第9話 ピーマン撲滅のアキさん登場
「おはようございまーす」
言いながら基地内に入ると空いていたデスクにでかいピーマンがいた。
語弊がないようもう一度言おう。
でかいピーマンがいた。
あれこれデジャヴ?
自分でも何を言っているか分からないけれど、多分ピーマン型のエイリアンだろう。
と、いうことはこの方(?)がピーマン撲滅のアキさん?
えっ、自身がピーマンなのにピーマン撲滅するの!?
近くにいたキュートさんを呼び寄せて尋ねる。
「キュートさん、もしかしなくともあの方がピーマン撲滅のアキさんですか?ご自身がピーマンなのにピーマン撲滅を掲げてるんですか?」
「……山田真理亜くん、ピーマン撲滅のアキくんの前で気軽にピーマンの話題をしてはいけない。基地が爆発する」
「なんで!?えっ、そんなレベルで嫌いなんですか?」
自分の姿はピーマンなのに!?
「そもそも彼はピーマンではなく、ピッマーン星から来たピッマーンのアキさんだ。ピーマン撲滅には深い訳があるんだ。丁重に扱ってくれたまえ」
なんだそれは。
ピッマーン星とかあるんか。
エイリアン、奥が深いな。
ていうか、知りたくもないエイリアンとばかり知り合ってしまう。
まともなエイリアンはいないのか?
……人間すらまともなのいないから無理ですよねー。知ってた!
深呼吸をして落ち着かせ、そこで三崎兄弟の姿が見えないことに気がついた。
「そういえば、三崎兄弟は今日はまだ出勤してないんですか?今日はシフト入ってましたよね?」
「二人とも今日は休むと連絡が来たよ!」
「あっ、そうなんですね」
何日休む気だよあの兄弟。
「ちなみミサキくんは秘湯を探しに行くと言って休みで、直人くんは兄さんが来ないなら行かないとの連絡が来ているよ!」
「本当に自由だな!あの兄弟!!」
ミサキさんに至っては経費で温泉巡りを許されていて、弟の直人くんは兄のスケジュールに合わせることをゆるされて魔法少女になっている。
こんなのずっとワンオペ確定じゃん!!!
失敗した!!新人スカウトしたのに新人が最悪すぎた!!ブラコンは使い方によっては戦力にならない!
今頃兄弟で秘湯を探しているのかと思うと負の感情が爆発しそうになる。
ピーマン撲滅のアキさんもピーマン撲滅以外したことないって言うし、なんなんだよ魔法少女!!人選は良く考えろ!!
ちゃんと考えて雇え!!!
どこにも雇ってもらえず職業紹介所に日参していた私が言うのもなんだけど!!
まともな会社と人間とエイリアンはこの世にいないのか!?
そこでちらりと緑の物体が視界に入る。
そうだ。それはさておき、同僚として社会人として、挨拶は基本だよね。
ピーマン撲滅のアキさんとは初対面だから挨拶しておかなくては。
「ピーマン撲滅のアキさん、初めまして。おはようございます。山田真理亜と申します。魔法少女のリアとして活動しています。これからよろしくお願いします」
アキさんは椅子から立ち上がり挨拶を返してくれた。
「これはこれはご丁寧に。私はピーマン撲滅のアキとして活動しています、アキです。ピーマンのことを許せませんが、よろしくお願いします」
ピーマン撲滅したい以外は普通ぽいエイリアンだな。
……いや、ピーマン撲滅したい魔法少女ってなんだ?
危ない…危うく流されるところだった…。
やっぱりここは変な人しかいない。
馴染まないうちに次の転職先を探さなきゃ!!変人に慣れてしまう!
アキさんにピーマンの話題を振ったらいけないらしいから適当に話題切り上げて求人探そう。
「それじゃ、お互い頑張りましょうね!」
「実は私の星のピッマーンは、この星のピーマンと似ているのですが、味がまったく違うのです」
「ほうほう」
えっ、突然の自分語り始まっちゃったんだけど?付き合わなきゃだめ?
