第五章裏話

 物語後半の幕開けとなる第五章。順を追って語っていきます。

 まずは献慈がトゥーラモンドの裏側で出会ったこの人から。




・キルロイ


 最近思い出しましたが、構想段階ではメタルゴッドの姿を借りるという案もあった気がします。

 初稿だとトゥーラモンドの秘密やユードナシア (太陽系)との関係についてもっと掘り下げた説明をしていました。

 しかしながらその部分はSF色が強く、ファンタジーとしての物語のノイズになりかねないため、本編からは除外することにしました。




 次に触れる人物はシグヴァルドとノーラです。

 この二人も例に漏れず『マレ来た』の前身である『オー・ソレ・ミオ』(以下『オーソレ』)に起源を持つキャラクターです。

 二人とも初期プロットでは序盤だけのチョイ役のはずでしたが、本文を書き進めるうちにストーリーが膨らんでいったため、後半で再登場させることになったのでした。




・シグヴァルド・ユングベリ


 『オーソレ』での名はシャグヴェ・ウ・レニュギャ。「魔族」なので人間には発音できない名前という設定でした。「魔人族」の典型として今作にピックアップしたキャラクターです。

 冷淡で皮肉屋で好戦的な竜騎士シャグヴェは『マレ来た』でのシグヴァルドと何もかもが正反対です。シナリオでの役割に合わせて自然にそうなったというのが正解かもしれません。




・ノーラ・ポッキネン


 『オーソレ』ではノーラキャパ・コ・ポケャン。ダークエルフなので人間には発音 (以下同文)。ダークエルフという種族のいない『マレ来た』では魔人になりましたが、浮き世離れした知恵者としての立ち位置は変わらずです。

 ノーラやシルフィードのような自由人キャラは勝手に動いてくれるので筆が進む反面、放っておくと筋書きから逸脱しかねません。そのあたりは登場場面を限定するなどしてコントロールしています。




 序盤以来といえば「お父さん」こと大曽根臣幸もこの章で再登板となりました。

 大曽根がヨハネス討伐に参戦することは初めから決まっていましたが、どんな流れになるかはキャラが動くに任せたアドリブです。

 彼も献慈もなぜか強気モードなのでヒヤヒヤしましたが、いい落とし所に収まって安心しました。


 この章に限らず、作者がシチュエーションだけ用意してあとは演者任せにするケースは少なくありません。献慈が澪に告白するシーンも (その前のカミーユが啖呵切るところからすでに)同様の方法で「撮影」しました。




 最後に、五章前後のエピソードに関係した脇役たちを取り上げます。




・鳩野貴太郎 (はとの・きたろう)


 この人物も何気に再登場でした。三章では澪にボコられ、五章ではカミーユにはなじられる、不良集団〝六多頭倶楽部 (ロッターズ・クラブ)〟の元ヘッドです。

 そんな彼にも道を踏み外すに至ったきっかけがあるのですが、あえて明かさずにおこうと思います。「人生に取り返しのつくものなんて無い」のだし「人は前にしか進めない」のです。




・舟山登 (ふなやま・のぼる)


 本編では一切名前が出ていませんが前章、崖下の小屋で献慈に後ろから襲われた(誤解)人です。近くの村で船頭を営む41歳の独身男性です。

 実はヨハネスが去った後、彼は救援隊と一緒に現場に引き返して来ています。献慈たちをナコイまで運んだ船の漕ぎ手もこの舟山さんです。献慈は事が落ち着いたら菓子折りを持ってお礼に行かなくてはいけませんね。

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