第二章 幼なじみとの学校生活編
第9話 幼なじみと登校初日の朝
いつもありがとうございます。
本日、二話投稿です。
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「もう朝か……」
いつもより30分早く起床した。
カーテンの隙間から零れる陽光の眩しさに目を細めつつ、カーテンと窓を開けて、一日の始まりを位置づける。完全な気分の問題だけど、こうした方が目を覚めるような気がするのだ。
今日、俺がいつもより早く起きたのは弁当を作るためだ。普段は、コンビニで適当に買って済ませる派だけど、初凪もいるのだ。だからこそ、何かを作ろうって気分にはなる。
あいつのは旨くて栄養あるの食ってほしいしな。
「俺……あいつのこと好きなんだよな……」
口に出すと、胸のドキドキが速くなって、温かい気持ちが胸いっぱいに広がる。
はぁ……と、我慢できない熱を吐き出しても、その温かさは体内に残ったままだ。
それどころか、もっと、もっと上昇しているような気さえしてくる。
「どんだけ初凪のことが好きなんだよ……」
いや、確かに好きで好きで仕方ないんだけどね?
我ながら単純で呆れてしまう。
俺に寄り添うと言ってくれて、傍にいてくれて、笑ってくれるだけで俺は落ちたのだ。我ながらちょろすぎるだろう……。いいや、とりあえず、朝食と弁当を作ろう。
こうして俺は自分の中の解決しなさそうな問題を一本背負いで放り投げた、ティッ!
※
「朝は和食が多いって言ってたし、みそ汁と卵焼きとソーセージでも焼くかな? それに納豆も用意するか」
冷蔵庫の前で独り言を言いながら、メニューを組み立てていく。一人暮らしで身に着いた悲しき習慣ってやつだ。
「ってなると、問題は弁当か……だし巻きは入れていいから、唐揚げ(冷食)とプチトマト、ブロッコリーってところか」
鍋に水を沸かして、和風顆粒ダシを淹れる。昨日、買っておいたのだ。味の素鰹節が悪いわけじゃないが、こっちのほうが美味しき感じるんだよな。塩分が多いからかもしれなが。
その間に他、卵をといて調味料を入れる。これで、卵焼きは焼くだけだ。ソーセージに切れ目を入れて、唐揚げ、ブロッコリーをレンジでチンする。
「っと、鍋も沸いたな……」
今日は豆腐じゃなくてわかめだ。
水で戻したわかめ、溶かしたみそを淹れて完成だ。ちなみに、うちのコンロは三つあるので、全部、並行して作ることができる。それぞれのフライパンに、卵、ソーセージを入れて焼いていく。それと並行してレンジでチンした、弁当の材料を皿に並べていく。
料理は味も大切だが、盛り付けも非常に大事だ。きれいなな見た目と汚い見た目だと全然、違うしな。それに、友達と弁当食うことになったら、そこそこの用意しとかないと、恥ずかしいだろうしな。
ちなみにだが、ブロッコリーのような緑の野菜とプチトマトの赤はすごく映える。あれだ、イタリアンのカプレーゼと同じ理屈と言うわけだ……オリーブッ!
「さてと……あいつはまだ起きないのか」
起こしにいかないといけないのだろうが、これを役得と思うか試練だと思うべきか……半々だな。
好きな子の寝顔を見れるのは最高に嬉しい。だけどだ。手を出さないで我慢と言うのもなかなかに酷だと思うのだ。非常に難しい塩梅だ。まぁ、初凪に嫌われて信用を失うのが一番怖い。間違いも起きるわけはない。
さて、遅刻は可哀そうだし起こしに行くかね。
朝食をすぐ提供できる状態に置くと、初凪の部屋にまで向かった。
※
「初凪―、起きろー! 朝だぞー」
「…………」
部屋のドアをノックするが、反応なし。要は眠っているんだろう。
なんなら、部屋の外からアラーム音が聞こえてくるくらいだ。これだけ大きい音を出して起きないって、お前は眠り姫かよ……。
「ったく、部屋に入るからなー」
反応がないと分かっていても、一声かけてから部屋に入る。
面倒くさいという気持ちが半分、好きな子の部屋に入って寝顔を堪能できる嬉しさが半分って感じだ……嘘です。本当は嬉しい気持ちの方が大きいです。
部屋に入ると、荷解きの途中なのかまだ積まれたままの段ボールがいくつもあった。荷物が届いてから二日もあったのに、なんで終わってないんだよ……ったく、俺の手が必要なのかもな……。
そう思った瞬間、何とも言えない高揚感というか嬉しさで口がニヤけそうになる……ダメだ。将来、仮に初凪と結婚することになっても甘やかしてダメ人間にする未来しか見えない……。
「って、結婚はしてねーよっ!」
誰のいない空間に突っ込む非常に悲しいことをしてしまった。
というか、マジでか……浮かれてる自分に非常に驚いた。恋をすると当たり前の景色が違って見えるって言ってたけど、マジなのか……。
くぅくぅと可愛らしい寝息を立てる初凪の姿が、冗談抜きで本当に世界一可愛く見えてしまった。というか、初凪以上に可愛い存在なんて存在しないだろう。初凪よりもこの子の方が可愛いとか言われても、鼻で笑えるくらいに初凪が圧勝するに決まってる。
はぁ……まるで俺が俺じゃないみたいだ。
「なぎー、起きろ! 朝だぞー!」
プニプニの頬を突きながら初凪に声をかける。
初凪の頬って赤ちゃんみたいで柔らかいなぁ……頬を引っ張って、サラサラの髪を撫でて、起床を促す……次からはもっと余裕を持って来るか、そしたら、初凪の寝顔も堪能できそうだし。
「んん……あと、八時間……」
「そんなに寝てたら学校が終わってまうよ……」
「ふぇっ? あれ、蒼ちゃん……?」
寝ぼけた初凪の眼差しの焦点があっていく。そして、俺のつま先から頭のてっぺんまで、視線が動く。
「……蒼ちゃんっ!?」
一気に顔を赤くした初凪が布団に顔を隠してしまう。
「お、おい、寝るなっ!」
「なんで朝から部屋にいるのよ……! 覚悟はできるけどさ……急すぎるって……」
「はぁ、覚悟だぁ? 何の話をしてるんだよ」
というか、変な言い訳をして二度寝をしようとするな。
「ち、ちがうの……?」
布団からちょこっと顔をだす初凪が、おそるおそると言った表情でこちらを伺ってくる。可愛いな……くそ。
「そうだよ、朝から起きてこないんだから、起こしに来たんだよ」
「わ、分かった……ありがとう。ね、寝顔が押してなかった?」
「寝顔……? あー……」
何て言えばいいのか、迷ったけど、そのまま正直に伝えることにした。
そのまま、初凪の耳元に口を寄せると、
「世界で一番、可愛かったよ」
ドキドキする気持ちを抑えながらそのまま伝えた。
「~~っっ! ば、ばーか! イジワル!」
布団を完全に被った初凪が、ボソボソとした声で何か文句を言ってきたが、無視だ。こっちだって、お前にはずっとドキドキさせられっぱなしなのだ。
だから仕返しだよ、バーカ。あははは。
それから顔を真っ赤にした初凪と朝食を終え、登校した。
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