第5章 最終話 15歳の少女

勇者ジヴァニア 対 竜の化身テージョ

この戦いは様々な意味でのちの世に

名を残すこととなる。


ジヴァニアが負けた時、会場から

ため息や罵声が飛び交った。


それは人間の信仰するエアストが

負けたことを意味するものであったからだ。

しかしジヴァニアはすがすがしい顔で

テージョと握手を交わし控室に戻る。


控室にてジヴァニアはソミュールに縋り

泣き崩れたという。


その後の試合

竜の化身テージョ対魔族ウォッカ

この試合もある意味で語り継がれる試合となった。

ウォッカが負けたことにより

会場は歓声に包まれる。

「ウォッカに勝つほどの者ならば

 勇者が負けても仕方ないのではないか」と

方々で声が聞こえる。

しかし一方で

「ウォッカが負けたのは娘を庇う為ではないか」

「なぜ二刀流ではなかったのか」

という声も聞こえた。


ウォッカは何も語らず、この試合を持って

剣を置いた。


その後、アスティの号令の元、対抗戦は今後

「コロッセウム」と言う名称に代わり

どの国の者でも自由参加となった。これは

年に一度の赤の国の祭りとなる。


ここから数年間は

ジヴァニア、テージョ、ソミュール、そして

リスボア、ジェニエーベル、ルエダを中心に

試合が行われる。

現在の優勝回数として

ジヴァニア3回、テージョ1回、

ジェニエーベル1回となっている。


赤の国も大統領制へと移行する。

アスティは自ら身を引き

冒険者ギルドのテコ入れをする為に

ギルドマスターとなる。


青の国では世継ぎが生まれる事となる。

その子は父親に似て赤子の頃からイケメンである。

しかし、生まれた時から瞳は青く

3歳の時にはすでに父親であるコルンをも

しのぐ魔法使いとなっていた。


「皇女様、噂になってますよ?コルン様に

 家事をさせているって。使用人をいい加減

 使ってください」とお付きのモノ。

「好きでやってるんだから止めようがないわ。

 でも、いいモノよ?家に帰って誰かが居て

 そこに子供がいるって」とルナティア。


そして黄の国ではコニャックの元、

完全貴族制へと移行するが

規律を是とする貴族以外を粛正したために

住民たちからの信頼を勝ち取る。


「この人とかどう?」とマルチネ。

「俺は婚姻はしないと何度も言ってるだろうに。

 自分が孫が出来たからと言って、薦めるな。

 仕事の邪魔だ」

とコニャックは忙しそうに言う。

「子供を持ったらあなたも少しは笑い顔を

 作れるかもよ?」とマルチネ。

「俺には不必要だ。そんなモノ」と言い返す。




そして紫の国では、国主が行方不明となっている。

・・・らしい。現在、国の政を執り行っているのは

バーボンとウォッカである。


「ごはん出来たぞ?」とバーボン。

「そんなの作っている暇があったら働け」

とウォッカ。

「いいんだよ。もうほぼこの国は俺達が

 いなくても大丈夫なんだよ。

 来年あたりは引退だよ。俺も。」とバーボン。

「無職になったら別れる」ときっぱり言うウォッカ。


「だ、大丈夫です。天下り先はあります」と

焦りながらバーボンは言うと

「そんな所まで日本に似せたのか。」と呆れかえる

ウォッカ。

「冗談だよ。自衛学校の講師だ。なんだかんだで

 必要になるからな。」とバーボン。



その頃、ジェニエーベルはと言うと

実は国に帰ってきており。

「余裕こいてた!リアス!そっち行ったぞ!

すばしっこい!」と追い回しながら言うと

「無理!捕まえられない!」と逃がす二人。


「いいんですか?国主がこんなことしてて。

 たまに帰ってきたと思ったら子供と

 追いかけっことかして」とヤレヤレな表情の

リアス。「今度はどちらへ?」とも聞く。


「緑の自治区で子供が行方不明になる事件が

 多発してるらしい。そこ行ってみる」と。

「そう言ったのは俺の仕事だ。国とか関係はない。」

そうとも言うと子供たちに降参のポーズをする。

「ウォッカさんが剣を置いてから多いですしね」

とリアスも降参のポーズをする。


「じゃいってくるわ」とリアスに手を振る

ジェニエーベル。



ジェニエーベルは半年ほど前から、

人間が絡んでいる犯罪などを裏から処理を

して回っている。

特に亜人や精霊、妖精が絡む拉致事件は

何処から聞きつけるのか、周りが気が付くと

その事件は終わっていた。

「仕置人」これがその後

ジェニエーベルの二つ名となる。

勿論、ジェニエーベルと言う名前は隠されて。



場所は大きく変わり、赤の国のとある森


「これ以上、獲ったら運べないな」と少女は言う。

その少女は弓を獲物から抜くと丁寧に拭き上げる。

「よし、一旦小屋に戻って今日は寝るか」とも言う。


次の日、その少女は街へ向かう。

沢山の獲物と籠のような物を背負って。

「これだけあれば、お母さんも喜ぶ!うん!

 この食材を置いたら、冒険者ギルドに顔出すか」


その少女は宿屋へ入ると食材を倉庫に卸す。

「お母さん!ここ置いてくね!ちょっと

 冒険者ギルドに行ってくる!」そう言うと

笑顔で走り出す。


「はい、今回の依頼の品」といいながら

魔核を受付に出す。

「はい、ご苦労様。銅貨8枚ね」と言われ

その銅貨をポケットに入れる。

「にひひひひ。お母さんには内緒ね」と

手を振りながらギルドを出ようとした所で

受付の女性が声をかける。


「へレスちゃん!雨が降りそうだから、

 その傘持ってっていいわよ!

 帰すのは今度でいいから!」と言われ


へレスは大きい声で返事をする。

「ありがとう!借りていくね」と。そして、



「もう15歳なんだから『ちゃん』付けは

 やめてよね!」と笑う。
















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