第15話
そうか、俺はさっきから自分より小さな生き物のことばかり考えてるぞ。
もっと大きなヤツを思い浮かべなきゃ。
たとえば、鯨。
こいつはホントに大きいぞ。
しかも、とてつもなく強い。
なにしろ、あの広い大海原を、何の道具も使わず、自分の力だけで、隅から隅まで泳ぎ回ってしまうんだから。
その上、美しくて気高い。
人間なんか、彼らよりちょっと利口かもしれないが、それだけだ。
彼らが堂々と波間を漂い、悠然と潮を噴いている姿を想像してみろ。
これ以上の生き物がどこにいる?
浩史はずっと前にテレビで見たビールのCMを思い出した。
それは、一頭の巨大な白鯨が、潮を噴きながら青い空を雲の流れに身を任せて悠然と漂っているというものだった。
彼はその映像がとても気に入っていた。
長い息を吐き、浩史は小さく首を振った。
そして、図書館へ行って何か本を読もうと思った。
部屋へ戻りたくなかったのだ。
何故なのかは自分でもよくわからない。
玄関で白いスニーカーをつっかけると、ドアを開けて表へ出た。
蒸し暑い、真夏の昼下がりだった。
ガレージの奥で眠っていた黄色いスクーターを叩き起こし、眩しい陽射しの下へ引きずり出した。
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