第43話 震える手
「すげえな!直角だぞ!」とテージョ。
「てめえが言うな!」とソミュール激怒。
エクスプロージョン・デ・エア!
テージョはその魔法攻撃を棍で斬る。
「うっそ!」とソミュール。
既にテージョは突っ込んでくる。
ディフェーサ・ペルフェット!
「ぶっ飛べ!」とそれに風魔法を組合わせる
エクスプロージョン・デ・エア!
「ぶったたく!」とテージョは棍を上から
思いっきり振り下ろすと
魔法防壁と合わさり、虹色の光が広がる。
その時声がかかる。
「待つにゃ!その試合待つにゃ!」と。
その声に二人は反応し、手を止める。
「間に合ったにゃ」とスコティは
息を切らしながら言う。
「二人はこれ以上戦ったらだめにゃ。」と。
「なんで!」とテージョ。
どっちが勝っても負けてもいけないからです。
それがたとえ、模擬戦としても。
ソミュールは私の加護を受けています。
そして貴女は竜の加護、いえ、化身となっています。
私達の立ち位置を考えれば、そうなのです。
「ふん。私には関係ないけどね」と
棍を肩に担ぐテージョ。
その時、激しい鼓動が、動悸がテージョを
襲うと。
「すまぬな、テージョ。エルピスの
言う通りだ。」と炎竜の声が頭に響く。
テージョを通して炎竜がエルピスに語りかける。
久しいな、エルピス。お前の意見には
大賛成だが・・・。
この試合を無効にしたいが、残念ながら
どちらかが勝たねばならぬ。
そういう人間の世界の決まりらしい。
どうだろう。ここは借りと思って
テージョを勝ち上がらせては貰えないだろうか。
エルピスはそれに答える。
テージョの力量ならばアノ勇者に勝てると?
エルピスはテージョを見る。
そして今度はソミュールを見る。
「ソミュール、お前の負けにゃ」とスコティ。
「そうね、私にはもう魔力が残ってないしね」
「受け入れるわ」とソミュールはあっさりと引く。
「おいおいおいおい!これからが
楽しいところじゃねえか!」とテージョ。
「あんたみたいに脳が筋肉で出来てないのよ、
私は。エルピスが引けと言ったら引くわ」
とソミュール。
すまんな、ソミュール。と炎竜。
これは借りだ。必ず返す。
「ジヴァニアに勝てるの?テージョなら」
とソミュール。
「勝てる」と炎竜とエルピスは言う。
「私は?」とソミュールが聞く。
「残念ながら、まだ勝てない」と
エルピス。
「どうやったら勝てるの?」と
エルピスに聞くソミュール。
「吸血族を辞める気があるならば
勝てる。」と。
「わかったわ、辞める。だから」と
ソミュールが言うと
「ならば再度、私の所へ来い」とエルピス。
「あはははは」と炎竜は笑う。
「実に面白い!面白いぞ!」とも言う。
ついに作るのか!エルピス!
お前の眷属を!お前の化身を!
光の存在、妖精の使いを!
「眷属じゃないにゃ。化身でもないにゃ。
そう、人間的に言えば『聖女』にゃ」と。
「すげえな!ソミュール!聖女だ!
・・・ところで聖女ってなんだ?」と
テージョ。
「さ、さぁ。なんか魔法が強い人?」と
ソミュール。
そして「こうさーん」とソミュール。
勝者 テージョ
「まぁ介入があったけど、盛り上がったから
いいか」とアスティ。
「おもしろいなぁ。実に」とバーボン。
「本当に俺達の時代は終わったんだな」とも言う。
「そうだ、もう私達の時代ではない」とウォッカ。
「今度の戦いが終わったら、一緒に暮らすか」
とポツリというバーボン。
「そうだな、そうしよう」とウォッカは言う。
「どっちが来ても全力で行く」とも言った。
そして明日の決勝は
ジヴァニア 対 テージョ となる。
各々がその夜を過ごす。
ジヴァニアは月光に下で剣を振る。
ウォッカも月光の下で剣を振る。
テージョは公園のベンチに寝転がり
月を見上げ、手を上に伸ばす。
月を掴もうとするテージョ。
「なんだ、私の手。はははは。
震えてるじゃねえか」と笑う。
そして翌日の昼。
「どうなっている!どっちが優勢だ!」
「ジヴァニアだ!2対8だ!」
「ジヴァニアに全額だ!」
「おれはテージョに全額だ!」
チェスキーはテージョに
「前評判はジヴァニアだそうよ?」と。
それを聞いてテージョはチェスキーに
ずっしりと金貨が入った袋を渡す。
「全部、私に賭けろ。儲けさせてやる」
とテージョが言うと
「もう賭けているわよ。全額」と
笑いながら言う。
「じゃあこれも賭けておくわ」と
言いながら袋を受け取る。
一方、ジヴァニアの控室。
「せっかく、ソミュールと戦えると
思っていたのに」と膨れているジヴァニア。
「そんなこと言ったら足元をすくわれるわよ。
テージョは強いわ。」とソミュール。
「互角だったじゃない」とジヴァニアは言うと
「また、そんな嘘ついて。一方的だったじゃない。
負けよ、あのまま戦っても」とソミュール。
「勝って母様と、ウォッカ様と戦いなさい。」
とジヴァニアの背中を叩き気合いを入れる。
「おうよ!まかせろ!」と頬を目いっぱい叩く
ジヴァニア。
そして会場に響く声。
「両者入場です」と!
そして会場は歓声に包まれる。
ゆっくりと歩きながら入場する二人。
既にジヴァニアの眼が青く光っている。
そして体を薄桜色の闘気が纏っている。
歩きながらテージョは言う。
「おいおい、やべえな。勇者様は。
もうビンビンくるぜ」とニヤリとする。
テージョの手が、棍を持つ手が震えている。
テージョは立ち止まり、大きく息を吸い
そして吐く。そして目を閉じる。
試合開始!
その声と同時に目を閉じたまま
その場で棍を横なぎするテージョ。
それを両手剣で受けるジヴァニア。
「やっぱすげえな!お前の踏み込みは!」
眼を閉じたままテージョは言う。
「あんたこそ!そんなもん食らったら
頭がぶっ飛ぶわ!」とジヴァニア。
ジヴァニアが一旦引いたことを感じた
テージョは目を開ける。
その瞳は金色の彩光、赤い瞳孔をしていた。
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