第七章裏話/付録:漢の不等式

 第七章はパタグレア編です。前回も触れたように、この近辺のエピソードは執筆途中から追加された部分が大半となります。

 初期プロットにおける終盤のおおまかな流れは以下のとおりです (固有名詞は決定稿準拠)。


① 献慈復活、倒すべき勇者ヨハネスについて調査


② パタグレアの勇者・真田馨の存在を知る


③ ウスクーブで再会した両児の馬車でイムガ・ラサ港へ


④ パタグレアへ到着、ラリッサから馨の死を告げられる


⑤ 遺言とともに受け継いだ澪標を手にヨハネスとの決戦へ


 馨との「再会」がピークとなることは変わらず、決定稿ではその前段階が大きく盛られた格好です。

 文量が増えたのはもちろん、舞台や人物の設定も完成までにかなりの変遷をたどっています。中でも顕著なのはやはりマシャド家の周辺でしょう。




・ラリッサ・アルモニア・マシャド


 氷の異能を操るマレビトの子孫であると同時に主人公の初恋の人の孫娘であり、一等烈士と会社社長を両親に持つお嬢様でありながら二丁斧を振り回す、広島弁をしゃべるカポエイラ使いの黒ギャルです。

 本作で初期設定から最も大きく変化したキャラクターだと思います。馨の孫という立ち位置を除いて、何から何まで二転三転しています。

 執筆直前の段階ではリズという名前で、見た目も性格も純朴、シラットやエスクリマに似た流派を使うレンジャーを想定していました。そこから今の姿になったのにはパタグレアという国柄の変化も多分に影響しています。




・ジオゴ・マシャド・ドゥアルテ


 最初期はディエゴ (Diego)という名前でしたが、対応言語の変更に伴いジオゴ (Diogo)に改名しました。

 前章のピロ子と同様、ラリッサの父親という設定だけがあったキャラクターを、追加されたシナリオに合わせて登場させました。

 娘とは逆にキャラ造形はすんなりと今の形に決まった感があります。




・カヲル・サナダ・マシャド (真田馨)


 トゥーラモンドに来て以降の顛末は章末の【人物】に詳しく載せています。いわゆる前作主人公ですね。タイトルは多分『マレビト来たりて巻き上げ面!』とかです。

 澪の母親・美法と並んで (実際の登場シーンの少なさにもかかわらず)背景を作り込んだキャラクターです。

 ちなみにリヴァーサイドで献慈がキルロイに渡された「境界の輪」を一度目にくぐった時も、実はちゃんと「隣」に飛び移れています。景色が同じ校舎だったために気づかなかったのです。




 ついでにマシャド家絡みの追加情報を少々。


 執事ハーディは元々グラクシス公国という所で貴族の家令を務めていました。引退と同時に妻とは離婚、パタグレアで独身生活を謳歌しています。小柄なリコルヌ族としてはかなりの長身 (176cm)です。


 ワンちゃんメイドは菜菜 (ツァイツァイ)、クマさんメイドはココという名前があります。マシャド家は貴族のお屋敷ではないので規律はわりとユルユルです。




 パタグレア編ではレギュラーのコミックリリーフであるカミーユが離脱するため、孟三兄弟 (とくに永定)の再登場を早々に決めていました。




・申屠媛 (シェントゥ・ユェン)


 その孟三兄弟が現在師事する人物。ユェンも弟子たち共々、アイディアノートに眠っていた武侠ファンタジーの設定群から起用したキャラクターです。

 作中屈指の達人なのは間違いなく、澪との手合わせの際にもあえて手の内を晒すような動きを取っています。それが彼女なりのプレゼントであることを澪も察しているはずです。




 プレゼントといえば、永和が澪に試着させようとした「丸出し」衣装が謎のままでした。多分サンバカーニバルとかで見るようなやつだと思います。

 その後「休憩」はしたのか否か。……こちらはまだ謎のままにしておきましょう。


 女子ばかり取り上げるのも不公平ということで、最後に秘密の不等式を置いておきます。


 無憂>シグヴァルド≒献慈≧ライナー>柏木≧永定

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