第12話 ガウミラド街
ポート領ガウミラドをダジンさんに連れられ歩いている。
「ジェニン、とりあえず日常的に利用されるであろう場所を案内します
気になる場所や他に知りたい所があれば遠慮なく言ってください」
「はい、よろしくお願いします!」
ひとしきり案内をしてもらった。
アッサムでは治療と勉強でほとんど出歩かなかったから里以外の人をこんなにじっくりと見るのは初めてで行き交う人に多くの店に驚きを隠せなかった。
「あのダジンさん鍛冶場を紹介をお願いしたいのですが」
「鍛冶場?君はその立派な剣を背負ってるじゃないですか。どうして今更鍛冶場を?」
「これは父の形見なんです。ただ見た通り僕の体格には合っていないので僕の体格に合った打ち刀を打ってもらおうかと思いまして。」
「なるほど。肌身離さず持ち歩いているので使いこなしているのかと思っていたのですが形見でしたか。事情はわかりました。鍛冶場に案内しますが君のいう打ち刀とやらはあまり聞かないものなので職人が対応できるかはわかりませんよ。」
「大丈夫です。最悪両刃の剣でも使えますし。」
「それは良かった。」
「ところでダジンさんは何か武術を修めているんですか?なんというか歩き方が普通の人とは違うというか……。」
「それは恐らく使用人として美しく見える歩き方を意識してるからですね。特に武術は修めていません。強いていうのであればいざという時に旦那様やお嬢様の盾になるための動きだけは使用人皆鍛えてはいます。」
「盾になるための動き……。それでは命を最初から捨てるつもりではないですか。それなら武術を修めて敵を撃退しようとしたほうがいいのでないですか?」
最初から命を捨てるという選択肢を取っている。命の天秤を軽くしている事に頭がかっとなり、語気を強めてしまった。同族嫌悪だ。考え方は理解できるが彼らには武術を修め命の重さをより重くする事ができるのにそれをしない事に腹がたって仕方なかった。
「そうですね。確かにそれが理想ではありますが使用人に武力は必要ありません。何故なら君やドクト殿、私兵が守ってくれるからです。そして万が一の時は我々使用人
が盾となり時間を稼げば主は逃げる事ができ、君たちが駆けつけてくれる。きっと君は優しく人の命を大事にしてるのはわかります。なので我々使用人を守るために主を守ってください。」
ニコリと優し気に笑いながらダジンは僕にそう言った。
「そう……ですね。少なくとも三年の間は僕とドクトさんでできる限り皆さんをお守りします。ですが可能ならば皆さんも武術を修めてください。そうすれば主人も自分の命も守りやすくなります。差し出がましいとは思いますがご一考ください。」
「ジェニン、ありがとうございます。我々使用人の仕事との兼ね合いもあるので旦那様にそういった提案があった事は進言します。私もまだ若いので出来れば死にたくないですからね」
ダジンはそう笑いながら答えてくれた。
「なんだか熱くなってしまってすみません。僕の父上がそういう死に方をしたので
つい……。」
嘘だ。僕が見捨てた命達とかぶって見えてしまうからだ。
それからは雑談をしながら歩いていると鍛冶場に着いた。
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