第17話 館での仕事
翌日ポート子爵によばれた。
「おはようございます。ポート子爵。」
「おはようジェニン。呼び出した理由だが君の待遇について大きく変更しようと思ったからだ。」
「変更……ですか?」
ドクトから聞いていた話以外で一体何があるのだろうか。
「当初は衣食住、それに君の学という話だったが、ドクトの話を聞いていると見直しをすべきだと思ってね。こういうと不安かもしれないが待遇はずっと良くなる。」
そう言われるも待遇がよくなる覚えがなかった。
まだ亜種や上位種の痕跡も見つけていない。
「あの、なぜ良くなるんですか?心当たりがありません。」
「そうだね。最初はダイアウルフの亜種を狩ったと聞いた時はドクトが弟子に箔をつけるためにお膳立てして倒したものかと思っていた。後々聞いてみるとドクトのアドバイスもなく完全に単独撃破をしてるというじゃないか。それに君は一人でザイン森林を探索しているがあそこは魔獣の群れが多く本来は数人で組んで探索する場所だ。君は一人で探索し、生還するだけでなく魔獣をしっかりと討伐している。これだけで立派な功績だよ。」
なるほど、ドクトが見栄を張ったと思われていたのか。
「それで将来有望な君に魔法、魔術、チャントについて娘のニアールと学んで貰おうと思ってね。」
「それについてはドクトさんから聞いてます。けれどこう言ってはなんですが当初の待遇通りでは?」
「そうだね。ただ君の探索や護衛は義務じゃなくなる。」
「はい?」
これはクビと呼ばれる状態ではないだろうか。
「君の義務は学ぶ事に変わった。探索も護衛もやりたい時だけやればいい。勿論その時の気分で変えられては困るから事前に打ち合わせはしてもらうがね。」
「正直それではただの客人では?なぜそこまで……。」
「ドクトから聞いたよ。」
背筋が凍った。まさか冬の魔道具の話をしたのか?理性が逃げる算段と他言しないように脅す算段を立て始めたところで子爵が話し出した。
「公用語を三月半で覚えたそうだね。傭兵としても優秀で言語の覚えも良い。将来有望な君を囲いたいから君に差し出せるものを差し出そうという話だよ。」
にこりと笑いながら僕にそう言った。
「正直にお話すると僕は任期を終えたら行くところがありますそこで最低でも一、二年は滞在します。その後は決まっていませんがここに戻ってくるとは限りません。なのでそのお話は受けられないと思います。」
多分戻ってこないだろう。僕は冬の魔道具の最後の守り手なのだ。普通の傭兵として過ごせるはずがない。それに三年住めばきっと情が沸く。そしてきっとそんな人達を冬の魔道具を奪いに来る者達との争いに巻き込むわけにはいかない。
「別に今決めなくてもいいさ。時間はある。君が戻ってきたいと思ってもらえるように私達は君を迎えるだけさ。さて、それじゃあ外にいるダジンと一緒に書庫に行ってお勉強の時間だよ。ニアールは待たされると怒るからね。」そう言ってウインクをして僕に退室を促した。
退室すると言っていた通りダジンが控えていた。
「ジェニン、書庫に案内します。ついてきてください。」
「はい。そういえば護身術の話しを子爵様に本当にしてくださったんですね。採用されたとドクトさんに聞いて驚きました。」
「あの時も言いましたけど私も死にたくないので良いアイデアだと思ったので旦那様にご相談させていただきました。今日はお嬢様とジェニンの勉強を手伝うように言付かっていますが明日からは私も訓練に参加する予定です。」
「お役に立てたなら良かったです。」
里以外で初めてできた友人には死んでほしくないので本当にそう思う。
どうか僕が見捨てた里の皆のようにはなってほしくない。
そうこうしている間に書庫に着いた。
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