バツイチ女性恐怖症の僕を助けてくれたのは、元セクシー女優の幼馴染でした。
第10話 ラブコメには入浴シーンは必須と聞いたんですがこれってトリビアになりませんか?タモリさん高橋さん八嶋さんよろしくお願いします
第10話 ラブコメには入浴シーンは必須と聞いたんですがこれってトリビアになりませんか?タモリさん高橋さん八嶋さんよろしくお願いします
「ただいまー」
仕事を終えて自宅の玄関を開けると、葉月が出迎えてくれた。
「おかえり。今日もお疲れ様」
「ありがとう。いままで家に帰ったところで誰にも出迎えてもらえなかったから、嬉しいな」
「えへへ……、なんだか新婚さんっぽくていいね」
そう葉月が言うと、彼女はしまったという表情を浮かべた。
「……ごめん、私余計なこと言ったかも」
「ん? 何が?」
「気にしてないなら、いいや。なんでもない」
僕は軽く首を傾げる。今の会話に何か変なところがあっただろうかと、ここまでの発言を鑑みる。もちろん、二人とも変なことは言っていない。
何の問題もないのであれば、気にすることはない。そう思った僕は、あまり深く考えず部屋に上がって上着をしまった。
「ごはんにする? お風呂にする?」
「さすがにお腹ペコペコだからごはんにしようかな」
テーブルには既に晩ごはんが用意されていた。葉月は結構な料理上手なので、いつも存分に腕をふるってくれる。
初婚のときだったら夢でしか出くわさないような光景であったので、気持ちだけで僕はもう嬉しい。
「もうっ、ごはんとお風呂ときたら次があるでしょ?」
「次って?」
「そりゃ……、私にする? って訊くに決まってるじゃん」
僕をからかう気満々で葉月はそんなことを言う。いざ迫られてしまうと僕は弱いが、さすがに温かい食卓を前にして性欲を優先するほど今の僕は満腹ではない。
「す、するから……! で、でもせっかく葉月が作ったごはんが冷めちゃうし!」
「ふふっ、そう言うと思った」
「もう、そんなにからかわないでよ」
「えー、動揺するとわかってるのに面白いからいいんじゃん。こんなにわかりやすいリアクションしてくれる人、そんなにいないよ?」
それは褒められていると言っていいのだろうか。まあ、少なくとも葉月は喜んでいるようなのでそれはそれでよしとしておこう。
二人で食卓を囲う。お互いの話をしながらのんびりと過ぎていくこの時間が僕は好きだ。
「へえー、そのエンジニアの子が社長さんのこと好きなんだ」
「うん。随分惚れ込んでいるみたいだったよ。でも、会社が出来てしばらく経つのに、なんで進展していないんだろうなって」
いつの間にか羽山と釘崎の話になった。僕はさっき感じた疑問をそれとなく葉月にも投げかけてみる。
すると、葉月はなぜか少し端切れ悪く答えを返してきた。
「それは……、関係が変わっていくのが怖いんじゃないかな」
「でも羽山は結構熱烈に好きアピールしているよ? 変わることを怖いなんてみじんも思ってない気がする」
「そうじゃなくて、社長さんの方だよ」
「釘崎が?」
あの自由奔放な釘崎に限ってそんな繊細なことを考えるとは思えなかった僕は、葉月のその言葉にすんなり納得できなかった。
「会社を立ち上げた仲間なんでしょ? 色恋沙汰で会社が傾く可能性があるなら、関係が変わってしまうのは怖いと思うよ」
「確かにそう言われればそうかもだけど……」
「取り返しがつかなくなってからじゃ遅いから。そうなるくらいなら、何もアクションを起こしたくないって気持ち、ちょっとわかる」
葉月はなぜか少し物憂げにそう言う。珍しくやや消極的なことを言うので、思わず僕は何かあったのかと訊いてしまった。
「葉月でもそういうことあるんだ。……あっ、いや、別に普段が能天気だなって言ってるわけじゃなくて、いつも積極的でポジティブだから珍しいなって」
「そりゃ、私も人間だから落ち込んだり自信がなくなることはあるよ。それに、これはあくまで私の予想だから」
「そ、そうだね。本当のことは本人たちから聞かないとわからないもんね。ハハハ……」
僕は苦笑いをしてこの話を無理矢理終わらせた。これ以上話すのは何か良くない気がしたのだ。
それよりも目の前にある葉月が作ったご馳走に集中しなければ。
食事を終えて僕は食器を片付け終えると、お風呂の給湯ボタンを押した。
ものの10分程でパッフェルベルの『カノン』のメロディとともに、「お風呂が沸きました」という録音されたアナウンスが流れる。
「葉月、先に入る?」
「一太郎が先に入りなよ。疲れてるでしょ?」
「そう? じゃあお言葉に甘えて」
僕は浴室に行くと、一番風呂の湯船に身体を沈めた。今日も寒かったので、冷え切った身体にはこのお湯が染みわたる。
すると、なぜか脱衣所からは布の擦れる音がするではないか。
「葉月? どうしたの?」
「やっぱりたまには一緒に入ろうかなーって。いいでしょ?」
「い、いいけど……、珍しいね? 何かあった?」
僕は割と早風呂だけれども、葉月は化粧を落としたり髪の手入れをしたりと入浴に時間がかかるので、普段は葉月と一緒にお風呂に入ることはあまりない。
それでも一緒に入りたいと言ってくるということは、何か理由がある気がする。
「何かないと一緒に入っちゃだめ?」
「い、いや、そんなことないけど」
「じゃあいいじゃん。たまには背中流してあげるよ?」
僕は葉月が背中を流してくれるシーンを想像して悶々とし始めた。
葉月……ではなく、新斗米もこの出演作品でも、お風呂でサービスするシーンがいくつかある。何度もお世話になった作品なので、それと同じようなシーンがこれから始まると思うと、既に呼吸が荒くなってしまっていた。
「それじゃあ失礼しまーす」
脱衣所で一糸まとわぬ姿となった葉月が浴室の扉を開ける。
何度も見たことがあるはずの身体。なのに僕はやっぱり恥ずかしくて、葉月のその綺麗な身体を直視することができなかった。
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