第37話 熱き想い

「え?ジェニエーベル様?」と

少女は驚く。ジェニエーベルも驚く。


「ありゃ、ばれてます?」と言うと

ひれ伏そうとした少女にそんな事

しなくていいよと手を振る。


しかし少女は首を下げ続ける。

「しかたないなぁ、国主が命じる。

 普通に立って?」とジェニは言う。


「なんで私がジェニエーベルと?」と

聞くと少女は首都に言った時とか

ついつい見てしまって後を付けたりとか

していると申し訳なさそうに言った。


ジェニは笑うと、

出来れば話がしたいと伝えると

小屋の中に案内された。

「こんな所でもうしわけございません」と

少女は、もうどうしようもなく落ち込む。


「気にしないよ。ねぇ、君は

 一人で暮らしているの?」と問いかけると

首を振る少女。

少女は祖母と暮らしているらしく、その祖母は

寝たきりとなっていた。

ジェニエーベルはその祖母の所へ行く。


ジェニは少し驚く。老婆を想像していたが

まだ50歳くらいであった。

そのベッドに寝ている祖母はジェニエーベルに

気づくと「ど、どちらさまで?」と言う。


「おばあちゃん!ジェニエーベル様!」と

少女は少し声を弾ませながら伝えると

その祖母、女性は起き上がろうとする。


「そのままでいいですよ。」とジェニは

強引に寝たままにする。しかし

(寝たきりにしては顔色が良すぎる)

と不審には思った。


「何故ここに住んでいるのですか?

 首都には来られませんか?」と伝えると


「ジェニエーベル様はとても良い国を

 作ろうとしているのがわかります」

そういうと女性は話を続ける。


しかし、昔の国とは大きく違います。

昔を知る者からすれば躊躇してしまうのです。

バーボン様も居らっしゃいますし

多分、今の国造りは異世界の文化や

やり方、国政を取り入れているかと思います。


「なじめないのです」と俯きながら女性は言う。

それを聞き、ジェニは逆に聞いた。


「私は実は昔の、この国を知らないのです。

 教えていただけないでしょうか」と

優しく微笑みながら伝えた。


女性は「この立場」でしか言えないがと

前置きをし、以前の国の生活を伝えた。


そのないようを頷きながら聞き、ジェニは思った。

「中世のヨーロッパ、フランス革命とか

 そういった時代のようだ」と。


「人間の生活にはいつか必ず、改革という

 モノが発生します。それが何を、どこの世界を

 基本とするかは分かりませんが」と

前置きをすると続けるジェニ。


魔法と言う存在、今まで魔獣を倒すだけの

モノを私は人々の生活に使いたいと思っています。

他にも何かをするにあたって便利と感じれば

異世界の物も取り入れます。


「私は運命と感じています」とジェニは言い


何故私が追われながら異世界に行ったのか、

そして何故戻ってこれたのか。

それは「神」とは言いません。

運命と言うモノが示したのだろうと。


私が行う事、それは私の道です。

失敗するかもしれません。それで

国の民たちは困窮するかもしれません。


それに対して、責任を取れと言われても

全部は取り切れません。

もし死んで詫びろと言われれば

私は「そんな事でいいのか」と

喜んでこの首を差し出しましょう。


私は軟弱で一人では何もできない存在です。

しかし、多くの仲間がいます。

私について来てくれ、国に来てくれる

人達が多くいます。


それは多分、今の現状に変化を期待している

と思っています。これは多分、バーボンさんも

同じと思います。


彼は青の国と言う、完成された封建的な

国に指揮官として雇われました。

その中で多くを見てきたはずです。

そこには疑問、不満などあったと思います。


本当に正解などないと思います。

しかし「俺達は」こうありたいんだという

意思、それが私を使って叶うとしたら。

私もその考えに納得しているのであれば

私は喜んでバーボンさんに協力して

そして、私も「こうありたい」という

意思を示してこの国を作れたらと思っています。


ジェニは微笑みながら、そして真面目に

その女性に想いを伝えた。


「サンテミリオン様は本当に

 よいご子息を持たれたと思います」と

その女性は涙を流しながら言った。


そしてジェニに向かって

「是非、国主様の思うままに、気のままに

 よい国を作ってくださいまし」と。


「ところでこういった小屋をいくつか

 見かけました。実際の所、ここに住む

 本当の理由とか教えていただけないだろうか」

とジェニは顔つきを変え言う。


女性は寝たままで少し微笑み

「だそうですよ?メルト様」そう言うと

起き上がりジェニの足元に

膝まずき拝礼をする。


「確かにこういった小屋に生活するのは

 先ほど言ったような、

 今の国について行くことが

 出来ない者達がほとんどです。」


「ではそう言った者達を守る、受け入れる

 場所があったほうがいいのです」と

言うと同時に奥の扉が開く。


そこには初老と言うほどの明らかに

武人という雰囲気を持つ男が入ってきた。

そしてその男は片腕をなくしていた。


跪きジェニエーベルに言う。

「おにごっこ、おみごと!」と。


貴方はメルトさんですね。

「本当に私とミネルヴァの為に

 尽くしてくださってありがとう」と

ジェニは言うと


「ははは、私はサンテミリオン様の

 想いを実行したまでです」と

メルトは言う。


「その腕は?やはりあの時に?」と

ジェニは聞くと

「まさか。そんな下手なことはしませんよ。

 これはよくある魔獣との戦いで

 失っただけですよ」と笑う。


「ジェニエーベル様、進みなされ。

 思うがままに進みなされ。」と言うと


ついてくるもの、ついてこないもの。

ついてこないモノを考える必要は

ありません。その為にこの国には

多くの国があるのです。


私とこの女性は昔を思い出しながら

余生を暮らしたいと思います。

「案ずるなかれです。

 謀反なんて起こしません!ははは!

 しかし・・・。」


何処にも行けない者達が居るのも

事実です。

少しでもその者達の事を

頭の片隅に入れていてくだされば。


その一言を聞き、ジェニはメルトに

跪く。そして

「その想い、確かに受け止めました。」と。


メルトは驚き、そして

「国主は膝まついたらいかん!

 そう言った時は笑いながら肩を

 叩くんです!任せろっていいながら!」


そして最後に言う。


「この国を頼みます」と。














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