【設定】精霊

◆精霊 Spirit


 精霊とは本来、時空間には属さず、因果の領域=精霊界にのみ住まう存在である。人や人と関わる事物に干渉するためには接点が必要となる。




◇因果の綻び karmic seams


 自然界で起こる全ての現象には筋立てられた因果がある。しかしそれは百パーセント無矛盾というわけではなく、解消しきれぬ不条理がわずかながらも必ず付随して発生する。


 仮にその綻びを放置すれば、世界は増大し続ける事象のエントロピーに呑み込まれ、混沌に帰することは必定であろう。


 結論からいえば、トゥーラモンドにおける精霊とはこの綻びを修繕し、自然の秩序を維持するシステムの一部なのである。




◇エーテル合成 etherea-synthesis


 ひるがえって、人間の精神活動はこういった因果の綻びの発生源として大きなウエイトを占めており、精霊はそのことを本能的に察知している。


 精霊は人の生み出す感情を消化・吸収 (内部的には綻びの解消)する過程をもって活動エネルギーを得ている。そしてその副産物として各々の属性に応じた魔法元素を排出する。

 この作用は植物の光合成になぞらえ『エーテル合成』と呼ばれる。




◇精霊魔術 elemental magic


 人間の感情は多くの綻びを発生させるため、精霊たちの活動エネルギーの供給元として適していることは、先に述べたとおりである。この関係性を魔術として昇華させたものこそが、今日使われている精霊魔術である。




◇霊格 spiritual figure


 精霊は感情 (綻び)の供給が途絶えると、やがて分解・再構成される。

 それとは逆に、『契約』などにより感情 (綻び)が安定供給され続けた個体は、より強固な霊格を持った精霊へと成長してゆく。


 このような指向性は大小に拘らず、全ての精霊に備わった性質である。




◆具象精霊 Elemental


 安定供給を経て具体的な姿と人格=霊格を得た精霊を具象精霊と呼ぶ (例:シルフィード)。


 さらに、長きに渡って人々の信仰対象となるなどした具象精霊は、より強力な霊格を獲得し、大精霊として敬われる。

 世界各地の神話に語られる神々の正体は、この大精霊であるという説が有力である。




◇異言 glossolalia


 精霊の発する言葉は、その意思をありのままに反映した異言 (グロソラリア)であり、言語としての体系を持たない。そのため『相案明伝』による翻訳は不完全なものとなる。




◆無属性精霊 Achromia


 属性を持たないために元素を排出することができない変異種を無属性精霊 (アクロミア)と呼ぶ。無属性精霊は人間の霊体のルーツとなった存在で、この共生関係の始まりは『古の盟約』として歴史に伝えられている。


 この『古の盟約』は、数万年という時間をかけ適応していく過程で鬼人や翼人といった新たな人種を生み出すきっかけともなった。




◆妖精 Fairy


 太古におけるトゥーラモンドの支配者。その黄金時代の様子は妖精郷ティル・ナ・ノグ (Tír na nÓg)として、おとぎ話の中に語り継がれている。


 自我を持った精霊の進化する先は通常、具象精霊であるが、もう一つの道筋をたどったのがこの妖精族である。彼らは自らの霊体をアストラル化=半物質化させることで、有機物からのエネルギー摂取を可能とした。


 精霊が霊的な独立栄養生物とすれば、妖精は従属栄養生物であり、長らく精霊のエネルギー供給元として相補関係にあった。


 最初期は動物を模した形態をとっていた妖精だが、人類の台頭とともにヒトの形を真似るものが現れ始める。ある一派はそのままエルフの直接の始祖となり、また別の一派は原初のヒトと交わって獣人種の祖先を生み出した。


 その反面、自然発生的である妖精族自体は同種族間での繁殖能力を有しておらず、先細る一方となっていく。人類が自らの文明を発展させ隆盛を極める頃になると、純粋な妖精族の居場所はトゥーラモンドにはほとんどなくなっていた。


 現在は人の手の入らない山野や森の奥、あるいは人間社会の片隅で細々と生き延びる個体を残すのみとなっている。

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