第36話 山小屋

数日が過ぎる


「今日で最後でしたが

 スキルは全員が覚えることが出来ます。

 人によって時期は違いますが。

 スキルには体力が必要です。

 精神力もです」とジェニエーベルは

その言葉で締めくくる。


「ありがとうございました!」と

全員がジェニに礼を行う。


練習の前にウォッカの所を訪ね

3か月後に覆面を被り代表戦に出る事を

約束していた。


へレスと一緒に宿屋へ帰る。

二人は無言だった。


宿屋につきフミージャに

「楽しかったです。もう一度言います。

 是非、母さんに祈りを捧げに来てください。」

そう言うと

「わかったよ、行くよ。」とフミージャ。

「お前は今からどこへ?」とも聞く。


「何も考えていません。取りあえず

 3か月後には首都には入ります。」

そういうと小声で

「ウォッカさんと約束しちゃったんですよ。

 ここの代表で出るって。覆面を被って」と言う。


「は!?」とフミージャは驚いて

そして笑う。


「対抗戦の間は暇だからへレスを連れて

 見に行くよ、その帰りにミネルヴァの

 と所へいこう」とフミージャ。


へレスは何か言いたそうにそわそわしている。

それを見てフミージャは言う。

「お前が今、ユウキさんについて行っても

 足手まといだ。3年ここに居て

 練習をしろ。そして体力を付けろ。

 そしたら3年後は自由にしていい。」


「まだまだ教えたいこともあるしな」とも

フミージャは言う。


そして小声でジェニに言う。

「3年後、もし目に適ったら連れて

 行ってくれないか?ミネルヴァが母なら

 私は伯母だ。」と。


「じゃあ3年後に迎えに来ます。

 断れないじゃないですか、その一言で」

と苦笑いするジェニ。


「頑張って体力付ける。そして練習も

 いっぱいする」とへレス。

「兎に角基礎となる体力をつけるんです。

 3年間は上級も使ってはいけません。

 約束できるね?」とジェニは言うと

力強く返事をする「はい!」と。


そして

ジェニエーベルは街を後にした。


その十数日後、宿屋に生活の為に売った

フミージャ愛用の剣と、高級ではないが

へレスの体に合った、いや

すこし大きめの弓が届いた。

手紙も添えられている。


子供は成長が速いので少し大きめの

弓を送ります。

高級素材は使っていませんが

国の職人の手による1品物です。

へレスには壊した矢の代わりとでも

言っておいてください。

矢も50本付けます。

3年後を楽しみにしていると言って

おいてください。


その手紙を読み終えるとフミージャは

自身の剣を物置にある大きな箱の中に

入れた。そして、

弓矢をへレスの部屋の机の上に置いた。


3年後ジェニエーベルは

自身が送ったその弓矢を見て

衝撃を受ける事となる。

その弓も矢も使い古されて

いるが弓はきちんと手入れされ、

そして何と矢も50本揃っていた。


矢は羽根が取り換えられて

矢尻も欠けた所を補修されていた。



1週間後ジェニエーベルはそのまま

自国の領土に帰る事とし

首都の周辺を見て回る事にした。

道中は野営を繰り返したいた。


ある時魔獣に襲われていた荷馬車を

助ける。その者達は紫の国の

首都に向かっているらしく近くまで

行動を共にする事とし、魔獣が

あらわれない所まで送るとジェニは

シンの森へ向かった。


「すごい久し振りだな」そう呟きながら

奥へと入る。


この森はこのまま残したいな。

そういいながら約3時間ほど、森を

探索し、目につく動植物をスケッチブックに

書いて行く。


そして今度は南下し、自身の領地を

バイクでくまなく見て回った。


気づいたのは道中に、ちらほらと山小屋のような

物が建っていた事。それも

何かが、誰かが生活をしている後もある。


「今日はこの辺で野営をするか」と

ジェニはおもうとテントをテキパキと

立てていく。


「ここからだとあの山小屋から見えてしまうかなぁ。

 まぁ、こっちもそのつもりだし」とも言う。


ホワイトラビットを捕らえ調理をする。

「やっぱシチューが楽なんだよな」と

鼻歌交じりで作っていると


山小屋に明かりがともった。

「覗きに行くのもアレだしなぁ」と

いいながらシチューを食べる。


一時して食べるのを止め、シチューを

鍋に戻すと、バイクに乗り山小屋へ向かった。


扉の前でジェニは

「すみません。怪しいモノではありません。

 旅をしている冒険者なのですが

 今そこで野宿をしています。」


「この近辺は安全なのでしょうか。

 何分一人なモノで心配で」と言ってみる。


窓に人影が写り、隙間からこちらを

除かれている気がする。が、気づかないふりをし

扉に向かい続けている。


「大丈夫だ、武器は持っていない」と

自分を確認して中の返事を待つ。


するとドアの向こうから

「この辺りは特に魔獣も出なくなっています。

 野宿には適していますよ。」と

女性の声がした。


「ありがとうございます。これなら

 安心してご飯を食べられますね。あ、そうそう

 ちょっと作りすぎたので食べてください。

 向こうの木の所で野宿していますので」


ジェニはそう言うと鍋に入ったシチューを

扉の前に置くとテントへと戻っていく。


そして双眼鏡で山小屋の扉を見ると

置いたはずの鍋はなかった。


ジェニはテントへと入り就寝する「ふり」を

することとし、目を閉じ、集中する。


一時するとテントに静かに近づいてくる

気配があった。テントの周りを歩きながら

観察しているのだろう。


そしてその気配は遠のく。

多分山小屋へ帰っていったのだろう。


「今日はこのまま寝て明日にでも

 お近づきになって見るか」とジェニは

何か楽しそうにし、寝る事とした。


そして翌朝、テントを畳み移動の準備をする。

「さて、行ってみますか」と山小屋へ向かう。


「すみません、起きてますか?昨日の

 鍋、できれば返してほしいのですが」と

なにか困った感じでワザと言うジェニ。


すると「今開けます」と声がし、扉が開いた。














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