えっ、まじでピーマンの話題NGじゃないの?自分から振るのはいいの?
なんだこのピッマーン星人。
「ピッマーンは甘くて美味しくて子供にも大人気なのに、この星のピーマンは姿形だけが似ているだけで、苦くて子供にも大不評…このままでは、ピッマーンまで風評被害でピッマーンが子供達に嫌われてしまう!」
「なるほど」
まあ、自分の星で慣れ親しんだものだと思って食べてみたらまっっったく違った味ならびっくりするよね。
私も子供の頃はピーマン嫌いだったな~。
あの独特の苦味がちょっと…。
食べられるようになったら大人になった感じあったっけ。
「そこで思ったのです。苦いなら、滅ぼしてしまえピーマンを、と」
「発想が過激!!!」
やっぱりろくでもないじゃん!!!
途中まで同意仕掛けたわ!危なかったー!
「いや、なにもそれで撲滅までしなくても…」
「何を仰います!!ピーマンの存在を許したらピッマーンの存在も危うくなる!!許すまじピーマン!危険な芽は早く摘むに限るのです!!!」
いや、ピーマンだいぶ地球に馴染んでるけどな?
むしろエイリアンのピッマーンの方が馴染みがないからな?
言うに言えない、アキさんの迫力で。
どんだけピーマン憎んでいるんだ…。
そのまま延々とアキさんからいかにピッマーンが優れているか、ピーマンがダメかを聞かされた。
なんかもう好き嫌い激しいのの過激派なだけじゃないかな?
ちなみにキュートさんからは哀れみの目で遠くから見られていた。
助けろ!!
私がそろそろ立ちっぱなしが辛くて自分のデスクに戻り座りたくなってきた頃、警報音が鳴った。
初めて警報音が鳴ってよかったと思えた!
ありがとう!悪エイリアン!今から倒しにいくけど!!
ピーマン撲滅以外に興味はないというアキさんを引っ張って現場まで走る。
給料分たまには働け!
そもそもピーマン撲滅にしか興味がないなら魔法少女になるな!
あれか!?魔法少女の力でピーマン撲滅する気なのか!?
さすがにそれは魔法少女的にアウトだぞ!
度を越したブラコン並みにアウトだぞ!!
現場に辿り着き、アキさんと揃ってゴテゴテのステッキを天へと掲げる。
「ピーマン!許すまじ!!」
あっ、やっぱ変身の掛け声はそっち系なんですねー。
納得しながら自分も「魔法少女のこんちきしょーーー!!」と叫んで変身した。
うん。掛け声がまともな魔法少女なんて存在しない。
アキさんがピーマンの形から人型の美少女へと変身していく。
そのイメージカラーはピンクだった。
……いや、なんでだよ!!!
あんだけ全身緑色ならイメージカラーも緑じゃない!?
なんで主役カラーのピンク!?!
しかも顔面も主人公顔でひらひらふりふりが増してロリータ調でかわいい!!
ピーマン撲滅したいだけなのに!!
外見はかわいいに全振りしている!!!
なんでやねん!!!
こちとら目を逸らしたくてずっと言わなかったけど茶色だぞ!!
茶色がイメージカラーの魔法少女いるか!?いないでしょ!?
シックって思おうとしたけどみんなかわいいじゃん!!!
なにこれいじめ!?35歳への差別!?
35歳でもピンクやオレンジや水色や青を着てもいいと思います!今時はそういう差別流行らないよ!!!
私が一通り憤ると内から新たな力が目覚めた気がする。
「年齢性別種族趣味性癖差別反対トルネード!!!」
なんかとんでもなく大きいトルネードが悪エイリアンを巻き込んだ。
なんならそこら辺巻き込んだ。
巻き込んだのは多分、差別するなにかだろう。多分。知らんけど。
アキさんが変身した意味なくなっちゃってメンゴだけど、美少女魔法少女の姿のまま八百屋のピーマンに説教していた。
店主さんに謝罪しながら回収して帰った。
早く転職するか新たなまともな魔法少女を仲間にしないと私の酒量が増えてしまうな!
なんとかしないと!!
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