【設定】魔法 (2/2)

◆元素 elements


 発端となったのは、魔導プリズムを用いたエーテル分光により確認された12の波長領域。これらはそれぞれに異なった特性を有していた。


 魔導学者たちは、霊質を形作る最小単位=元素もエーテル同様の振る舞いをすると仮定し、その観測に務めた。


 結果、発見された元素は以下の12種類であった。


 火 : プラズマへの親和性を持つ。

 風 : 気体への親和性を持つ。

 水 : 液体への親和性を持つ。

 土 : 固体への親和性を持つ。


 熱 : 混沌への指向性を持つ。

 冷 : 定常への指向性を持つ。

 光 : 拡散への指向性を持つ。

 闇 : 収束への指向性を持つ。


 雷 : 電磁力への干渉力を持つ。

 重 : 重力への干渉力を持つ。

 時 : 時間への干渉力を持つ。

 空 : 空間への干渉力を持つ。




◆属性 attributes


 多くの魔法はこれら12種の複合属性で成り立つ。属性同士には結びつきやすいもの、反発し合うものなど相性がある。


 四大 : 火・風・水・土 → 物質を司る。

 四象 : 光・闇・熱・冷 → 運動を司る。

 四元 : 雷・重・時・空 → 力場を司る。


 上記のカテゴリー内の元素同士は作用しやすい。逆に別のカテゴリーにある元素同士は作用しづらかったり、予測のつかない反応を起こす場合がある。




◆五行 five phases


 東洋において万物の移り変わりを示したのが五行の概念である。


 木 : 風 + 雷

 火 : 火 + 熱

 土 : 土 + 重

 金 : 光 + 冷

 水 : 水 + 闇


 以上は西洋の魔導学による五行の解析だが、観測されたわずかなゆらぎから、実際は時・空を交え、さらなる複雑な力学系を形成していると予測される。




◆魔術の起源


 魔法とは元来、物理法則にそぐわない自然現象を指した概念である。

 人類は太古の昔から、常識では説明不可能な怪異を観測してきたが、霊体の獲得を契機として自らも発現が可能であるという認識に至る。ここに人為的魔法現象=魔術の概念が誕生した。




◆魔法発現のメカニズム


 結論からいうと、魔法はリヴァーサイドから現世への〝反響〟である。


 術者は詠唱・呪紋・精霊との対話などの手段をもって間接的に因果へ干渉する。その波動の跳ね返りパターンの違いが多種多様な魔法現象となって現れるのである。


 近代以前は具象精霊をはじめとする高位の霊的存在がその仲立ちを務めていたが、CMLの開発によって「無数の抽象精霊の総体」がその役目を負うこととなる。


 エネルギー保存則に則り総体の和は一定に保たれるため、魔法出力の安定度は格段に増した。




◆治癒魔法について



◇治癒


 治癒とは受け手の霊質を物質へと変換し、肉体の欠損を補う働きをいう。病気やケガを治すのであって、疲労や体力低下を補うことを意味しない。

 一方で、妨害術が引き起こす能力低下などの霊障 (spellbind)に関しては、除霊 (dispel)をもって対処するよりほかない。



◇治癒術


 治癒術は一定の時間を遡って肉体の状態を参照し、健康体へと近づける。古い傷ほど完治は困難となる。光元素で痛みを拡散させる作用を伴うことが多い。

 当然ながら治癒量には限界があり、霊体が維持できなくなる量の霊質を一度に変換するのは不可能である。



◇治癒術士


 職業としての治癒術士は、医師や薬師とは相補関係にある。

 上述したように、治癒術とは基本的に対症療法であり、病気やケガを根治させる手段としては必ずしも適切でない。

 臨床に際しては医師が病巣の除去を行い、治癒術士はその補佐として症状の緩和や麻酔に務めるのが望ましい。




◆転移術のしくみ


・転移先の座標は、術者を含む対象の記憶を参照したうえで決定される。

 何度も行き来した場所や、複数人の見知った場所、縁の深い場所であるほど転移にかかる霊力コストは抑えられる。


・転移先までの距離が遠いほど霊力コストは増加する。その消費量は直線距離に正比例する。


・転移対象の「質量」が倍増しても霊力消費は単純に倍にはならず、微増にとどまる。

 一方で、対象の「数」が倍増した場合はそれぞれに修正コストがかかるため、倍以上の霊力消費を伴う。




◆範囲魔法について


・広範囲への攻撃魔術は、その効果面積に応じて威力が拡散する。

 範囲を絞ることで威力の増加を狙う選択もあるが、必ずしも有効ではない。収束コストが余分にかかるうえ、収束後の威力も往々にして費用対効果に見合わないためである。


・範囲魔術には多くの場合、発動の際に適切な対象へ効果が及ぶよう、その術式に敵味方を区別するための識別子を組み込んである。

 CMLにおいては、簡略化された〈探知 (ディテクト)〉が用いられる。


・識別子が組み込まれていない術は危険なため、多くの国地域で使用が禁止されている。

 違反した場合、当該地域の魔術ギルドおよび類似の提携団体から術者に厳しいペナルティが課せられる。また術者が烈士である場合、その等級昇格も制限される。

 素行の芳しくない術士は各団体から派遣される保安員によって監視されるため注意が必要。




◆時属性魔法について


・加速・遅延の両効果には反動が発生する。これは時の歪みが閾値を超えた瞬間、不可逆の修正力が働くことによるもの。


・この修正力を利用して対象にダメージを与える攻撃術も存在する。

 ただし時空系魔法に対する抵抗力は存外強い。これは霊体が外部からの刺激に対し自己の同一性を保持しようとする働きによるものである。

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