第5話 幼なじみと添い寝するわけがない

「蒼ちゃーん! お腹空いたー! 朝ごはん、まだ作らないのー? やっぱり私が作ろうか?」


目を開けると、目の前には寝間着姿の初凪がいた。


「……?」


 なんで、初凪が俺の部屋にいるんだ? 


「ああ、そっか……昨日から家に嫁入りしたんだっけ?」


 あれ? 本当にそうだったっけ? まぁ、いいか。


「ふぇっ! よ、嫁入り……」


そんなことよりまだ眠い。


「ほら、まだ寝てようぜ。俺達は夫婦なんだから、一緒に寝ていいだろ」


 顔を赤くする初凪を布団に引っ張ると、そのまま抵抗感もなく布団に入ってきたので、後ろから抱きしめた。そのまま目を閉じる。


「~~っっ! こ、これはまだ早いよぉ……」

「お前の匂いが俺は好きだなぁ……」

「えへへ……でも嬉しいなぁ……蒼ちゃん、私もね──」


 温かくて、心地良くて、リラックスできる匂いだ。そのまま、俺の意識は暗闇に沈んでいった。


            ※


 目が覚めると、なぜか初凪が俺の布団で眠っていた。


 ふむ……どうやらこれは夢じゃないようだ……って、いやいやいや!


 オーケー! 状況を整理しよう。まだだ、まだ、慌てるような時間じゃないしな。

 そんな俺の動揺とはよそに、初凪は俺に抱かれる形で、くぅくぅと可愛い寝息を立てていた。


「って、このまま抱きしめたままっていうのよくないだろう!」


 いや、むしろ腕を抜いた拍子に、初凪が目を覚まして可能性もあるのか……。俺の顔のあたりに初凪の後頭部があるのだが、初凪のこーう……いい匂いが漂ってくる。どうして女子って、同じシャンプーを使ってても、こんなにいい匂いがするんだろうな?


 胸のドキドキが収まらなくなると、無意識に初凪を抱きしめる力が強くなった。華奢な体格だからか、怖いくらいに柔らかかった。力を籠めたら、どこまでも沈み込んでいきそうなほどに。


 初凪の体温が、泣きそうになってしまうくらいに心地よかった。別に嬉しいわけでも悲しいわけでもないのにだ。安心できて、元気を感じさせてくれるような初夏の爽やかな感じとでも言えばよいのだろか。


 もっと安心したくて、もっと初凪を傍に感じたくて……。


「初凪……」

「ふぁ、ふぁいっ!」

「………………おん?」


 よくよく見れば、初凪は耳まで真っ赤にしており、さっきから小刻みに体が揺れていたような……


「きゃあああああ初凪のけだものぉおおおお!」

「それはこっちのせりふでしょぉおおおおお!」


 なんとも朝から刺激的な目覚めだった。

 と言うか、俺も朝から色々と暴走してたな……反省、反省。


              ※


「それで? いったい、どういうことか説明してくれるよね蒼ちゃん?」

「は、はい……………」


 現在、俺はリビングで初凪に正座させられていた。そんな初凪の手元にはチラシか何かで作った紙の棒が握られていた。


 さては、それで俺のことを叩くつもりだな?


 とはいえだ。全面的に悪いのは俺で、言い訳のしようもないはずだ……まぁ、なんで俺の布団で寝てたんだよって疑問は尽きないのだが、暴れん坊将軍たる初凪様には逆らえないわけで。


「す、すいません……どうか、ご慈悲を!」


 ここは謝罪の言葉と共に、土下座一択しかなかった。これで後は何とかなるはずだ……多分。変に逆らわず、台風が過ぎ去るのも待てばいいだけなのだから。


 小学校の時から学んだ悲しき力関係ってやつだ。


「そうじゃなくて……どうして私を布団に連れ込んだのよ……」

「そ、それはっ!」

「誰が顔を上げていいってったかしら?」

「ひ、ひーっ! すいません」


 前言撤回。

 暴れん坊将軍の申し子たる初凪様は成長されたことで、さらにパワーアップしているようだ。ひえっ! いや、俺が悪いんだけどさ……。


「つ、つい! ぶっちゃけ、俺も理由が分からないんです! 気がついたら……初凪に傍にいて欲しかったって言うか……えーと……」


 本心なんだけど、支離滅裂なことを言っている自覚はある。ただ、気が付いたら抱きしめていたのだ……ぐぬぬぬぬ。


「な、初凪……?」


 チラッと初凪を盗みると、頬を赤くしながらもニマニマとしつつも、必死に表情を隠していた。それどころか、怒った様子を取り繕うとさえしている。そんな姿がつい──


「ップ! あははははは」

「ちょ、ちょっと! 何笑ってるのよ! アタシはこれでも真剣に──」

「いや、ごめん、ごめん。けどさ、何て言うんだろうな? 何かそうやって怒る初凪の姿が変わらなくて、可愛くてさ……ん?」


 あれ? 俺、今なんて言った?

 何か恥ずかしいことを言ったような気が……。


「きゃっ、きゃわいいっ……~~っっ!」


 顔を真っ赤にした初凪はその場で地団駄を踏み始めた。

 なんだ? なんだ?


「も、もーう! そんなこと言ったって誤魔化されないんだから……バカ」


 明後日の方向を向く初凪は、掌に自分の口を当てていた。


 それでも雰囲気、許してくれているような気がする……助かった。

 というか、俺も色々と暴走しすぎだな。初凪が来て、まだ一日だっていう言うのに、浮かれてんのかな。


 それから、初凪が許してくれたこともあって、俺は早速、朝食の準備を始めた。


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【あとがき】


読んでくださってありがとうございます。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


作者から読者の皆様に切実なお願いです。


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