第4話 なにはともあれ

「いやー。それにしても激しい戦いだったね」


 とケイフウが話し始める。


「そうですね。――シエラ。悪かったな。やりすぎてしまった」


「いえ。私はまだまだ未熟だということが痛感できました。それより、本当に私の勝ちでいいのでしょうか?」


「うん。相手にギブアップを宣言させたわけだからね」とケイフウは軽やかに答える。


「そうですか……。しかし、なぜエイダンさんはあそこでギブアップを宣言したんですか?」


「なんでだろうな?」とエイダンはそっけなく答える。


「特に理由はなかったんですか……?」


「まあ、とにかく、終わったことだ。この話はもう、やめにしよう」


「うーん」


「納得いってないみたいだね?」とケイフウはシエラに問いかける。


「そうですね。白黒はっきりさせたいというか、なんというか……」


「そういうことなら、また戦うのはどうだ? もちろん、本気で」とエイダンは微かに笑みを浮かべながら言った。


「いいですね!」


「よし、決まりだ」


「いい感じに話がまとまったみたいだね。よかった、よかった。――そして話がまとまったところで、ちょうど秘密基地に到着だ」



 シエラたちは秘密基地に着くと、エイダンとは別れ、シエラとケイフウの2人だけで事務室へ移動した。

 

「では、席についてくれ」


「はい」


「……ふう。ええっと、それじゃあ仕事の説明を始めるね。仕事はいたって単純。討伐の依頼をされた魔物を倒しに行くこと。それで、報酬は……」


 とケイフウはシエラに仕事の説明を始めた。


 シエラは、このギルドが怪しいギルドではないだろうことは、これまでの時間の中で雰囲気からなんとなく感じ取ってはいたが、説明を聞いたうえでも、やはりこのギルドは怪しいギルドではないだろうと思えた。


「……という感じなんだけど、問題ないかな?」


「はい。問題ありません」


「それじゃあ、これで説明は終わりだね。――あっ、そういえば、シエラくんはどこに住んでるの? ここから近い?」


「私は旅人ですので宿を転々としていました」


「あっ、そっか。そういうことならさ、ここに住むのはどうだい?」


「この秘密基地に、ですか?」


「この秘密基地は古い家だけど、住むには不便のないと思うよ。ああ、それと、もちろん家賃はいらないよ。どうかな?」


 シエラにとってこの提案はありがたいことだった。宿代は案外、馬鹿にならないとシエラは常々思っていたのだ。


「ぜひ、そうさせてください」


「よし、決まり! それじゃあ――」


 とケイフウが何かを言いかけたところで「ただいまー」という声が玄関の方から聞こえた。



「おっ、いいところに。他のギルドメンバーが任務から帰ってきたみたいだ。シエラくん。チョット待ってて」


「わかりました」


 ケイフウは席を外し、シエラはその場で待った。



(他のギルドメンバーはどんな人なのでしょう)


(エイダンさんのようなクールな人たちでしょうか)


(うまくお話できますかね)


(ふう。緊張します)


 とシエラがドキドキしながら待っていると、トタトタという小走りな足音ともに、1人の少女がシエラのもとに現れた。



 その少女は金髪で、その髪を紫色のリボンで結び、ツインテールにしていた。また、小柄で、10代前半くらいに見える。そして、左右の目の色が異なっていて、左の目が紫色で右の目が黒っぽい灰色をしていた。



「はじめまして。あなたがシエラさんですか?」


「は、はい」


「わたしはリアンです。よろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」


 シエラが緊張しながらも挨拶を交わしていたところ


「リアン、待ってよぉー」


 という可愛らしい声とともに、1人の女の子が現れた。


 その女の子は、頭にはピンクのリボンをカチューシャのようにつけていた。そして、柔らかそうな雰囲気を醸し出していた。


「あっ。あなたがシエラちゃん?」


「はい」


「ワタシはエマだよ。よろしくね!」


「よろしくお願いします」


 挨拶を終えたころ、どこからかエイダンがやって来て「2人ともおかえり」とエマとリアンに声をかけた。



「ただいまです」


「ただいまー」



 続いて、ケイフウが戻って来て「みんな仲良くするんだよー」と嬉しそうに言った。



「ギルドメンバーは、これで全員ですか?」


「いや、実はまだ居るんだけど、今は長期の任務やらなにやらで、ここには居ないから、戻ってきたときに改めて紹介するよ」


「わかりました。――みなさん。これからお世話になります。どうぞ、よろしくお願いします」


 とシエラは改めて挨拶をした。



「うん」


「ああ」


「はーい」


「はい」


 メンバーが口々に答える。




「よーし! 頑張るぞー!」


 これから、シエラのバスターバスターでの生活が始まる。

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