第50話 大円団!

その後、早乙女会長の組織とこちらの組織は合併することになった。

「さなぎさん!さなぎさんの勤め先ってここだったの!?」

「山田さんって魔法少女してたの!?」

この言葉に私は恥ずか死んだ。

友人に変身して中高生くらいの女の子になっていると知られたのだ。心情くらい察してほしい。

「わ、私だって真理亜と親しいですもん!」と、出来た友人を取られたくない由利亜も可愛いけどさなぎさんが困惑しているからそろそろ嗜めないとな。

佐藤太郎とも共に働くことになった。

何かとアプローチを受けているが無視だ、無視。

仲間内からは復縁するか賭けられているから一度全員しばく必要がある。

胴元がボスなので遠慮はいらない。

魔法少女としてではなく山田真理亜として鍛え上げた技の数々を披露する時が来たようだ。

そんなドタバタした日々を送っていて、それでも笑いの絶えない日々で、魔法少女のエネルギー問題もこんな感じでなんとなくふわっと解決しないかなぁなんて思っているけれど、ボスや早乙女会長が奥の部屋で難しい顔をしているからまだまだ時間は掛かりそうだ。


三崎さんは相変わらず、戦闘が無くなるとふらりと温泉地巡りをし、お土産をくれる。働け。

直人くんは学校があって三崎さんの温泉巡りに同行出来ず、自撮りを泣きながら土下座して頼んでいてさすがのブラコンに慣れたからといってドン引きした。働け。

この兄弟は本当に顔しか取り柄がない。

えっ?私に顔すら取り柄がないって?やかましいわ!!

アキさんはピッマーンを広めるためにスーパーの店頭でピッマーンの紹介をしていて通報されてはボスが引き受けに行っている。働け。

ピッマーンを食べさせて貰ったけれど、確かに甘くて子供が好きそうだった。ピッマーンと思ってピーマンだったらガッカリする気持ちは分かった。でもやり過ぎだからな?

そのうち組織といえど庇えなくなるぞ。

由利亜はさなぎさんに対抗意識を燃やしていたが、元来お嬢様で人と喧嘩も出来ない子なのだ。

さなぎさんも人と割合上手く付き合える方なので、知らない間に二人で少女漫画の貸し借りをしていた。私も混ぜて。

ユウくんは私の拳を真似したいと日々修練している。

唯一働いているといってもいい人材だ。

でも、私に瓦を何枚割れるか試してほしいと瓦を持ち込むのはやめてほしい。

か弱いキャラでいたいんだ。

えっ?そんな時はなかった?そんな馬鹿な…。


そんなこんなで戦いもなくなって一ヶ月も経つ頃には私の腕も鈍ってきそうだなと周囲を見渡したら全員から目を逸らされた。

ちっ、察しがいいな。

そんな平和な日々を過ごしていたある日、久々にけたましい警報音が鳴り響いた。

「えっ!?なんで?」

どうやら今回の敵と和解したと思ったら新たなエイリアンが攻め込んできたらしい。

乗り付けてきた宇宙船も半壊にさせてほんのちょっとボコって問い詰めたら私達が思っていたよりもこのエネルギーには価値があるらしく、様々なエイリアンがねらっているらしい。

そんなこんなで今まで戦っていたエイリアンと連携して魔法少女はこれからも戦っていくことになった。


「魔法少女のこんちきしょー!」

本当にこんちきしょー!である。

でも、幼い子供を助けた時に言われた言葉。

「茶色いお姉ちゃんありがとう」

この一言で私は自分が売れない茶色い魔法少女であることを思い出した。

人を助けるのに自分の販促とか関係ない…いや、やっぱり売れたい。

賞与に関係する。今後は茶色推しの子が増えるように言動に気を付けよう。

そんな葛藤を抱きつつも今日も今日とても元気に戦う。


果たして魔法少女に休める日は来るのか?

それは宇宙が平和になった時に訪れる。多分、きっと。

……そうなったらいいなぁ。

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35歳無職、魔法少女に転職しました 千子 @flanche

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