第11話 悪の組織にて2
就活に並々ならぬ憎しみを持つ魔法少女以外にも魔法少女が増えてきた。
こちらも悪のエイリアンを強くする開発を強化してみたり、魔法少女の分析をしたりしている。
さなぎは今日も孵化せず地道に働いている。
「ただいまー」
返事なんてない、一人暮らしのアパートにいつも通り一応言ってから部屋に上がる。
ポストに入っていたDMとかをちらりと見ていたら一通違うのが混じっていた。
「同窓会のお知らせ…」
悪の組織に勤めているなんて言えずに、普通の会社で事務員をしていることにしているんだよね。
毎回本当のことが言えずに罪悪感があるけれど、ここのところ忙しかったしいい気分転換になるかな。
日程も日曜日だし、ちょうど休みの日だ。
参加に丸を付けて返信した。
何を着ていこうかな。
新しく買ってもいいかな。
久々の特別な外出に心が躍る。
同窓会、楽しみだな!
同窓会当日。
ホテルの広間を借りて行われた同窓会は私が着いた頃にはなかなかの人数が集まっていた。
立食パーティー形式でみんな仲が良かった子達で集まって喋っていた。
前回やったのは数年前。
色々変わった人もいる。
未だに連絡を取り合っている子もいるけれど、段々と疎遠になりがちだった仲が良かった友達とも久々に会えた。
懐かしさにあの頃が思い出される。
あの頃はさなぎから蝶になれると思っていた。
でも、未だにさなぎはさなぎのまま。
なんの変わりもなく平凡に毎日を過ごしている。
しばらく仲の良かった友人と話していて、一度食事を取りにバラバラになる。
ふと懐かしい、会いたかった人を見掛けて思わず挨拶をした。
「山田さん!久しぶり!」
「さなぎさん!久しぶりー!」
山田さんは私のことを下の名前で呼んでくれる。
本当は好きじゃなかったさなぎの名前。
山田さんはかわいいねって言ってくれた高校時代を思い出す。
山田さんこそ真理亜なんてかわいい名前なのに。
さなぎがかわいいと、そう言ってくれたのは山田さんだけで、私は山田さんに憧れのような好意のような感情を抱いている。
しばらく談笑していたが、職業病みたいなものでつい仕事の話をしてしまう。
「そういえば、最近の魔法少女の活躍すごいよね」
「…………うん、そうだね……」
一瞬山田さんの目が死んだかのようになったけど、気のせいだよね!
「テレビ中継見ていたんだけどさ、どんどん魔法少女が増えていっててあんなに若くて可愛い子達が頑張っている姿を見ると、こっちまで頑張ろうって思えるよね!」
「……真実を知らないって、幸せだよね」
山田さんの目がどんどん死んでいく。
「山田さん、どうしたの?大丈夫?」
「うん!大丈夫!実は転職したてで、職場が大変でさ、ちょっと疲れているのかも」
そんなに大変な職場なんだ。
私みたいに魔法少女壊滅とか悪のエイリアン強化とか変な仕事じゃなくて真っ当な仕事なんだろうな。
ビル破壊の調査員とかかな?
最近の魔法少女はアグレッシブだから…。
「そっか、頑張ってね」
安易な言葉しか言えない自分が恥ずかしい。
でも山田さんはにっこり笑ってくれている。
「ありがとう!頑張るね!」
ああ、山田さんはやっぱり優しい。
私もこういう人物になりたい。
私が感動していると山田さんは他の人に呼ばれて「ごめんね」と謝ってくれて別れた。
本当はもう少し話をしたかったな。
後ろ髪を引かれながらも私も別の友人に声を掛けて同窓会という久々の再会を楽しんだ。
「ただいまー」
自宅に帰ると一気に現実に戻される。
明日からはまた悪のエイリアンの強化や魔法少女のデータを纏めて壊滅させる作戦を練らなくてはいけない。
「さて!魔法少女を潰すために開発された新兵器のお披露目のために明日も頑張りますか!」
小さく、えいえいおー!と自分を鼓舞して明日も仕事を頑張ります!
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