第28話 スポンサーの御意向と技名
「えーい!洗剤最強油汚れ激落キック!」
あほな発言だと言わないで欲しい。
こちとら真面目にやっているんだ。
数日前、ボスが言った。
「スポンサー減ってきているんだよね。そこで!みんなが戦っている間に商品名を叫びながら戦えば知名度も上がってスポンサーもにっこり!私も怒られなくてにっこり!どうだろうか」
キリッとしたボスはイケオジだけど、それはそれ、これはこれ。
「恥ずかしいから嫌です」
「温泉関係なら叫べます」
「兄さんへの愛なら……!」
「ピーマンへの憎しみなら」
お前ら欲望に忠実すぎるな。
あとピーマンへの憎しみを叫んで攻撃していたらスポンサーが逆に減る。
私が一列になった横にいる仲間を呆れた目で見ると早乙女さんが手を挙げた。
「私から融資しましょうか?」
「ダメだよ!早乙女さん!ボスを甘やかさないで!」
慌てて止めるとボスから「ひどい!」と非難の声が上がったがそんなのは無視だ。
とはいえスポンサーは大切にしないといけない。
そういうわけで我々はスポンサーの商品を叫びながら戦うことになったのである。
後日、ボスが言った。
「スポンサーが逆に減った。融資も減らされた」
ズドーンとか効果音が付きそうな沈痛な面持ちだった。
まじか。
私のあの羞恥心との戦いのスポンサー名攻撃と新商品攻撃はなんだったんだ。
「やっぱり温泉の宣伝をしないから…」
「兄さんの凄いところアピールをしないから…」
「ピーマンを撲滅しないから…」
「関係ねーわ」
相変わらず横一列でボスの前に並んだ仲間を呆れた目で見るとキュートさんが閃いた!と叫んだ。
「みんなに魅力がないからじゃないかな?」
「やだも〜キュートさんったらオチャメ〜!変身した私めちゃくちゃ可愛いじゃん〜!」
キュートさんの頬を思い切り捻くり回しながら言い返した。
いや、まじで35歳山田真理亜より魔法少女リアの方がかわいいもん!本当だもん!
たとえ物販売上最下位でもかわいいんだよ!
本当だよ!信じて!!だって魔法少女だし!
「でも困りましたね、どうしたらスポンサーに喜んでもらえるんでしょうか?」
私が真面目な顔をして言うとボスはキリッとして「山田くんがビルを壊さなければ補填とか減るしスポンサーも元通りじゃないかな」と言うのでとりあえず肘鉄しといた。
「いや、あれは壊れる運命だったんです。そこにあるのが悪いんです。決して私のせいじゃないです」
「いやでもビル破壊する魔法少女ってイメージ悪いよ」とのボスの言葉に思わず「そうですよね」って言ってしまいそうになる。
ダメだ!ここで罪を認めたら負けだ!!
勝ち負けの問題じゃないけれど、ここで認めたらビル破損分や従業員の休業分を補填とか言われかねない!
負けちゃいけない戦いが始まった!!
「山田くん、君が一番悪の組織のエイリアンを倒しているのは分かっている。けれど、被害が一番多いのも君なんだ」
この発言で他のメンバーは解散になった。
薄情者!!
「もう少しだけ壊さず戦う方法はないかな?」
「私が一番破壊するのは他のメンバーが戦わないからです!もっと働くように言ってください!!」
「それもあるんだよねぇ」
ちらりとボスが他のメンバーを見るがみんな視線を逸らした。
おい。まじで戦えよ。
「もう一度だけ…いえ、あと百回くらいチャンスをください!」
「なんでそこで増えるの?」
「なんとかビル破壊をせずに戦ってみせます!」
そして私はおとなしく戦う研究をするべく早乙女さんにお上品な戦い方を教わることになった。
お上品な戦い方ってなんだと思われるかもしれないけどこれは私の減俸の危機なのだ。
「早乙女さん、よろしくね」
「はい!おまかせください!…まず、山田さんは物理攻撃に頼りがちでそれが周囲を巻き込んでいるんだと思います。魔法少女らしく、魔法で戦ったらどうでしょうか?」
いきなりの正論で私も瀕死だ!
「魔法…魔法ね……正直エルボーかました方がストレス発散になるよ?」
「そんなことを言っているから山田さんはダメなんです!」
早乙女さんにすら駄目出しされた!!
早乙女さんなら見捨てないと思ったのに!!
「じゃあ、早乙女さんならどんなスポンサー名か商品名叫んで魔法使って相手を倒すの?」
「えぇっ!?叫ぶんですか?」
「あっ、叫ばないところから?そうだよね。早乙女さん、叫んで発散するストレスないもんね」
価値観が違い過ぎて先行きが不安になってきた。
「そうですね、私に出来る技といえばブラックカードスラッシュとかですかね?」
早乙女さんが顎に手を当てて悩んで答えたが、一般人には無理な技だった。
「そういう貧富の差があからさまにでるやつじゃないのでお願いします」
思わず九十度でお辞儀をした。貧富の差、良くない!同じか私の方が多いくらいの給与の筈なのに生まれが違うだけでこんなにも差が出るものなのか……!!
くっ!やっぱりこの世はお金なの!?貯蓄額がすべてじゃないよね!?
「では、スポンサーが提供出来る範囲内で山田さんのお好きなものとかありますか?それを魔法の力に乗せて発動すれば力業に頼らずにビルも破壊せずに済むと思いますが…」
「えー。なんだろ。アイスとかお菓子とか?」
資料を捲って確認して菓子メーカーがあることを確認する。
「じゃあ、チョコなんてどうでしょうか!山田さんのカラーも茶色ですし、ちょうどいいかと思います!」
ぽんっと手を叩いて嬉しそうにする早乙女さん。
一歩間違えれば喧嘩売られてるかと思うけどこれで天然だから怒れない。
茶色い魔法少女リア、チョコの種類を技名に変えて魔法で戦うことになりました。
「食らえ!ザッハトルテクラッシュ!!」
「リアさーん!腕力で戦わないでくださーい!」
ユリアさんに言われてテレビに向かってアピールする。
「つい癖で!てへぺろ!」
今日も被害は出したけど、癖ってなかなか抜けないから厄介だよね!
みんなは変な癖が付く前に矯正しようね!
今日も帰ったらボスに怒られた私との約束だよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます