第10話 新人スカウト作戦スタート!

「そういえば、最近ボスを見掛けませんけどまたパチンコに入り浸っているんですか?」

ここ数週間、居る方が珍しくなってきているボスのことを思い出す。

「ボスなら山田真理亜くんだけだと魔法少女として不安だから人員を増やせないか上と掛け合うために奔走しているよ!」

「は?」

人生で一番低い声が出た。

ワンオペ魔法少女でしんどいのは私ですけど?

シフトのほとんどが私ですけど?


思わずキュートさんに八つ当たりをして、我に返ってキュートさんに謝罪する。

今のはキュートさんは悪くなかった。

いや、いつも言動がひどいけど。

「ボクは元々愛玩用に改造された生命体だかね!どんな扱いを受けても平気なようになっているのさ!」

そう言われると、今まで散々キュートさんを締め上げてきたのが虐待に感じられてしまう。

「キュートさん、今までひどい扱いをしてごめんなさい…これからは少しは優しくしますね」

「ほら!この話をすると大体みんな殊勝な態度になってちやほやされるんだよ!愛玩用に生まれてきてよかった!」

「キューーートさん!!!」

思わず締め上げた私は悪くない。

「そういえば…わりとなんでも食べるのも…」

「手間が掛からないように雑食に改良されているよ!」

どうしよう。キュートさんの生態に闇しか見えてこない。




でも、エイリアンて不思議だ。

なんで地球に来るようになったんだろう?

いいエイリアンがいるのも、悪いエイリアンがいるのも、人間もそうだからなんとも言えない。

悪いエイリアンは地球征服を狙っているんだろうか?

確かに人に危害を与えたり器物破損をしたりして迷惑行為を繰り返してはいる。

でも、それは地球征服というには些細なものだ。

悪エイリアンの目的とはなんなんだろう?

そもそも、悪エイリアンと戦うのに魔法少女である必要性はあるんだろうか?


「キュートさん、悪エイリアンと戦うのに魔法少女である必要があるんですか?軍とかの方が適しているんじゃないんですか?」

素朴な疑問をキュートさんにぶつけるとキュートさんは呆れた表情で言った。

「やだなぁ、山田真理亜くん。悪エイリアンと戦うのは魔法少女。それが世の掟さ!」

うーん、さっぱり分かんないな!

「そもそも、キュートさんはなんで地球で魔法少女に力を貸そうと思ったんですか?」

「魔法少女に力を貸す愛玩エイリアン…売れる!って思ったんだよ!愛されるって!」

うーん、発想が屑!

「ボクは愛玩エイリアンだからね。愛されなくちゃ生きていけなくなるんだ」

「えっ」

「だから山田真理亜くんの過激なスキンシップも愛情の一環としてとても大切な生きる糧になっているんだよ!」

どうしよう。

今更キュートさんから闇が見えてきて怖い。

「……いや、でもいつものは愛玩とか可愛がるっていうより、ムカついて虐めている感じが強いような…」

言ってて申し訳なくなってくる。

キュートさん相手なのに。

「それでも、無視されるより構ってくれる方がボクらはエネルギー源として受け取れるんだ!ありがとう、山田真理亜くん!」

そう言われるともう少しだけキュートさんに優しくしようと思える。

「婚期も逃して無職で誰からも相手にされない山田真理亜くんが相手でも、相手にしてくれるのはとても嬉しいよ!!」

「キューーートさん!!」

エルボーがキマッてしまった。

すべてはキュートさんが悪い。




そうやってキュートさんとじゃれあっているとボスが駆け込んできた。

えっ?ミサキさんと直人くんとアキさん?

ミサキさんが湯布院で直人くんが一眼レフ持って同行してアキさんは近所のスーパーでピーマン相手に説教してますが、なにか?


「ボス、そんなに慌ててどうしたんですか?」

「トイレなら通路を右だよ!」

うん、トイレじゃないかな、キュートさん!

「上層部から新しい魔法少女をスカウトする許可が下りた。今度こそ!若くてかわいい素直な女の子を魔法少女にスカウトしたい!みんな!頑張ってスカウトしよう!」

「諸々差別反対アッパー!」

魔法少女に変身していないにも関わらず、なかなかの渾身のアッパーがキマッてしまった。




「それはそれとして、新しい魔法少女をスカウトするのは賛成です!私も早くワンオペ魔法少女から解放されたいですしなんなら辞めたいですし!」

頷いて同意を示す。

早く新しい生贄…違った!魔法少女をスカウトして辞めたい!

今のままだと他のメンバーが基地に来ないから辞めるに辞められない!

なんでみんなが魔法少女の契約交わすときに自由を許してるの?

ちゃんと働かせろ!給料分は働け!!

「山田真理亜くん!君は魔法少女を辞めたいと思っていたのかね!?何故ここに勤めてくれる魔法少女はみんなすぐに辞めたがるんだ!!」

「主に上司とかわいい系マスコットエイリアンのせいじゃないですかね?」

なんで自覚ないんだこいつら。

思わずジト目で見てしまう。

「とりあえず、どこでスカウトします?若い子集まるところにでも行きます?」

いやでも、若い子が集まるところってどこだ?

わからない…。若い子って今どこにいるの?

「若いといっても未成年者は問題があるからな…。直人くんは知らない間になってたからノーカンとして。だが35歳無職に手を出すとふてぶてしいから大人しくて仕事をきちんとしてくれて優しい子がいいな」

「私だって仕事きちんとこなしてますけどぉ!?」

ふてぶてしいと優しいは今までのボスとキュートさんの扱いで自信がないので自重しておく。

「それじゃあ、20歳~24歳の子を重点的に探してみようよ!今度も一応職業紹介所で待ち伏せしてみよう!」

キュートさんの提案に頷く。

切羽詰まった無職なら例え職業が魔法少女でも受け入れるに違いない。

私のように。




こうして、新しい魔法少女をスカウトすることになった。


その時は思っていなかった。


人選失敗しまくっているこの状態で、まともな子が魔法少女になってくれるはずがなかったということを。

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