第34話 デスメタ行進曲
やってらんねー!という熱い気持ちをぶつけた直人くんの学園祭から数日後、直人くんが真顔で報告してきた。
「山田さん。大変です。学校でデスメタが流行りました」
「なんで???」
なんでデスメタ流行っちゃったの?
「こっちが聞きたいですよ……。兄さんの歌とトライアングルを台無しにした癖に」
「それはちょっとやりすぎたと思った。ごめんね!」
可愛らしくウィンクしてテヘペロしたらめちゃくちゃ白い目で見られた。
ごめんて……。
私も35歳がやるのキッツイとは思ったよ。
「いやでも高校生にデスメタ流行るとは思っていなかった……直人くんの学校大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。トライアングルが宇宙一似合うのは兄さんなのにトライアングルとタンバリンに合わせてデスメタが休み時間の度に流れてくるんです。正直気が狂いそうです。兄さんの音楽以外聞きたくないのに」
「ミサキさんも聞きたくねーわ」
いやでも結構な大問題じゃない?
直人くんの学校でデスメタを流行らせてしまうなんて私、デスメタのカリスマの才能あったんじゃない?
いっそデスメタ魔法少女になっちゃう?デビューしちゃう?ドーム満席にしちゃう?
なんて私が妄想に妄想を膨らませていると直人くんからなおもクレームが来る。
「とにかく、山田さんのせいなのでなんとかしてください」
「……文化祭以外で部外者が学校に入ったら通報されない?」
「知りませんよ、そんなこと」
こいつ本当に兄以外に興味ないな。
今度は私が白い目で直人くんを見た。
「いえ、でも真理亜のデスメタ?はなにか熱いものを感じました!やってられないっていう熱い気持ちが!それが高校生の青春に火を付けたんじゃないんでしょうか?」
由利亜がフォローになっていないフォローをするけど、デスメタに青春注ぎ込んだら黒歴史にならないか?いや、これはデスメタ好きに失礼か。
「まあ、スター凱旋気分で直人くんの学校へ行ってデスメタブーム終わらせてくるよ」
そんな軽い気持ちで有志もとい無理矢理連れてきた由利亜とアキさんを引き連れて直人くんの学校を訪れた。
ミサキさんは直人くんからプレゼントされた温泉旅行に行っている。
私が門を通ると校庭にいた生徒が騒ついた。
「デスメタの人だ!」
とかなんとか指差して言われているけれど普段あのトンチキメンバーに囲まれている私の心は一般市民からデスメタの人と指を指されても堪えない。
…………堪えないっていったら堪えない!!
正直顔から火が出そうだ!!お酒でも飲んで自我を無くしてからくればよかった!!
体育館に着いてバンドの準備をしたら直人くんに丸投げされた。
「それじゃあ、なんとかしてくださいね」
…知ったこっちゃねーわ。
こうなったらやってやる。
校舎に戻ろうとする直人くんをガッチリ掴んで離さず、体育館の奥までまで引き摺って行き開始まで縛り付けておいた。
そして私はまた体育館でデスメタを披露した。
背後では虚無の直人くんがトライアングルを鳴らし、由利亜が段々とノリノリでタンバリンを軽快に叩き、アキさんは華麗なドラムスティック捌きを披露した。
「みんなノってるーーー!!?」
「イエーーーイ!!」
若いって元気〜!!
アキさんは最後の方にはドラムから駆け出して客席にダイブして引かれて地面と激突した。
それがおかしくてまた叫んだ。
もう自分でも何を言っているか分からなかったけど、まあ、みんな分からないからいいよね。
だけどあんなに熱狂していた結局直人くんの高校のデスメタブームは数ヶ月掛けて風化していった。
まぁ、ブームなんてそんなもんだよね。
数年後には黒歴史作った原因として直人くんの学校の人々に同窓会で話題にされるかもしれないがそれこそ知ったこっちゃない。
私からしたら知らない人達だもん。
私のせいじゃないもん。
でもデスメタのこと今まで聞いたこともなくて嫌がらせでやったけどハマったのは秘密だよ☆
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