第27話 守りたい日常
早乙女さんの不穏な発言から一向にリアクションはない。
やっぱり早乙女さんは早乙女さんで、悪の組織の会長なんかじゃなくてピュアオーラ全開のお嬢様なんだ。
何度もそう言い聞かせた。
でも耳にこびり付いて離れない。
「もし、私が本当は悪の組織の一員で会長だったらどうします?」
早乙女さんと戦うのは嫌だ。
これは紛れもない私の本心だ。
ボスやキュートさんに相談しようかとも思ったけれど、言えば本当のことになってしまう気がして踏ん切りがつかない。
もし、もしもだけど早乙女さんが本当に会長だったら私は戦えるんだろうか?
今まで共に戦った仲間なんだ。
そんな相手に拳を振るえるだろうか?
ぐるぐる思考ばかりが回って答えが出ない。
肝心の早乙女さんは相変わらずピュアオーラ全開なお嬢様をしている。
……考えても仕方がない。
私は、私の信じる早乙女さんを信じよう。
……早乙女さんは私の仲間だ。
少なくとも、そうである間は。
私達は同じ魔法少女の仲間なんだ。
「おーい、山田くん。なにを一人でシリアスやってるんだい?人生ゲームが始まるよー!」
ボスの気楽な誘い声が聞こえる。早乙女さんも微笑んでいる。ミサキさんは勝手にボードに温泉を書き足しているし直人くんはミサキさんの駒に浴衣を作っているしアキさんはもはやも緑色もピーマンと関連付けるのか緑の駒を除外しているしキュートさんはもりもりお菓子を食べている。
そうだ。これが私の好きな仲間なんだ。
「ちょっと待ってくださいよー!私も混ぜてくださいよ!ゲームの世界くらい勝ち組人生を送りたい!」
そして笑っていればいい。
私は、私のために魔法少女やってるんだ。
みんなのために魔法少女やってるんだ。
そのみんなには早乙女さんももう含まれているんだ。
早乙女さんが万が一にも悪の組織の会長でも関係無い。いや、多少はあるけど。
みんな、戦って守ってみせる。
「魔法少女は、どんなときでもあきらめないんだからなー!」
とはいえ、盤面は劣勢。
人生ゲーム、ゲームの中くらいリア充させてくれ一攫千金させてくれ。
普通に地道にしんどい人生送らされても笑っていられるのは仲間がいるからなんだよ。
最初は1人でいいって思ったのに、このトンチキな連中が大切で仕方がないんだよ。
私の居場所なんだよ。
早乙女さん。
あなたが悪の組織の会長でも、私の仲間であることは変わらないからね。
「山田さん!頑張ってください!」
「オッケー!」
早乙女さんの声援を受けて回したルーレットは一だった。
世は無常。友人の肩代わりで借金のマスに止まってしまった。
「ド、ドンマイです!」
そういう早乙女さんは順風満帆な人生を送っている。
くそっ!ゲームくらいじり貧人生送ってみてよ!わたしの怨念に早乙女さんが苦笑する。
「あ、ゴールです」
ミサキさんが絡んでいないからか無欲の勝利で直人くんが一位になった。
次いでミサキさんで早乙女さん、アキさん。
欲望対決みたいになってしまった私とボスとの戦いはなんとか地道に進んで私の勝利となった。
「ボス、最下位なんだからアイスくらい奢ってくださいよ」
「それ、最下位が私以外だったら言わなかったよね!?」
アイスコールに負けてボスが半泣きになりながら財布を持って購買に行った。
こんな日常でいいんだ。
私が守りたいのは。
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