第6話 夢の中

 父上と母上と食事をしていた。

 母のつくるスープを美味しい美味しいと父と笑顔で食べていた。

 母は嬉しそうに微笑みおかわりをよそいでくれる。

 食べ終わった父上と僕は冬の魔道具の修練と剣の修練に出かける。

 


年中一日たりとも寒くない日がない、いつもの寒さを感じながら父と里から離れたいつもの修練場へと歩く。


「今日こそ冬の魔道具の感覚を掴んで見せます!父上の重荷を軽くして見せます!」


 僕は意気込みそう言った。


「無理をしなくても良い。私もすべての冬の魔道具を使いきれるようになったのは16の時だった。それを考えればお前は剣の腕も確かだし頑張っている。おそらく私よりも早く守り手になれるだろうな。」


 嘘だ。母上から14の時には守り手になれていたと聞いている。

 きっと僕に気を使ってくれている。だから今日こそ使えるようになるのだ。

 そう息巻いて毎日感覚を養おうと頑張っている。だがそれが上手くいかない。

 父上の息子なのだ。少しでも早く力になれるように頑張るのだ。


「ジェニン、今日は剣の修練からだ。修練とは言っても成長して体が大きくなれば恐らくもう私よりは強いだろうが腕を磨く事は大事だ。冬の魔道具の野太刀をうまく扱えれば他の魔道具もうまく扱える可能性もあるしな。私も過去色々試したものだ。さてまずは木剣で体を温めよう。」


「はい!父上!」


木剣を冗談に構えすり足でじりじりと父上に近づいていく。当然だが父上のほうが間合いは広くどう足掻いても父上のほうが早く打ち込めるが父上は僕の間合いに合わせてくれている。

 そして僕の間合いに入った瞬間僕は下段から切り上げ打ち込む父上はそれを横に打ち流し上段から縦一文字に打ち込んでくる。それを僕は半身になって避け打ち流された勢いを利用して横に薙ぎ払う。父上はそれを木剣で受け口を開いた。


「やはり剣術のセンスは私より上だな。まだ未成熟なその体でこれだけ打ち合うのは私が同じぐらいの歳の時にはできなかった。」

 

そう言い父上は木剣を納めた。


「次は冬の魔道具の修練だな。鎧の酷寒の吹雪は使えているから順番としては次はマントだな。耐寒性能を使えれば酷寒の吹雪の中でも快適に過ごす事が出来る。これだけで冬の魔道具を守るのは容易くなるからそういう意味ではお前は良い魔道具から感覚を掴めているかもしれんな。」


 そう言われ僕は嬉しくなった。

 


「ジェニン?」


 僕の様子がおかしかったのか父上が怪訝な顔でこちらを見てくる。


「いえ、何もありません!ではマントの修練をお願いします!」


「よし、鎧の時にも説明したが冬の魔道具を使うには熱が必要となる。体温と言い換えてもいい。だからしっかり食事をとる事、まあこれは母さんと私で管理しているから問題ない。そしてマントは一番熱を消費する。マントに自分の熱を注ぎ込むイメージを持て。これができると魔法を覚える時にも役に立つし野太刀にチャントもできるだろう。」


「はい、父上!」


毎日のように色々な例えやアドバイス、イメージの仕方を父上はしてくれる。自分もそれだけ多く教えを請うたからそうできると言っていた。

 父上の言う通り僕は自身の体温をマントに注ぐイメージをする。そしてこの酷寒の地の寒さが少し和らぐ。だが十分ではない。能力を発揮しきれれば寒さは一切感じず快適な体温になるはずなのである。まだ感覚が掴め切れていない。まだ足りない。そうして僕は倒れかける。熱、体温を流し込み過ぎた僕の体を父上が受け止めた。


「今日はここまでにして家に帰ろうか。母さんの温かいスープをまた飲もう。家までおぶってやるから眠っていていい。」


父上の温かさと優しさが心地いい。

 


 父上が一歩二歩、家路を歩み進める。


「ジェニン!また失敗したのかー!」


道中こうして里の大人や友人達にからかわれるのも慣れたものだ。もはや応援に近いと言ってもいいかもしれない。


「気を落とすなよー!」


 ほら、こうして励ましてくれる。

 そうしているうちに家に着く。


「おかえりなさい、今日は早かったのね」

 母上がいつものように微笑みながら出迎えてくれた。


「今日は冬のマントの修練を失敗してしまってな。熱を失ってしまったのだ。母さん悪いがジェニンに温かいスープを頼む。」


「はいはい、ジェニン無理はしちゃ駄目っていつも言ってるのにねえ」

 母上は笑いながらスープを温めてくれている。

 僕はテーブルに突っ伏すようにして座り母様の美味しいスープを待っていた。

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