第14話 ポーツ領ザイン森林
本格的に私兵として働くようになって半月ほど経った。
最初は土地勘を養うために街から近い平原で魔獣を狩っていた。
一週間ほど平原で活動をしていたが特に問題もなかったのでその先にあるザイン森林に入った。
ザイン森林はガウミラドを囲むように存在し街道以外はほぼ森林になっている。
基本的に亜種や上位種を狩る時以外は僕とドクトは単独行動で強力な魔獣が居やすい山手側を探索している。
当然の事ながら亜種や上位種の痕跡を見つけたら即退散。場所と痕跡の特徴を報告し対策を練って兵達と討伐する流れになった。
原生種であれば単独撃破も許されてはいたが例のごとく森林と僕の野太刀は相性が悪いことから三体以上の魔獣を見つけたら僕は逃げる。
鍛冶場で頼んだ数打ちだが正直使い物にならなかった。親父さんの見立て通りだった。魔獣に一振りすると折れた。つまり一体に一本の打ち刀が必要となる。冬の魔道具の野太刀と違い打ち刀はちゃんと重みがある。僕の体格と筋力では二本差すのがギリギリだった。勿体ないからちゃんと使ったが三日で使い切ってしまったため結局野太刀で今は戦っている。
そして鍛冶場の親父さんには僕の体格にあった片手でも両手でも使える剣を打ってもらっている。
出来上がるまでは野太刀で突きと切り上げだけでやっていくしかない。
そして僕は今ザイン森林に入って1km程経った辺りで痕跡を探しているが森に入って浅いところなだけあって亜種や上位種の痕跡は見当たらない。
三年かけてドクト一人でしらみつぶしにしていく予定だったのだから当然と言えば当然ではあるのだがこうも原生種ばかりだと油断をしてしまいそうになるのだ。
冬の魔道具の守り手として対人に関しては一切の油断をしないと言い切れるが魔獣が相手となるとどうしても気が緩んでしまう。
一度それが原因で不意打ちをくらい怪我を負いそうになったため気を付けてはいるが浅いところに現れる原生種などたかが知れていた。
ふと気配。
見るとアームエイプが二体。
本来なら逃げるところだが風下で気づかれていないため不意打ちをし一体間引ける。野太刀を抜きアームエイプの頭に突き出した。
僕の存在に気付かずに死んだ仲間を見たもう一体のアームエイプは飛びのき僕から距離を取った。その手には石。失敗した……。
アームエイプの投石は並みの鎧ならどこに食らっても致命的だと聞いている。頭なら即死、胴なら臓器が破裂し手足はもげる。
だからアームエイプは投擲物を持たせずに倒すのがセオリーだった。見通しが甘かった。
確かに一体倒して一対一になってもその一体が万全な状態となれば楽に倒せる相手ではなくなってくる。できるなら戦わずに撒きたいところだが仲間を殺されて気が立っている。逃してはくれないだろう。
とにかく直撃を避けるために気の影に隠れながらアームエイプを常に視認できるようにする。
アームエイプは回り込むように移動をし僕に投石が当たる角度へ移動しようとしていた。馬鹿みたいだがぐるぐると木の周りをまわる事で時間を稼いでいるがそのうち血の臭いで他の魔獣が集まってくる事を考えると圧倒的に僕のほうが不利だ。距離を詰めないといけない。石ころなんてそこらにいくらでもある。最低でも四発ぐらいは連続で飛んでくると考えたほうがいい。冬の鎧だから即死はないだろうが一発でも貰えばアームエイプを仕留める余力は残らない。もらえば実質的な致命傷だ。
――僕は木々を盾にするようにじぐざぐに駆けだした。
背後の木に石が当たった音がするが気にせず僕は進む。
アームエイプは投石から追走に切り替えたようだ。足はあっちのほうが早い。
当然だ魔獣と人の子の足なんて比べるまでもない。
おまけに向こうは直進でこっちは蛇行してるんだあっという間に差は無くなる。
そしてまた投石に切り替えようとした瞬間僕は身を翻してアームエイプのほうに駆けだした。
重心を低くし体はできる限り地面に平行に近づけて駆ける。石が肩にかすったが野太刀の間合いに入った。
野太刀を差し込んだ。刺さった野太刀をえぐるように回し頭まで切り上げる。
アームエイプの絶命させた瞬間、汗が滝のように吹き出し僕の心臓の鼓動がドクドクと鼓膜を震わせた。
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