢を出した方が良いと思うぜ!」
「意外と真っ当な意見だな」
「聖剣である俺様は、頭も切れるんだぜ!」
「聖剣って、そういうもんなのか?」
「聖剣は万能なものなんだ! 当然だろ!」
「そうなのか。まあ、いいか。では、罠を見破れそうな令嬢を探してみよう」
直感力と調査力のふたつが罠対策になりそうだな。
どちらにしようか?
ここは直感力にしてみようかな?
直感の方が、調査よりも早く危険を察知できそうな気がするしな。
では、出してみよう。
そういえば、どうやって出すんだ?
ステーさんに聞いてみた。
聖剣と同じらしいのでやってみた。
すると、妙な格好をした長身の美女が突然現れた。
電球の着ぐるみに黒いロングブーツを身に着け、占い師が使いそうな水晶玉を持っている。
この人が直感力のステータス令嬢なのか?
奇抜な格好の方だな。
では、挨拶をしようか。
「初めまして、君が直感力のステータス令嬢なのか?」
「ツキますツキます……」
直感力のステータス令嬢が、そうつぶやいている。
「えっ? 何が付くんだ?」
「わたくしの電球がツキました!!」
「えっ!?
「これからこの星は終わります!」
「ええっ!?」
「そして、新たなる伝説が始まるのです!!」
「な、何を言っているんだよっ!?」
ヤバいよ、コレ!?
変なの出しちゃったよ!?
直感というより、変な電波を受信しちゃってる変人じゃないか!?
返品はできないのか!?
そういえば、ステーさんができないって言っていたな!?
どうすれば良いんだよ!?
「さあ、買い物です! 買い物に行くのです! 食糧と装備品を買うのです!!」
「ええっ!? なんでだ!?」
「終わりと始まりに備えるのです!」
「訳が分からんぞ!?」
「ああ、そうそう、わたくしの名前はないので、好きに呼んでもらって構わないのです」
「このタイミングで自己紹介!? では、そうだなぁ…… 直感だから『チカ』さんとでも呼ぼうか」
「どうぞ、ご自由に。では、出発するのです!」
チカさんに無理矢理買い物に行かされた。
フルフェイスのヘルメット。
バイク用のプロテクター付きレーシングスーツ。
悪路でも問題なく歩けるブーツ。
長さ一メートルくらいのステンレス製の剣型シャベル二本。
頑丈な大型のバックパック三個。
寝袋、調理道具などのキャンプ用品。
タオル、歯ブラシなどの洗面用具。
保存食料、サプリ、水を数日分。
方眼紙に筆記用具。
これらを買わされた。
お財布の偉人たちが、何人も旅立って行った。
懐に大寒波襲来である。
つらいすぎる。
帰ってきた後、バックパックの中に買ってきたものと着替えを入れさせられた。
その後は風呂で入念に体を洗って、さっさと寝ろと言われた。
鬼気迫るものがあったので、仕方なく従った。
いったいなんだというんだ!?
チカさんは、なんでこんなことをさせるんだ!?
本当に変なヤツを出してしまったな!!
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