第25話 悪の組織にて4

「役員会議の準備疲れた~」

まさかパシリさん、専務だけじゃなくて社長まで一気にやられちゃうなんて…。

一瞬退職の二文字が過ったけど、新しい社長も専務もパシリさんも強そうで、今度こそ魔法少女に勝てそう!

……ていうか、パシリさんの役職って必要なのかなあ?

だめだめ!さなぎ!!疑問を持っちゃ!!

ただでさえ悪の組織なんて非日常的な会社に勤めているんだから!常識は捨てよう!

パシリさんもきっと必要な役職なのよ!きっと!多分!!わかんないけど!!!


そんなどたばたで疲れたところに、デスク上に置いてある卓上カレンダーの印を見て口角が上がる。

なんと!保養所の抽選に当たって有給を使って保養所に泊まれることになったのだ!

楽しみ~!

しばらく忙しかったからゆっくり休もう。

それから有給までは前任の社長、専務、パシリさん退職の準備に追われた。




そして待ちに待った有給!保養所!

保養所…とはいっても悪の組織専用の施設ではなくてホテルを借りるだけなんだけどね。

そこの入口に堂々と『魔法少女課ご一行 様歓迎』の看板が黒板にチョークで手書きで書かれていたの。

えっ!?魔法少女達も同じホテルに!?

どうしよう!?

……とは思ったけど、魔法少女も休暇で来てるんだよね。

そうだよね。毎回変な悪のエイリアンの相手させられていたら疲れちゃうもんね。

それに私は非戦闘員の一般事務員。

魔法少女と相対しても無理。勝てない。

だって魔法少女のリアちゃんなんてこの間倒れかかったビルを踏ん張って倒れないようにして元に戻していたよ!?

魔法少女パワーすごくない!?

ここは見なかったことにしてゆっくり休もう。

休みだしわざわざ会社に連絡もしなくていいや。




チェックインして指定された部屋へ行く途中で見知った顔に出会った。

「あれっ!?山田さん!奇遇だね?山田さんもこのホテルに泊まってるの?」

「さなぎさん!同窓会振り~!うん、そう。職場の慰安旅行みたいなやつで来たんだ」

山田さんは笑って言った。

職場の慰安旅行か~。いいな~。

「さなぎさんは?一人で贅沢旅行?」

「違うよ~。ここ、会社の指定保養所で有給使って一泊のリフレッシュ休暇にしようと思って…」

本当に、魔法少女が同じホテルで保養するくらいには頑張ってくれたおかげで皺寄せがこちらに来ているのだ。休みたい…。

「へー!いいじゃん!!私も上司や同僚達とより一人でこんなホテル泊まってみたかった~!」

山田さんがキラキラした顔で言ってくれたからちょっと嬉しくなった。

「今度、休みを合わせてどこかでランチでも行こうよ!愚痴聞いて~!」

「いいよ!私も最近ドタバタしていて忙しくて、誰かに愚痴を聞いてほしかったんだ」

軽く了承すると山田さんは余計に嬉しそうにして私の両手をぶんぶんと振り回して「絶対の約束だからね!」と言った。

学生の頃と変わらなくて私も笑いながら「はいはい」と答えた。

しばらく会話していたら、山田さんは複数人の男女に呼ばれて別れてしまった。

あの人達が職場の上司と同僚かな?

多種多様な人選で、山田さんはどんなところで働いているか気になった。

でもこれって聞いていいんだろうか?

わりとプライベートなことだよね?

特に出入口に魔法少女課ご一行様歓迎なんて書かれていたんだ。

もし万が一、山田さんが魔法少女なら……なんて、そんなことないよね!

魔法少女は小、中学生ぐらいの女の子だし!

今度のランチでどんな会社か愚痴を聞いていけば分かるだろう。




夕食のビュッフェで、山田さん達のところが騒がしいのが見えた。

いいな。楽しそうで。

私も混ぜてもらえたら……なんて、いきなり知らない人が来ると遠慮しちゃうよね。

会社の慰安旅行って言ってたし。

私は私で楽しもう!!

お皿に取り尽くした好物や美味しそうな地元料理の数々に舌鼓を打ちながら、晩ご飯を楽しんだ。

うん!美味しい~!これだけでも来て良かったかも!!

今度は誰か誘ってみよう。

休みが合えばいいなぁ…。




帰ったら現実が待っている。

会長以外の新たな四天王にマニュアルを渡して対魔法少女の戦闘シュミレーションとか受けてもらわないと。

そのためには今は保養所で心身ともにリフレッシュしなきゃね!


待っててね、魔法少女達!

あなた達がこのホテルで楽しんでいる間にも新しい社長達が魔法少女に勝つための作戦戦略を練っているはずだから!

今度こそ勝って賞与貰うぞ!

えいえいおー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る