第20話 悪の組織にて3

「すごいですよ!パシリさん!魔法少女を二度も倒すなんて初めての快挙です!」


事務所全体がお祝いムードの中でも拍手をしながら心は憂鬱だった。

あんなにかわいい少女達を痛め付けて、なんでここの人達は平気なんだろう?

特に魔法少女のリアちゃんは今回の戦いに来ていなかった。

それほど重症なのかな?

魔法少女、いやになっちゃったのかな?

心配だな……。

あんなに惨敗しちゃったんだもん。

心が折れても仕方ないよね……。


なんて、悪の組織に所属している私に思われても魔法少女は嫌がるかもしれない。

それは少し悲しいな。

私は頑張る魔法少女が好きだ。

こんな職業に就いているせいで同僚の誰にも言えない私の秘密。

さなぎという名前のまま、うじうじ成長出来ない私と違って彼女達はあんなに輝いている。

懸命にみんなを、街を守ろうと戦っている。

リアちゃんもきっと、今回は不調なだけで次回には元気一杯に悪のエイリアンを倒してくれるはず!

……ううん、ダメダメ!

悪の組織的にはこのまま魔法少女にはいなくなってもらって世界征服を目指さなきゃいけないんだから!

ごめんね、罪もない魔法少女達、街の人達。

私達の仕事のために犠牲になってもらっちゃって…。


「……さん、さなぎさん!」

「あっ、はい。なんですか?パシリさん」

考え事に夢中で呼ばれていることにまったく気がつかなかった。

「それは四天王の役職名なのでさなぎさんには本名で呼んでほしいというかなんというか……」

パシリさんが赤くなってもじもじとしだす。

「はい?」

「あの、今回の祝勝会、さなぎさんも参加されますか!?」

「いいえ、あまりああいったお酒の場は好きではありませんし、今回の報告書を纏めませんといけませんから…。何しろ初の快挙ですからね!任せてください!パシリさんの活躍はきっちり記載しておきます!」

にっこり、業務用の笑顔で対応する。

この笑顔、わりと評判がいいんだ。安心するって言われている。

「そうなんですね……あと、俺の活躍見ててくれて嬉しいです!ありがとうございます!」

「いえいえ、仕事ですから。祝勝会、楽しんでくださいね」

言うと、パシリさんは固まった。忙しない人だ。

でも、いきなり雲の上の存在の四天王さんに話し掛けられるなんてびっくりした~!

社交辞令、きちんと言えたかな?

パシリさんは何故か肩を落としてみんなの輪の中へ戻っていったけど、怒られなかったから大丈夫だよね。


勝つ人もいれば負ける人もいる。

こちらは祝勝会をやるみたいだけど、魔法少女達はなにをして過ごしているんだろう?


少し心配になりながらも、報告書を纏めるために空白のパソコンと向きあった。

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