第23話 貯蓄額が人生じゃない!…よね?

その日は昼過ぎに戦闘が始まった。

「私こそ悪のエイリアンを束ねる悪の組織の社長……」

「下剋上アターーーック!!!」

下剋上アタックをかましても、その贅肉で打ち返された。

くっ、一体どんないいものを食べているの!?

でも、こんなには太りたくないな。

楽して痩せたいし太らず美味しいものが食べたい。

「名乗りの途中で攻撃してくるとはこれだから躾のなっていない平社員は困るよキミィ」

なんだか気持ち悪くて悍ましくてブラック会社時代の上司を思い浮かべてしまう。

「私は社長だから昼過ぎの社長出勤すら許されるのだ!」

「やかましい!まだ上に会長がいるんでしょ!最高位でもないのに偉そうにすんな!」

「うぐっ!!」

私の一言は意外とダメージを受けたようだ。

えっ、メンタル弱くない?

偉くなると人からボロクソに言われなくなるから耐性がなくなるのかな?

ここはボロクソに言いながらボコボコにボコそう!!

ちなみに今回はミサキさんが珍しく出勤している!!

ミサキさんとユリアさん以外は欠勤です!!働け!!

私が前職までのブラック企業の数々を思い出して、会社や上司への怨みつらみを言いながら攻撃していく。

地味に効いている!やっぱり偉くなれば偉くなるほど叱ってくれる人がいなくなるんだ!特にワンマン経営は!!

悪の組織滅する!!ブラック企業は破滅しろ!!

ちなみに社会人経験は魔法少女が初めてなユリアさんは「リアさんもご苦労されてきたんですね」と少し涙ぐんでいた。

同情するなら戦ってくれ。

ミサキさんは早く終わらないかと見ているだけだった。

いや、なんでもいいからとりあえず攻撃して?

なんで三人もいて結局ワンオペ戦闘なの?


「労働基準法よりもっとホワイトにしろスペシャルキック!!!」

なんてことはない。単なる首という急所を狙った回し蹴りである。

社長は華麗に吹っ飛んだが、それでも社長を名乗るだけあってよろけながらもまた立ち上がった。

そこでミサキさんが初めて攻撃してくれた。

「社長ということは温泉地に別荘があるかもしれない…正直羨ましい!手拭いカッター!!」

欲望に正直過ぎる!

だけど、羨ましいとか妬ましいという羨望の感情は社長にはエネルギーになるらしい。

貧乏人には厄介な相手だ。

私達貧乏人が攻撃しても今一つ決定打に欠けるし、攻撃が上手く通用しない。

「私の総資産はピー(自主規制音)円なんだぞ!!」

社長が鼻を膨らませながらどや顔してくる。なんて醜悪なんだ!!

「くっ、そんな大金があったらこの間勤務中にネットで見ていた温泉地の別荘が買える…!」

ミサキさんが謎のダメージを受けている。

というかまじで戦闘以外の時にパソコンを弄っているの、温泉地以外に関心がないの?報告書出してあげて?


総資産を暴露して社長がどや顔するとユリアさんが驚いた様子で口許に手を当てた。

「ええっ!?その程度しかないんですか!?」

ピー(自主規制音)円をその程度というなんて、ユリアさん家どんだけお金持ちなんだろうな…と現実逃避していたが、社長はプライドを傷付けられてお怒りだ。

「き、貴様程度の小娘なんてどうせ親の力だろう?たいした額の小遣いなんて貰っていないんだろう?」

「いいえ。魔法少女として働き始めてからのお給料を投資やらなんやらで増やしてあなたの総資産額を越える額になりました」

「ゴフッ!!!」

「…うっ!!!」

「く…っ!!!」

ユリアさんの言葉に社長だけではなく私やミサキさんまでもがダメージを受けてしまう。

投資…投資かぁ……。

ユリアさん、頭もいいもんなぁ…。

「なんでリアさんやミサキさんがダメージ受けているんですか!?戻ってきてください!リアさーん!!ミサキさーーーん!」

ユリアさんに揺さぶられて、一回り歳下の子より貯蓄額が遥かに下なことへのショックから戻ってこれた。

貯金…明日から頑張ろう……。

私がそう決意しているとミサキさんも戻ってこれた。

「そうだ。死地は温泉と決めているからお金なんて温泉に注ぎ込めばいい」

「いや、温泉に死体があったらお客さん来なくなるからやめてあげて。温泉好きなら温泉地で働く人に迷惑掛けないであげて。二時間サスペンスの中だけにして」

私が突っ込むと、ミサキさんが悔しそうにした。

「まさかリアさんに正論を言われるなんて…」

「正論しか言った覚えがねーわ!」

「仲間割れはやめましょう!今は社長を倒すことに集中しましょう!」

いや、切っ掛けはユリアさんだけどね!

年下より貧乏人の私達が悪いんだけど!

いや!!もうこれは世の中が悪い!貧富の差が悪い!元の素養が違うんだもん!!




「私達貧乏人には社長への攻撃があんまり通用しないから今回はセレブなユリアさんメインで攻撃しよう!私達がサポートに回るから任せて!」

言ってて情けないが事実なので諦めた。

それに今は社長を倒す方が先決だ!

「分かりました!頑張ります!」

ユリアさんが覚悟を決めて社長に向かって攻撃をする。

「ブラックカードスラッシュ!!!」

ユリアさんのブラックカードスラッシュが炸裂した!

すごい!ブラックカードなんて初めて見た!

選ばれた者しか持てないものをあんなに惜しみ無く…いや、魔法の力で実物じゃないんだけど。ブラックカードなんて見たことないし。…セレブになりたい…。

「くっ、この私でさえゴールドカードなのにこんな小娘がブラックカードなど…!」

社長には効いている。

セレブさでユリアさんに勝てる魔法少女はいない!このままユリアさん主体でセレブ攻撃をしてサポートに回ろう!

「やーい!やーい!魔法少女に金銭的に負ける社長!!社長の役職返上したらどうですか~!?悪の組織のお給料って悪いんですね~!」

「悔しかったら温泉地にある別荘の鍵を渡せ」

ミサキさんは違うかな?!

「リアさん…炎上しちゃうので暴言は程々でお願いします」

ユリアさんに頼まれたが任せて欲しい。

「SNSで検索したら私にツッコミされたいって言葉が多かったので大丈夫です!!」

そう!意外に私のファンはマゾが多かった!悲しい!!普通のファンが欲しい!!

「そ、そうですか…?」

ユリアさんが若干引き気味だけど、気にしている余裕はない!

「ユリアさん、早くそのセレブオーラで社長を倒してください!セレブオーラが出せるのはユリアさんしかいないんです!!」

「はっ、はい!!」

「さあ!とびっきりのセレブさを見せ付けてください!!」

私の言葉に社長が怯む。

「ええっと……通帳残高ビーーーム!!」

「ぐわーーーーーー!!!!!」

後ろにいた私からはユリアさんの通帳内容が見れなかったが、社長が灰になるほどだ。

相当な金額なんだろう……。

ユリアさんが社長よりセレブで良かった…。




こうして、ユリアさんがとんでもないセレブなおかげで社長に勝つことが出来た。

他のメンバーなら貧乏で負けていた…。


「ありがとう!ユリアさん!セレブでいてくれて!」

「褒められている気がしないんですけど!?」

私がユリアさんの両手を握りしめ感謝をすると珍しくツッコミが入った。

ユリアさんも魔法少女に毒されてきたな…ふふふ……。


いつの間にかさっさと帰ったミサキさんを追い掛けるようにしてユリアさんと帰った。

今度投資の仕方を教えてもらおう…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る