第16話 幼なじみと新たな波乱の予感

「そんなことよりもさ、どうして初凪ちゃんと西島君は弁当の中身が一緒なの?」

「……え?」


 やっべ、大事なことを忘れてた。


「た、たまたまじゃないかニャ?」


 噛んじゃった……自分でもダラダラと冷や汗が垂れているのが分かった。

 ごめん、初凪……助けて。初凪に向かってアイコンタクトを飛ばす。


「(任せなさい。蒼ちゃん!)」


 どや顔の気味の初凪が、頼もしい笑みを浮かべる。


「別に蒼ちゃんと同棲して、お弁当を作ってもらってるとかじゃないのよ? もーう、みんな疑い過ぎよ」


 仕方ないんだから、みたいな笑みを浮かべる初凪だけど、何か核心に迫ったことを言いすぎてるような気がしてる。と言うか、誰もそこまで言ってないだろ……。


 余計にばれるのでは……?

 チラッと、三人の方を伺うとみんながみんな、顔を真っ赤にしていた。



「ふ、ふーん……そうなんだ……」

「……大人」

「~~っっ!」



「あ、あれ……蒼ちゃん?」


 私、完璧に誤魔化せたわよね? と言いたい表情の初凪が固まっていた。それから、徐々に顔が真っ赤になっていく。


「ふぁ、ふぁれ? わ、私……~~っっ!」


 ようやく、状況を察したようで初凪の顔も真っ赤に、真っ青に、不思議な表情をしていた。


 ──ゴドン!!


 その際、後ろの席──東雲さん側のイスも倒れたような気がするけど、気のせいだろう。


 そんなことよりもだ。


「いやいやいや初凪のお母さんも、昨日のキュービー五分クッキングを見てたんだろ。昨日は、お弁当特集だったし、いやーたまたまだなぁー!」


 あははははは…………。


「だ、だよね……そうじゃないと、流石に同棲とかはね……」


 流石に、そんなわけないかと言いたげな表情で、榎本さんと内藤さんが苦笑いしていた。現実味がなさすぎて、冗談だと思ってくれたようだ。安心、あんし──


「…………フッ」


 なぜかドヤが気味の吉河さんだけは、ニヒルな笑みを浮かべながら、サムズアップしていた。

 

 絶対に感づいてますやん……まぁ、言いふらす気もなさそうだし、他二人は誤魔化せたし、仕方ないか。


              ※


「え~っ! 凪ちゃんのお弁当。チョー美味しそうじゃん!」

「ふふんっ! でしょっ」


 元気いっぱいの内藤さんが、大げさなくらいに歓声を上げていた。勿論、初凪の弁当を作ったのは俺なんだが、どうして初凪がそんなに嬉しそうなんだ? いや、いいんだけどね。


「……凪ちゃんは料理上手?」


 クールな吉河さんが首を傾げながら、よだれを垂らしそうになりながら、初凪の弁当をジーッと見つめていた。何か、めっちゃ食べたそうだ。


「少しなら食べてもいいわよ?」

「……ん、センキュー」


 吉河さんは甘えるように、初凪からあーんして食べさしてもらっていた。


「……美味。可愛いだけじゃなくて、性格も良くて、料理上手。幼なじみの西島君がうらやましい」

「もーう、そんなこと言ったって、なにも出ないわよ」


 照れるように、バシバシとなぜか俺の背中を叩く初凪。


「いたい、痛いって!」


 そのまま、初凪にアイコンタクトを飛ばした。


「(どうして、初凪が弁当を作っていることになってんだ、お?)」

「ぴゅ、ぴゅ~……な、ナンオコトカワンナイナー」


 口笛を吹きながら、わざとらしく視線を逸らす初凪。

 いつの時代の誤魔化し方だよ……クソッ、みんなの前だから頬をつねることもできねぇ……。


「ほーら、何二人で見つめ合ってイチャイチャしてんのよ。私達のこと忘れてない?」


 榎本さんが不服そうに、俺達のことを見ていた。

 めっちゃ忘れてた……。


「私だって西島君ともっと仲良くなりたいって思ってたのに……」


 ちらちらと上目づかいでこちらを見てくる榎本さん。


「え?」


 なんですのん、そのリアクションは……え?


「だ、ダメー!」


 初凪の上ずった声が響く。


手をばってんにしており、拒絶の意味を示していた。


「っぷ、あははははは! 冗談だって」

「なんだぁ……冗談か。良かった……ほっ」


 肩を撫でおろす初凪。


「冗談だったのか……」


 一瞬だけときめいちゃった自分が何だか悲しい。まぁ、いんだけどね、分かってたし……グスン。


 そんな風に、冗談を言い合いながら、昼食を食べている時だった。


「ちょっといいかしら?」


 凛とした声に振り返ると、眉間にしわを寄せた学校一の美少女で読者モデルを務める──東雲さんが立っていた。

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ガキ大将だった幼馴染が華恋な乙女になっていた件~同棲することになったんだけど、顔を合わせるだけで赤くなるようなタイプでしたっけ?~ 旨い・デリシャス・ボノー @14v083mt

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