第22話 出戻りってちょっと恥ずかしい
「この度、皆さんには多大なご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!」
みんなの前できちんと頭を下げて謝罪をする。
魔法少女になりたくないなんて言って、みんなに戦闘を任せてしまったり引きこもっていたことへの謝罪だ。
今までのことから早乙女さん以外には逆に謝罪されたいくらいだけど、私は大人なので素直に謝罪しておく。
早乙女さん以外はみんな自由に飲食をしたりしているから私の話を聞いているかも分からない。……まじで謝罪無意味では?
そのままボスとキュートさんのところへ行き再び頭を下げる。
「まだ、魔法少女を続けさせてください」
「もちろんだよ。パシリへのリベンジどころか専務すら一発K・Oした山田くんの実力に期待しているよ。でもエイリアン組合との揉め事になるような暴言は止めてね。わりと怒られたからね」
ボスからちょっぴりお小言を貰ったけれど、吹っ切れた私はめげないのだ!
「はい!これからもお給料と暴力でのストレス発散のために頑張ります!それで褒められて感謝されたら最高です!」
「動機が不純過ぎるけど、それでこそ山田真理亜くんだよ!」
キュートさんから不名誉な拍手をされたので伸ばしておいた。
相変わらずキュートさんはよく伸びる。
「キュートさんから聞いたんですけど、ボスも魔法少女が辞めやすいようにパチンコに行った振りとかしてたんですよね。誤解していてすみませんでした!」
「いや、まあ、九割パチンコには行っていたけどね!」
「私の謝罪を返せ!!!」
思わず肘鉄をした私は悪くない。
「さすがは肘鉄のマリアだ…今日もいい肘鉄だった……うっ!」
「いや、肘鉄のマリアは止めてくださいねって言ったじゃないですか!?申請してませんよね!?肘鉄のマリアなんて魔法少女名いやですからね!?」
「大丈夫だ……事務所で止められた…」
「ピーマン撲滅と兄好き∞は許可出たのに!?」
魔法少女の事務所の基準が分からん…。
でもよかった。肘鉄のマリアじゃなくて。
魔法少女のリアの方が絶対かわいい。
例え中身が35歳であろうと。変身したらかわいい美少女魔法少女になるんだもんな。
世の中の詐欺ってこういうふうになくならないんだな。
私が胸を撫で下ろしていると早乙女さんからフォローが入る。
「ええっと、私は可愛いと思いますよ。肘鉄のマリア。肘鉄と羊が似ていて」
いや、似てねーだろ。
キラリーンとピュアオーラ後光にもう負けない私は用無しになったサングラスを胸ポケットに入れたまま早乙女さんに聞き返した。
「じゃあ早乙女さんもピュアオーラ後光のユリアで決定ですね!ボス!申請書お願いします!」
「なんですか!?ピュアオーラ後光って!?」
「早乙女さんのキラリーンの効果音と背後の後光です」
「私、そんなの出してません!?」
早乙女さんがぱたぱた両手を振りながら冤罪を訴えてくるが、後光がなければサングラスなんていらないんだよ!
私の言葉にボスは苦々しく首を横に振った。
「私も考えて申請しておこうと思ったのだがね、商標登録的な問題で却下されたのだ」
「商標登録的な問題…」
早乙女さんが分かりやすく安堵した。
「ああ…でも早乙女さん歯並びもいいし綺麗だからコラボ狙えないですか?スポンサー増やしたいですよね」
「そうだね。どこの誰かの山田くんが悪のエイリアンどころかビルを壊したりしているから賠償金がね。相手側がエイリアン保険入っていてもそれなりに払わなきゃいけないしね」
「そこはごまかしてくださいよ、ボス~ 」
本日二度目の肘鉄も華麗にキマった。
早乙女さんは笑っているしキュートさんは相変わらず無限にお菓子を食べている。
よかった。戻ってこれて。
思わず私も笑ってしまった。
席に戻ると他のメンバーも次々と寄ってきて各々なにかしら置いていった。
ミサキさんからは温泉の素と、直人くんからはミサキさんのブロマイド、アキさんからはピーマンのダメな部分リストを貰った。
温泉の素以外どうすればいいか分からないチョイスだけど、とても嬉しかった。
応援されている。
街の人達だけじゃなくて仲間からも。
…アニメの魔法少女達は正しかった。
……いや、応援されているかなぁ?
応援されているって信じていいよね!信じておこう!その方が気も楽だ!
四天王のパシリと専務を倒した報告書を書こうとしても勢いでぶん殴ったら倒れた、飛び蹴りかましたら倒れた以外書くことがなくて、報告書には正直毎回悩まされる。
でも事実なので「力業で倒しました」の一行で提出している。
呼び出されたことはない。事実なので。
今日も一行報告書を提出すると事務所からもお菓子を貰った。
「山田さんが辞めないでいてくれてよかった」と感謝された。
多分、私がいなくなったらまともに出勤するのが戦闘慣れしていない早乙女さんしかいなくなるからだろう。
敵を思いきりぶん殴るのに早乙女さんはまだ早い。お嬢様根性が抜けていない。
なんて捻くれたことをおもいながらもとても嬉しかったので「ありがとうございます!」と笑顔で受け取った。
ルンルンで戻ると無限お菓子吸引マシーンとの別名もあるキュートさんに狙われたので空いていたクッキー缶を口に突っ込んでおいた。
キュートさんが早乙女さんに泣きついてクッキー缶を取ってもらっていたが、他の誰でもない早乙女さんを選ぶ辺りが計算高い。
これだから愛玩系エイリアンは。
私と睨み合っていると警報音が鳴り響いた。
このお菓子を置いて出撃するのは不安だけど、悪のエイリアンと戦うのは魔法少女の役目。
ちゃちゃっと倒してちゃちゃっと戻ろう!
みんなダッシュで現場に向かった。
ちなみに相変わらず私が一番遅い。年功序列って知ってるか?
やっと追い付いたらみんなもう変身していた。
本当にマイペースだな、と思いながらも私も変身して敵を倒していく。
今日は四天王の社長が出てきたらどうしようかと思ったけれど、普段の雑魚敵しか現れなかった。
策でも練っているんだろうか?
さすがに社長と会長なのでもっとあとで大御所登場を狙っているのか?
そんなことを考えながら今日も敵を殲滅した。
敵を倒すことにストレス発散という価値を見出だしてからは、戦いも苦じゃなくなってきた。
今日もガツンゴツン殴り倒せて一段落だ。
帰還すると事務所で貰ったお菓子がなくなっていたのでキュートさんを吊るしあげた。
早乙女さんが下ろそうとしたから帰還途中に買っておいた某歯磨き粉を渡したら素直に帰った。
今日もいいことしたな!
私も満足して帰宅した。
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